【プレスリリース】WIPO総会、新国際条約のためのロードマップに合意
2012/10/25
ジュネーブ、2012年10月9日
PR/2012/723
WIPO加盟国総会第50回会合は、世界中の多くの視覚障害又は読字障害のある人々のために、 著作権保護作品へのアクセスを改善するための条約に関する交渉を終結させる方法について、画 期的な決定を下しました。
加盟国はまた、2013年に向けた 知的財産及び遺伝資源、伝統的知識及びフォークロアに関するWIPOの政府間委員会(IGC)の作業計画 も承認しました。IGCは、遺 伝資源(GR)、伝統的知識(TK)及び伝統的文化表現/フォークロアの表現(TCE)の効果的な保護を確保するために、今後も集中交渉を継続していきます。
もう1つの重要な決定に当たって、WIPOの185の加盟国は、意匠登録手続きの簡単な基準を開発するための意匠法条約策定に向けた作業を迅速化することに同意しました。
WIPO総会は、2012年10月1日から9日まで開催され、昨年のWIPOの実質的作業を評価し、将来の作業計画に対する方向性を示しました。総会の閉会にあたり、WIPO事務局長のフランシス・ガリは、 総会決定で示された、WIPOの業務への「加盟国の極めて建設的な関与」を歓迎した。そして、視覚障害のある人々の著作権保護作品へのアクセスに関する国際条約、意匠法、知的財産及び遺伝資源、伝 統的知識及びフォークロアについての交渉妥結に向けた予定表設定において、加盟国に進展が見られたことを強調しました。
WIPO総会議長を務めたセルビアの在ジュネーブ国連常駐代表Uglješa Zvekić大使もWIPOの業務が評価され、いくつかの分野の基準作業を終了させるための予定表が設定され、建 設的な成果が得られたことに対して歓迎しました。
地域グループ代表及び各加盟国も、総会の成果及び加盟国間の積極的な姿勢を歓迎しました。地 域グループは視覚障害又は読字障害のある人々の著作権保護作品へのアクセスを容易にする条約並びに意匠法条約に関する議論を進展させるための決議の重要性を特に強調しました。さらに、 知的財産と遺伝資源、伝統的知識及びフォークロアに関するWIPOの政府間委員会の今後の作業計画に関する成果も歓迎しました。& amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; lt; /p>
総会期間中、ガリ氏は、WIPO加盟国代表並びに地域及び国内IP官庁の代表によるハイレベル 二国間会合を多数開催し、 < ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; 14件の技術協力協定が締結されました。そのうち5件は 技術・イノベーション支援センター(TISC)の設立に関連したもので、9件は覚書でした。
総会概要
加盟国は、 視聴覚的実演に関する北京条約(BTAP)の採択という画期的な出来事の 報告に注目しました。これは、国 際著作権法の下で俳優やその他の視聴覚的実演者の知的財産権を拡大し、包括的に認めるものです。ボツワナ、ホンジュラス、ウガンダは総会期間中に北京条約に署名し、同条約に対する強い支持を表明するとともに、国 家レベルでの批准を推し進める意思を示した。これにより北京条約署名国は51カ国となりました。
総会は、 視覚障害又は読字障害のある人々の出版物へのアクセスを改善することに焦点を絞った国際条約に関する歴史的外交会議を、2013年に開催する道を開く ロードマップを承認しました。著作権及び著作隣接権に関する常設委員会(SCCR)は、同 条約のテキストについて作業するため 2012年10月17日~19日に会期間会合を開催する予定です。また SCCRは2012年11月19日~23日に会議を開催し、こ のテーマに関するテキストに基づく作業を終了すること、又は実質的進展を図る目的でテキストに関する議論を継続します。加盟国は2012年12月に臨時総会を招集し、テキストに関する進捗状況を評価し、2 013年に外交会議を招集するかどうかの決定を行うことで合意しました。世界中で約3億人の全盲の人々又は視覚障害のある人々が、現在の技術的実態に合わせた、より柔軟な著作権制度の恩恵を受けることになります。 読むことに障害のある人々は、支援技術を用いて点字、大活字、音声、電子フォーマットなどの形式に情報を転換しなければならないことが多いです。視覚障害のある人々がアクセスできる形式の出版物は、世 界中にほんのわずかしかありません。
