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フランシス・ガリ事務局長スピーチ (メルボルン大学)

2013/10/10

Re-Thinking the Role of Intellectual Property

知的財産の役割の再考

フランシス・ガリ [1]

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知的財産(知財)が現代の世界で機能している状況は、知財が誕生した頃の状況とは大きく異なっています。新たな状況は経済と社会の両面で知財の地位を変えました。これは、知 財及びその役割についての我々の考え方も同じく変えなければならないということです。

知財に関する従来からの説明

まず、我々が知財を求めた理由についてのこれまでの説明を簡単に思い起こしたいと思います。我々が知的財産権の特徴として考える全ての権利の様々な段階に適用できる4つの主たる理由があります。

まずは非競争的性質の知識及び情報から説明を始めます。知識と情報が生じるときそれらは私財であり、創造するためには人財と資金がかかります。反対に、それらが消費されるときは公財です。それらは、一 旦公にされると、生産者による権利の享有を減じることなく別人が使用することができます。知識のこの特性は、6世紀にフィニアン(Finnian)がコルムキル(Columcille)に 貸した聖書の彩飾画を彼が模写した件で、アイルランド・聖フィニアンから告訴された際の被告側であるコルムキルにより指摘されました。盗みの告発に対し弁明するためにディルムッド王(King Diarmuid) の前に呼び出された際、コルムキルは フィニアンはまだ自分のデッサン画を手元に持っているので、自分は何も盗んでおらず、「フィニアンの本には自分が模写したからといって何の不都合も生じない」と 抗弁しました。 被告側の申立てを棄却するに当たって、王は「子牛はあらゆる牝牛に属しているように、その写しはあらゆる書籍に属している」と宣言して、世界に著作権の到来を告げました [2]

知財の方針は、知識や情報の創出費用を相殺するために、商業的使用の独占的権利という形で、知識や情報の自由な利用に制限を設けています。そうすることで、知識創出への投資を促す経済的刺激を喚起し、考 案から新たな製品、サービス、又はプロセスとしての商品化までの、多くは孤独の厳しく冷淡な長い道のりを安全にたどることができるのです。独 占権は販売可能な商品に近づける機会や知識及び技術のための市場基盤を事実上創造します。

この最初の説明は、新しい形態の知識 [3]、すなわち、特許、植物品種に関する権利、商業秘密権又はトレードシークレットに関する権利、意匠、著作権を網羅する知財権に当てはまります。& amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; lt; /p>

フィニアンが自分の装飾画が模写されたと気づいたときの彼の倫理的憤慨に示唆されるように、知財には倫理的根拠があります。これは、「あらゆる人々は自分が作者である科学的、文学的、又 は芸術的作品から生じる倫理的、物的利益を保護する権利を有している」と規定する世界人権宣言の第27.2条に示されています。この知財の倫理的根拠はほとんどの知的財産権に適用されます。剽窃、搾取、又は複写( 又は「模倣(copycat)」など最後の言葉(copy)の一層軽蔑的な派生語)といった通常の言葉における否定的含意に証明されるように、これには長い社会的歴史があります。

知財を備えることのその他の理由は、個別の知的財産権にさらに限定して適用されます。特許制度を備えるさらなる理由は、新しい知識を創出する動機付けに加え新しい知識を公開することです。特 許に関するこの機能の好例は、サキソフォン(サックス)です。サックスはかつて特許を受けたオーケストラの中の唯一の楽器であり、1846年フランスにおいてアドルフ・サックス(Adolphe Sax)に より特許が取得されました。その後70年ほどの間に、サックスに関係してさらに14の特許が取得され、そのいくつかはアドルフ・サックスにより取得されたもので、他 のいくつかは我々が現在競争相手と呼ぶ者により取得されました。これらは、我々が現在知るところのマウスピース、アルトサックス、その他の各種サックス、及 びサックス本体の改良されたメカニズムに至るものがあります。こうした技術の大半は、100年を優に超えた現在ではパブリックドメインの状態になっており、誰もがサックスを製作又は使用することができます。こ のサックスとバイオリンの進化とを比べることは興味深く教育上有益です。17世紀から18世紀のイタリアのクレモナにおいてバイオリンの製作技術は家内工業を基盤とし、秘匿されていました。そ れは秘密裡に世代から世代へと受け継がれました。その結果、ストラディバリやグァルネリといった世界的に名高い最高級のバイオリンがどのように作られたのかが今日まで誰にもわからないという次第です。こ うしたバイオリンの製造の秘密は、時を経て、家族と彼らが自分たちの知識を伝えた方法の秘密の中で失われてしまいました。

