2021/10/08
データは、第四次産業革命のけん引役である先端技術 (フロンティア技術) を花開かせるための原動力であり、データと既存の知的財産制度の相互作用を理解することが重要である、とWIPOのダレン・タン事務局長は直近に開催された「知的財産と先端技術に関するWIPO対話」(WIPO Conversation on IP and Frontier Technologies) のセッションの開会にあたり述べました。
WIPO対話の第4回はバーチャル形式で開催され、学術界、政府機関および国際機関からの意見提出を含め、113か国から1,000名を超える参加者がライブで議論に参加し、デジタル経済におけるデータの役割、およびそれによって生じる規制上の課題について議論しました。また複数のイノベーターやクリエーターが、どのようにデータを活用しているのかを説明しました。その後、学界および法律の専門家が、現行の知的財産制度におけるデータの役割について議論しました。
タン事務局長は、先端技術の経済的影響を強調し、先端技術が今や3,500億ドルの市場を形成しており、2025年には3兆2,000億ドルの市場に成長する可能性があると述べました。
「Zoomを利用した働き方から5G、暗号通貨、遠隔医療に至るまで、私たちの生活や働き方のデジタル化は、今般のパンデミックによって加速しました。このことは経済、社会および文化に重大な影響をもたらし、より良く復興するにはどうしたら良いのかを含めて、世界にいくつもの課題を突きつけました」とタン事務局長は述べました。「デジタル化が未来の経済のエンジンならば、データはその燃料です」
無形資産であるデータは、世界経済における知的財産の役割の重要性が増大していることを際立たせ、世界の知的財産制度にいくつかの複雑な疑問を提起しています。データの性質と価値、およびデータがどの程度知的財産制度に適合するのかを理解することが、萌芽期のデータ・エコシステムにふさわしい規制の枠組みを設計するための鍵となるでしょう、とタン事務局長は述べました。
WIPO対話の第4回セッションは、まさにこの取組みに焦点を当てて実施されました。
会合の第1日目は、データとは何か、なぜデータがデジタル経済においてそのような中心的な役割を担うのかについての認識を高め、理解することに焦点が絞られました。その日は引き続き、網目状に広がり相互に関連したデータ管理のための規制の枠組みの俯瞰、および数名のイノベーターとクリエーターによる事業成長に向けたデータの活用方法の事例紹介のヒアリングも行われました。
第2日目は、データがどの程度既存の国際的な知的財産制度に適合するのか、および現行の知的財産制度の規定で十分かどうかという核心的なテーマを中心に議論しました。このテーマは5名の専門家によって提起され、特許、著作権、営業秘密、データベース権 (データベースに関するsui generis right権) および契約法を踏まえたデータと知的財産に関する議論が行われました。その後公開討論が開かれ、加盟国、知的財産庁、企業の代表者および個人の参加者の約25名が意見を述べました。
WIPOは、今後も「知的財産と先端技術に関するWIPO対話」を1年に2~3回開催する予定です。今後のセッションでは、データや先端技術が知的財産制度に何をもたらすのかをテーマに取り上げる可能性があります。また、人工知能 (AI) による発明であるAI発明の取扱いに関する実務的なアプローチを、審査基準を含めてテーマに取り上げる可能性があります。
セッションとセッションの間に、WIPOは、国のデータ戦略に関するウェビナーをはじめ、新しい形態のさまざまなイベントを試験的に実施する予定です。
2022年のWIPO対話のセッション開催予定日や今後のウェビナーの詳細は、近日中に発表される予定です。最新の情報配信をご希望の方は、先端技術のメーリング・リストへの登録についてこちらからお問い合わせください。
WIPO対話は、人工知能 (AI) を含む先端技術が知的財産に及ぼす影響について議論を行い、また議論を促進するためのフォーラムです。WIPOは、社会経済に急速な変化をもたらしている分野に関して、多様なステークホルダーを招集して情報交換を行い、知見を蓄積し、また、十分な情報に基づく政策選択を支援するためにこの対話シリーズを始めました。