加盟国はまた、 放送事業者の保護を改訂する国際条約の開発のためのSCCRの進展を歓迎しました。2 014年に放送事業者の保護に関する外交会議を招集する可能性を決議する目的で2012年7月に当委員会によって採択された 単一テキストに関して作業を継続します。総会はさらに、図書館及びアーカイブに対する 制限と例外事項、教育、教義、研究機関、その他のディスアビリティに対する制限と例外事項、並びに開発アジェンダの実施に向けたSCCRの貢献を内容とする議題について、S CCRの進捗状況にも言及しました。
総会は2013年の 知的財産と遺伝資源、伝統的知識及びフォークロアに関するWIPOの政府間委員会(IGC)作業計画 について合意しました。I GCは、 遺伝資源(GR)、伝統的知識(TK)、伝統的文化表現/フォークロアの表現(TCE)の効果的な保護を確保する国際法的文書のテキストの完結に向けて、適 切な意見表明を行うとともに誠意をもって集中的な交渉と関与を継続していきます。2013年には、GR、TK、TCEの順番で順次取り組む3つのテーマ別IGCセッション(GR及びTKについては各5日間)を 通じてIGCの作業が行われます。3番目のTCEに関するセッションは8日間開催され、3日間は加盟国がテキストを再検討、評価して2013年の総会に勧告を行います。IGCは、GR、TK、T CEの効果的な保護を確保する国際法的文書のテキストを2013年総会に提出することを要請されています。2013年の総会はテキスト、進捗状況を評価・考察した上で外交会議の招集について決定します。2 012年には、GRに関するテキストを1つにまとめ、TK及びTCEに関するテキストをさらに発展させるために、IGCによって相当量の作業が成し遂げられたことを多数の代表団が認めました。しかし、多 数の代表団はまた、残余の相違点を埋めるためIGCの交渉を強化することを求めた。一部の代表団は、IGC委員長であるWayne McCook大使(ジャマイカ)に対し、主 要な未決定事項の収束を図るための非公式の協議会を開催して参加し、審議のためのこうした協議の結果をIGCに提出するよう要請しました。GRに重点を置くIGCの次のセッション(第23回セッション)は 2013年2月に開催される見込みです。
総会はWIPO商標・意匠・地理的表示の法律に関する常設委員会(SCT)の意匠法及び実務に関する 現在の作業について審議しました。加盟国間の相違点が著しい 意匠登録手続きの基準を簡略化することが狙いである。 WIPOの調査によると、最近WIPO加盟国における意匠制度利用者は簡略化の結果、意 匠活動の改善につながると考えていることが判明しました。同様に、加盟国の産業財産権庁はこうした変更が意匠制度の利用者に及ぼすと思われる影響を肯定的に捉えていました。総 会はこうした変更を実施する際の開発途上国及び後発開発途上国に対する技術支援を提供する必要性を強調しました。加盟国は意匠法条約の重要性に関して合意し、SCTにその作業を迅速化するよう促しました。2 013年一般総会は今後1年間に見られる進展について審議し、意匠法条約の採択に関する外交会議の招集について決定することになります。
加盟国は、知的財産権を巡り、世界が急激に変化しているという情況を踏まえ、WIPO全体の効率性、有効性、反応性を強化するための進展に注目しました。WIPOの 戦略的再調整プログラム(SRP)は、2年の実施段階を経た後、2 012年末に完了する予定です。19の分野横断的取組みがWIPO全体の変化を促しました。主なものは、成果重視型マネジメントを強化し、リスク管理を向上させ、倫理制度を確立し、顧客経験価値を強化して、W IPOの環境に対する悪影響を低減することなどが挙げられます。このプログラムには、財務・人材・業績情報の管理を統合する 企業資源計画(ERP)システムを実施するにあたり、5 カ年で2,500万スイスフラン規模のプロジェクトの第1段階が含まれています。WIPOはその事業プロセスを再考する機会を活用し、重複やヒューマンエラーの可能性、冗長性を削減しました。E RPプロジェクトは2015年末までに完了の予定です。