サックスに関する知識の伝達と弦楽器製作者による知識の囲い込みを比べたこの例が、特許制度の開示機能の唯一の成功例というわけではありません。ホレリス・パンチカード、テレビ、ジェットエンジン、重 合触媒、iPhoneは全て、特許制度年間、ときには発明の商品化前の数十年間 [4]に公開された主な技術又は製品の例です。特許制度は人間の技術に関する最も完全で、体 系的かつアクセス可能な記録を構築する責任を担ってきました。

商標、地理的表示、パッシング・オフ又は不正競争(管轄区域による)の場合、政策的正当化の傾向は市場における秩序の維持になりがちです。生 産者及び企業家側と消費者及び一般大衆側とのメッセージや合図の交換は、正しい情報を確保し、市場における欺瞞や詐欺を避けるために欠かせないものです。グ ローバル化した経済における分割された市場のみがブランドと同一性表現(トレードドレス)のこの役割を強化します。

こうした知財の目的に関する従来からの説明は今もまだ全く有効です。しかし、こうした説明が最初になされてから世界は大きく変わりました。こうした変化がこれまでの説明を損ねているわけではありませんが、こ の変化が、知財の地位を現代の経済、社会により有効に反映させるために、知財の機能説明に別の責任を付加すべきだと我々に感じさせています。主たる3つの変化を簡単にご説明します。これらは、有 形から無形への経済的変化、西から東への地理的変化、国家から非国家への政治的変化の3つの主要な変化からなると私は考えます。

無形資産の上昇

過去数十年の間に、富創造の中心は有形資産もしくは物的資産から無形資産もしくは知的資産、又はOECDが称するような知識ベース資産へと移行しました。この移行を判断する手がかりが多くあります [5]。 これはS&P500株価指数による各企業の資産分布に明らかです。この指数によれば1978年に有形資産は95%、無 形資産は5%でしたが、2010年までに有形資産は20%、無形資産は80%になりました。これは事業投資の傾向に明らかです。物的資産への投資に比べ知識ベース資産に対する投資が増えており、知 識ベース資産への投資増加率は物的資産への投資増加率を一貫して上回っています。

この変化は当然競争の焦点に変化をもたらしています。競争は知識ベース資産に由来する競争優位性を目標とすることが多くなってきています。これは、結局、我 々が知識ベース資産に対する投資の増加率に期待しているからです。知識ベース資産によって与えられる競争優位性はイノベーションと表現され、イノベーションは、新しい製品、サービス、又 はプロセスを商品化へと導く技術、意匠、組織・市場情報のすべてを網羅するものとして総合的に理解されつつあります。イノベーションは企業、産業界、国家が今日の世界で経済的(ある場合は軍事的)成 功を収める鍵であり、すべての関係者によってそのように理解されています。これは、イノベーションが重視されていると我々が見ている理由です。ウォールストリート・ジ ャーナル誌は昨年証券取引委員会に提出する四半期・年次報告書についての調査を行い、前年のこれら報告書において「イノベーション」という語が33,528回使用されたことを見い出しました [6]

知財はイノベーションが与える競争優位を捉え確実なものとします。これは途方もない価値へと形を変え、知的財産の形でそれを管理します。アメリカ政府により昨年公表された研究によれば [7]、2010年において、5兆600億ドルの付加価値(米国GDPの34.8%)、2,710万件の雇用(全雇用の18.8%)が 知財重視の産業に直接起因するものと試算されました。知財により捉えられたこの価値に対する意識は、世界中の知的財産権に対する需要の高まりからも説明できます。世界的に特許出願数は105万件から214万件に、 商標出願数は200万件から420万件に、意匠出願数はおよそ245,000件から775,000件に増加しました。

