世界知的所有権の日 –ダレン・タンWIPO事務局長からのメッセージ
2021/04/22
中小企業(SME)の経営者が、あなたが知っている誰か、つまり近所に住んでいる隣人、学校の友人、幼い頃からよく知っている親戚、兄弟、両親である場合がよくあります。
場所に関係なく、中小企業は地域経済の中心です。そして、中小企業は世界中の全企業の90%以上を構成し、世界の労働者の70%を雇用し、世界経済の半分を担っています。
つまり、中小企業は私たちの経済のエンジンであり、陰のヒーローなのです。
そして、多くの中小企業にはアイデアを製品やサービスに変換する際に知的財産を活用する方法、また、企業が生き残るだけではなく、競合し、発展するために知的財産を強力なツールとして使用する方法についての知識が欠けています。
最近の研究では、商標、意匠、特許などの知的所有権を所有するヨーロッパの中小企業の従業員一人当たりの収益が、知的所有権を使用していない企業のそれと比較して、約70%高いことが明らかになりました。これがヨーロッパにおける状況だとしたら、世界の他の地域でも同様のことが起こっている、またはこの状況がより著しいものであることは確かです。
この現状を変える必要があります。
そのため、今年の世界知的所有権の日では中小企業に焦点を当て、「知的財産(IP)と中小企業:あなたのアイデアで新しい事業を」をテーマとして掲げています。
当然、中小企業は世界中のあらゆる地域で様々な課題に直面しており、支援の形も地域の必要性に合わせてカスタマイズする必要があります。しかし、それにも関わらず、私たちが共に中小企業を支援するという意思を表示することは、中小企業にとって力強いメッセージになるでしょう。それは例えば、企業に分かりやすい形で知的財産について解説することで知的財産の認識を高めたり、知的財産の登録、保護、商品化のプロセスを分かりやすく説明するためのプログラムを企画したり、より有効な知的財産管理および戦略を可能にするためのツールを作成したり、事業拡大のための知的所有権の活用に関連するスキルや能力の構築に関して中小企業を支援することで実現できます。
私たちが中小企業に提供する支援がどんな形であれ、それは、地域経済の基盤、ひいては世界経済の中心に関わる支援となります。そして、その支援は最終的により良い世界を再構築する際に役立つでしょう。
この世界知的所有権の日に共に中小企業を称えましょう。そして、中小企業が彼らのアイデアを市場で展開するために、知的財産を事業発展のためのツールとして使用できるよう、今後も協力して取り組んでいきましょう。
世界知的所有権の日を祝して。