代表団は WIPO開発アジェンダの効果的実施における事務局長のコミットメントを認め、2 007年の採択以降になされた著しい進捗を評価しました。そして、WIPO加盟国における国内の社会経済的発展を支援する 開発アジェンダ勧告の継続的実施を支持すると表明しました。多数の代表団が、 開発と知的財産に関する委員会(CDIP)におけるいくつかの未決定事項に注意を払い、こ れらの問題について進展を図るための積極的取組みを要求しました。
総会は、 特許法に関する常設委員会(SCP)の最近の作業を取り上げ、各 開発アジェンダ勧告の実施に関する代表団の見解を報告している当該委員会の 作業報告書に注目しました。意見を表明した多数の代表団が、SCPの作業と特許関連問題に関する加盟国の理解を深めるという重要性を称賛しました。しかし、代表団の一部は、S CPがその第18回セッションで、より具体的な今後の作業計画に関する合意ができなかったことに遺憾の意を表し、将来はより建設的な成果が達成されるよう希望することで意見が一致しました。
加盟国はIP権侵害の世界的現象に対処するWIPOの取組みに関し、全面的支持の表明をし、 IPを尊重する意識の構築という枠内で、IP権実施に関する情報を交換する有意義な場として、 エンフォースメント諮問委員会(ACE)の重要性を強調しました。A CEに提出された研究は、IP侵害について関連のある要素に対して深い洞察を提示し、より有効な統計と関連情報の必要性を補強しています。加盟国は、ACEが開発アジェンダの勧告45に従って、バ ランスのとれた方法でIP権実施に取り組むために、IP権侵害の総合的かつ実際的理解を深めることに引き続き貢献すべきであると勧告しました。さらに、加 盟国は技術支援活動を通じてIP尊重の念を高めるWIPOの永続的取組みを称賛しました。
国際特許協力同盟(PCT同盟)の総会は、PCTに属する国際調査予備審査機関として チリ産業財産権庁(INAP) を指名しました。加盟国は、スペイン語を母国語として運営されているラテンアメリカ地域の開発途上国の官庁が、その地域における発明者に多大な利益を与えることができるとともに、他 の国際機関にかかる負担を幾分か低減することを認め、この指名を歓迎しました。総会は、米国におけるアメリカ発明法の最近の発効によって可能となり、あ らゆる国々からのPCT出願人が行う手続きを大幅に簡略化するPCT規則の 一定の変更を承認しました。総会はまた、補 完的国際調査システムの維持と継続的監視に合意し、PCT作業部会が任されている作業の報告書及びPCTに属する国際機関の会議について言及しました。
標章の国際登録のための特別同盟(マドリッド同盟)の総会は、もはや適用不可能な3つの規則(規則7(3)(b)、24(2)(a)(i)、40(5))に対する 修正案を採択しました。この修正は2013年1月1日に発効します。総会は、暫 定拒絶通報後の登録査定通知の要求に基づく翻訳、及び限定により影響を受ける商品・役務のリストの翻訳に関する事務局の実務について引き続き注目しました。総 会は3年後に当該実務の見直しを行うよう事務局に指示しました。総会はさらに、 マドリッド制度の商品・役務データベース(G&Sデータベース)・プ ロジェクトの実施状況における進捗状況に注目し、追加言語の最終決定に当たって、一部の官庁を支援するために残りの協力資金を使用することを承認し、マ ドリッド制度への追加の出願言語の導入に関する研究の延期を承認し、代わりに、G&Sデータベースの適切性及び言語の多様性をさらに向上させる事務局の取組みを支持しました。総会は、 情報技術(IT)近代化プログラムに関して、こ のプログラムのフェーズIの実施状況及びフェーズIIの進捗状況に注目し、さらにフェーズIIIの再導入の可能性についても注目し、PCT同盟からマドリッド同盟への融資の振り替えを承認しました。