西から東への地理的シフト

知財が機能する状況を特徴づける第2の主な変化は西から東への地理的シフトです。経済的重心が移動するにつれ、技術の重心も移動します。こ れらは異なったスピードで起こっています。もちろん、この動きはどの位の間続くのか、最終的にどこに行き着くのか、中心又は他の何らかの幾何学的形状があるのか否かなどについては議論の余地があるかもしれません。 しかし、我々が過去数百年間見たことのないようなシフトが目下進行中です。繰り返しますが、このシフトを判断する手がかりは多くあります。ここでの私の関心は知識と技術の創出におけるシフトです。こ れを示す3つの指標を引用しましょう。1つは知識創出へのインプットに係るものであり、他の2つはアウトプットに係るものです。

研究開発(R&D)は知識創出への主要なインプットの1つです。中国は今や世界で2番目の絶対的R&D投資大国です。3番目は日本です。1 999年にアジアの国々は世界のR&Dの24%を占めていましたが、2009年には32%を占めるようになりました [8]

アウトプットに関しては、科学論文の生産においてアジアの台頭は明らかです。21世紀の最初の10年間で、アジア諸国における科学論文の生産増加率は、先 進国の増加率をはるかに超えて増加していることがわかります [9]。「科学の成績表は名声のみを示しているわけではなく、それらは一国が世界の舞台で競い合う力のバロメーターである」と 王立協会の2011年報告書は述べています [10] 特許協力条約(PCT)に基づき出願された国際特許出願数によって測ることのできる技術の場合はこの構図がさらに鮮明になります。1994年、日本、中国、大 韓民国は全国際特許出願の7.6%を占めていましたが、2012年には、かかる国々はEU又は米国のシェアより多い38%を占めるに至りました。

国家以外の関係者の強化

最後のシフトとして、最初はインターネットにより最近では他の形態のソーシャル・メディアによりもたらされた権限強化の結果、社会全体に及ぶ政治的権力の分散があります。イ ンターネットは、政策決定権限を主張することのできる基盤の1つである情報に関する国家の独占権を破壊し、社会、政治、経済、文化、科学、技術といった考えうる種類のネットワークの創出を促しました。要するに、イ ンターネットは情報や知識へのアクセスに変化をもたらし、あらゆる目的のために知識を使用することのできる能力を生み出したのです。

この新しく見出された権限強化が該当する政治、経済、社会分野に関する多くの例があります。知財分野では過去2年間にいくつかの主要な例が生まれました。

これらの例の1つは、アメリカ合衆国における一定の知財関連法の可決に抗議する2012年1月18日に取られた協調行動でした。立法はオンライン海賊行為防止法(SOPA)と 知的財産保護法(PIPA)でした。

これらの法案は議会及びその可決において超党派的支持を受けており、当初は成立が確実であると見られていましたが、抗議によりこれら法案は棚上げされました。抗 議活動には115,000のウェブサイトが参加し、その全コンテンツ又はその大部分へのアクセスを閉鎖しました。参加したウェブサイトはブラックアウトしたWikipedia、ロゴを消したGoogle、R eddit、Twitter、Tumblrなどです。1億6,200万人の人々がWikipediaのブラックアウトを経験しました。4 50万人が1月18日の太平洋沿岸標準時の午後1時30分までにGoogleのオンライン嘆願書に署名し、およそ250万(240万)のSOPA関連のツィートが1月18日の最初の16時間までに送られました。当 日Twitterに掲載された上位5位を占めたトレンドな語句は「SOPA」、「Stop SOPA」、「PIPA」、「Tell Congress」、「#factswithoutwikipedia」で した [11]。さらに(私は、これが前述した協調行動の一部であると示唆するわけではありませんが)、ハッキンググループのアノニマスは、政 府及び娯楽産業界両者による海賊版防止の取組みの報いであるとして、アメリカ合衆国FBI、司法省のウェブサイト、及び数か所の娯楽産業サイトをダウンさせたと述べました。アノニマスは、5 ,635人の参加者がこれらのサイトをダウンさせることに加わり、「これまでで最大級の攻撃」だと述べました。司法省及びFBIの他に、アメリカレコード協会、アメリカ映画協会、ユニバーサル・ミュージック、B MIウェブサイトも攻撃されたと報じられました [12]

知財分野におけるインターネット、ソーシャル・メディア、ネットワークによる力の行使についてのその他の例としては、模造品の取引の防止に関する協定(ACTA) [13]及びマイクロソフトによるXbox Oneコンソールの再認証に対する抗議があります [14]

以上、概説した3つのシフトは、グローバル化、すなわち、貿易障壁の緩和や、運輸、電気通信、コミュニケーション機器の改善により引き起こされた、自由で、開かれた、互 いに連結した市場及び世界的バリューチェーンの成長を背景に起こりました。もちろん、複雑なグローバル化現象の副産物又は成果物がたくさんあります。本論の目的上、中でも最も重要なのは、グ ローバルな意識及び消費者向けの技術(例えば、世界中で68億の動画投稿があります)、グローバル・ファッション、グローバル・トレンド、文化及び娯楽のグローバル規模の消費です(2013年7月28日以来、韓 国のパフォーマー、サイによるミュージック・ビデオ「カンナムスタイル」はユーチューブで17億1,500万回再生され、このサイトの最高視聴動画であったジャスティン・ビーバーの「Baby」を超えました)。& amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; amp; lt; /p>

これらすべてのことでディルムッド王と彼の牝牛はどうなるのでしょうか?上述したように、私はこうした進展が知財の伝統的基盤を無価値にするとは考えていません。我々は、知 財の使命は個々の基盤の何れか1つだけで示唆できるものよりずっと大きく高度であるという認識が必要です。私の見解では、知識が富形成の基盤である経済において、また技術、文化、娯 楽の消費習慣がグローバル化した社会において、知財は、知識と文化が創造され、分配され、消費される行程すべてに実際に関わるものです。こ のような使命について言及する場合は知財の仕事に2つの機能を追加する必要があります。

競争行為の規制者としての 知財

知財の最初に追加する機能は、知識経済の資源基盤に関して公正な競争を決定する仕組みです。イノベーションが益々競争の戦場となっており、知 財がイノベーションの競争優位性を獲得しているため、中国の前首相温家宝が述べたように、知財は将来の競争の基礎となるでしょう。

我々はこの洞察の信憑性を国と企業の両レベルで理解することができます。益々多くの国々がイノベーション戦略もしくは計画を採用するか、又はその工業/技 術戦略の一部を刷新し得る能力をはっきりとつけています [15]。競争には革新を起こす能力となるほとんどの要素(R&D設備の提供、大学の成績表順位、人材の獲得に関して)が豊富にあります。ア メリカ合衆国では、マーク・ザッカーバーグが、今年の4月、ロビー活動団体FWD.usを創設し、例えば、外国の科学専攻院生が住居を取得するための簡略な方法や、特 殊臨時労働者が利用可能なビザであるH-1Bビザの定数増加などを通じて、特にイノベーションを支えるのに必要な才能を引き寄せるための出入国管理改革を提唱しました。ア メリカ合衆国でのH-1Bビザの65,000の割当数は、今年は5日間で満了になりました。2007年、マイクロソフトは、そのレッドモンドの本部に連れてくることのできなかった労働者を収容するため、カ ナダのバンクーバーにソフトウェア開発センターを開業したと報じられています。米国労働統計局によれば、シリコンバレーの科学、技術、エンジニアリング労働者のおよそ半数は国外出身であるのに比べ、ア メリカ合衆国のその他の地域では4分の1が国外出身です [16]

この国家間競争の負の面はスパイ活動です(これは、当然、企業間競争の特徴でもあります)。このテーマに関するレトリックの厳しさが昨今急激に高まってきました。米 国国家安全保障局長官兼アメリカ・サイバーコマンド指揮官であるキース・アレキサンダー大将は、サイバー上のスパイ活動を通して失われた産業情報及び知的財産を「歴史上最大の富の移転」と称しました [17]。 米国知的財産の窃盗に関する委員会は、「 米国知的財産の国際的窃盗の規模は前例を見ない年間数千億ドルにものぼりおよそアジアへの米国の輸出規模に相当する」と報告しました [18]。委員会の最初の勧告は、「米国知財の保護に関する全ての措置に対する主要政策調整役 として、国 の安全保障アドバイザーを指名することでした。