意匠の国際寄託に関する特別同盟( ヘーグ同盟)の総会は、 状況報告書及び情報技術近代化プログラムの実施状況の堅実な進展に注目しました。総 会はさらに、プログラムのフェーズIIIの再導入の可能性及びPCT同盟からマドリッド同盟への融資の振り替えに注目しました。
原産地名称及び国際登録の保護に関する特別同盟( リスボン同盟)の総会は、 リスボン制度の開発に関する作業部会が リスボン制度の再検討を行うに当たって、条約起草段階に移行し、その二重のマンデートの下、 次の作業を継続することに言及しました。すなわち、(i) その現在の法的枠組みの精緻化及び政府間機関の加入の可能性を包括することを含むリスボン協定の改正;(ii) 地理的表示の国際登録制度の確立です。 < /p>
商標法に関する シンガポール条約(STLT)の総会は、4カ国が新しく加入し、締約国の合計が29カ国になったことを歓迎しました。 条約のモデル国際様式No.1の再検討に関する作業部会が勧告した通り、総会は、ホ ログラム標章、動く標章、色彩標章、位置標章、音標章の表示方法及び立体標章の表示に関する1つの追加説明に関して、当該形式の修正を採択しました。
総会は、特定の知的財産権庁に提出された異議申立及びその他の紛争にADRオプションを提供することにおいて、これらの官庁から要請された支援を含め、 WIPO調停仲裁センターの裁判外紛争処理(ADR)手段の提供における展開に言及しました。さらに、WIPO調停仲裁規則は、特に実施権許諾、R&D、I T取引の分野において増大している事件を解決するために利用されていることが言及されました。インターネットドメイン名システム(DNS)に関連して、総 会はICANNによるトップレベルドメイン数を大幅に拡張する計画に注目しました。当センターは構想を支援してきましたが、今 後も第三者の商標権を侵害する恐れのある申請ドメインの承認を防ぐ法的権利異議手続きを管理し、承認されたドメインの効果的な権利保護の利益のためICANNの展開をさらに幅広く監視していきます。加盟国は、既 存のWIPO発起の統一ドメイン名紛争処理方針(UDRP)に基づき、センターが2011年の事件記録ファイルを管理したことに注目しました。
総会は、IP官庁間のオンラインファイル交換に関する産業財産権データの包括的新基準を策定した WIPO基準委員会(CWS)の専門家による技術作業を称賛し、次 回会合までに作業手順を明確化するための作業の継続に合意しました。
多数の代表団が、 産業財産権自動化システム(IPAS)及び 技術・イノベーション支援センター(TISC)を通じ、IP官庁の技術インフラを強化するためのWIPOの技術支援が大きく進展したことを称賛し、I P官庁及び関連組織の効率を高める各庁の取組みをさらに支援し、今後も継続するよう要請しました。この支援はIP制度の効率を強化するとともに、イ ノベーションを促進する目的で知識と技術へのアクセスを強化する一助となりま。
総会は新築された 管理部門ビルの完成に関する進捗報告書に注目しました。こ のビルは2011年中頃から本格的に運営されており、現在約500人の従業員を収容しています。総会はまた、ゼネコンと共同合意され友好裏に解除された契約の後、2013年末に引き渡される予定の 新会議場プロジェクトに関する進捗報告書にも注目しました。
加盟国は最初の包括的な 人材に関する年次報告書を評価し、先進的人材管理改革の中で見られた進展に注目しました。調 整委員会は、職員代表と経営陣との間の協議プロセスの結果である 職員規定・規則に対する改正を承認しました。こ れはWIPOの人材管理規制の枠組みに遠大な改善策を施す基盤となりま。主な改正は、職務分類のより合理的なシステム、違法行為容疑の報告及び内部告発者の保護に関する明瞭化、特 定のカテゴリーに含まれる職員に関する募集手順の迅速化、短期雇用職員の管理改善などが挙げられます。
審議及び決議に関する報告の完全版は https://www.wipo.int/about-wipo/en/assemblies/2012/agenda.htmlから入手可能です。 < /p>
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