企業分野においても知財は同様に競争意識の中心にあります。国家間の競争と同様に、この競争にはソフト面とハード面があります。ソフト面は、全ての企業が、製品やサービスのコンセプト、意匠、生産、販 売の全ての段階で革新的であるために、また知財によってそのイノベーションが与える優位性を保護するために行っている取組みの強化に見ることができます。ハード面は、ス マートフォンにおける特許競争にくっきりと見ることができます。ここには、全てをイノベーションに賭けている企業が存在します。各企業はテーブル上の株を買うために特許を蓄積し武器庫を構築してきました。過 去3年間における最も目立った特許ポートフォリオの中には、いわゆる「Rockstar グループ」(アップル、マイクロソフト、リサーチ・イン・モーション、ソニーを含む)に よる45億ドルにのぼるNortel Networkの特許ポートフォリオ6,000件の取得、グーグルによるモトローラ・モビリティの特許ポートフォリオ17,000件の125億円にのぼる取得;コ ダックによる12の実施権者コンソーシアムへのデジタル画像ポートフォリオの5億2,500万ドルの売却;マイクロソフトによるフェイスブックへの特許650件の5億5,000万ドルの売却;ヒューレット・パ ッカードによるパームからモバイル技術特許1,500件の12億ドルにのぼる取得がありました。この行為には複数の説明があります。本論の目的上、私は知財に焦点を合わせた競争行為と、訴 訟によって表現されることの多い競争行為に言及します [19]

訴訟戦争においては、テロリストが見境のない本筋からそれた損害を与える部類に入ってきています。これは特許トロール、もっと穏便な言い方では特許係争団体(PAE)(又は特許権非実施団体 [20])として知られています。

しかしながら、誰もこの現象をどう定義すべきかがわからず、広い成長範囲の有用な仲介者をもつ技術市場の合法的進化がどこで終息するのか、ま たイノベーションを危機に晒している悪質な行為がどこで始まったのかが言えないことが問題なのです。我々が知り得ることは、PAEは特許が与える独占権に対する共通の利益を共有しているのであって、基 礎をなす知識に対してではないことです。我々は市場においてこうした団体がその存在感を増していることも知っています。PAEは2012年アメリカ合衆国において新たな特許訴訟の61%を申し立てました。これは、 4,351の被告人に対して3,054件の特許侵害訴訟に当たります [21]。米国大統領行政府による報告書 Patent Assertion and U.S. Innovationの出版などいくつかの政策的対応がアメリカにおいて始まっています。

競争利害間の均衡を見出すメカニズムとしての知財

では、知財の第2の新たな使命の説明に移ります。それは、我々の経済、社会における知識、創造的労働及び娯楽の中心的役割としての機能であり、その中心的役割から生じる利害の複雑さの中心としての機能です。 ディルムッド王が彼の面前に持ち出された問題を考えた時、事態は比較的単純でした。2人の係争者と手作りの聖書。彼の裁定から派生した影響は限られていました。それらが、教 養層である修道院の僧侶や文筆業に従事する大部分の者に影響を与えたことはある意味事実であります。しかし、当時の大部分の無教養社会の読者層は少なく影響は局所的でした。

このことと、世界中の全書籍をデジタル化するというグーグルの計画を巡る出版業界とグーグル間の係争の決着の合法性に関する昨今の判決 [22]、又は遺伝子情報の特許性に関する判決とを比べてみてください [23]。社会と経済の相互結合性;インターネットと技術がメディアと通信にもたらした透明性、緊急性、普遍性;知 財Pを別の見方で考えるよう我々に要求する経済における知識の中心的地位、これらから生まれる複雑さがあります。この複雑さは、知財に、イ ノベーションと創造活動を取り巻く多くの非常に多様な利益間の均衡点を見出す機能を果たすことも要求しています。

これらの利益には、イノベーションを利用するか又は創造の体験を享受する社会の利益に対する個々の革新者又は創造者の利益;消費者の利益に対する生産者の利益;新 しい知識の社会的恩恵を共有するという利益に対する新しい知識の創出に投資を促す利益が含まれます。平衡を保つ行為は、お互いに融合し合いイノベーション又は創造における利害関係を主張する個人、企業、機関、政 府、一般の人々又は市民社会の関係を考慮してなされなければなりません。これらの利益の全てがインターネットやソーシャル・メディアの即時性により世界中に一瞬にして表現され伝達されることができる世界では、知 財を1組の利益のみに味方するものとして考えることは時代錯誤となってしまうことが多くなってきています。知財はこうした全ての1つ1つ異なった利益を融和させる手段であり、我 々がまさに期待するのは知財を巡る活発な公の議論です。

ある意味、知財は常にこの役割を果たしてきました [24]。特許制度は発明者と社会との約定として考えられています。社会は発明者に新しい発明を開示するよう求め、そ の見返りとして一定期間商業的使用のための独占権を付与し、その期間を過ぎると発明はパブリックドメインに入り、万人が使用できるようになります。しかし、新たな状況は、利 益の調和をさらにいっそう明確なものにし、制度それ自体よりはるかに精緻なレベルで一連の問題を関連づけ細部まで考えるよう求めています。

資金提供メカニズムとしての知財

私は知財に関する3番目の新たな役割を付け加えたいと考えておりますが、それは知財の使命についての言及というよりはむしろ知財の新たな用途であると考えられます。そ れは経済における無形資産に対する評価と価値の高まりにより起きています。無形資産の価値が増大することで、これまで不可能であった、或 いは少なくとも実践されていなかった有形経済における活動を活用又は引き受ける手段が与えられます。スポーツを例にとってみましょう。知財はスペクタクル、イメージ、又 は名声というメカニズムを通じてスポーツの商業価値を捉えます。

スペクタクルがなければ、誰かの注目を集める手段は存在しません。スペクタクルは消費者に経験をもたらします。しかし、スペクタクルを収益化する手段はもはやチケットの販売を通じてだけではありません。こ うしたことは重要ではありますが、金銭的見返りを生むことより良い雰囲気を創り上げることの方が恐らくもっと重要です。スペクタクルを実際に収益化するのは放映を通じてであり、放 映の価値はアクセスを統制する能力次第であって、知財がその情報の流れを統制しています。このように、国際オリンピック委員会の収益の60%は、世界の視聴者に影響を及ぼす放映権、及 びこうした視聴者によってもたらされる宣伝の力に由来することがわかります。北京オリンピックでは放映独占権に放送局から17億ドルが支払われたと試算されています。

スペクタクルの他に、ひいては商標法により保護されるブランドと結びつくことにより獲得されるイメージと名声があります。今やスポーツチームは、ス ポーツ機能の何らかの補助的形態ともなっているサンドイッチ・ボードの洗練された担い手となっています。チームはロゴマークを身にまとい、これらのロゴマークとの関連から生まれる収益は、一般に、放 映権以外のスポーツ収益の第2の主要収入源となっています。ロジャー・フェデラーは賞金として7,700万ドルを獲得しましたが、彼の収入のほとんどはスポンサーシップとCM出演から得たものです。昨 年彼はMoët & Chandonと3,000万ドルの5年契約を結びました。彼はまた、ロレックス、メルセデスベンツ、ナイキ、ウィルソン、リンツ・チョコレート、ジュラ、ジレット、プ ロクター&ギャンブル、クレディ・スイス、Netjetsとも契約していると報じられています。

スポーツに対して行った分析は、音楽や劇場の実演又は美術館の展示物を含むほとんどの形態のスペクタクルにも同様に適用することができます。

重要なのは、有形経済において、知財はこうしたスポーツや文化的発露の全てに資金を提供する手段となっているということです。

知財の新たな役割の説明をこれまでに試みてきましたが、ここで2つの最終的考察へと進みたいと思います。すなわち、知財の新しい世界で我々の心を占領しつつある支配的テーマと疑問点は何か?そして、こ の新しい状況は知財の方針を決定するプロセスにどう影響するか?

いくつかの支配的テーマと疑問点

私は、知財の新しい状況において、もっとも我々の心を占めると思われる3つの疑問点があると考えます。私は最初のものを「資格付与」と呼びます。これは、私 が前述した競争行為の規制者としての知財の役割に関係しています。2番目と3番目の疑問点は、イノベーション又は創造を取り巻く利益の多重性に係る社会経済的均衡の番人としての知財の機能に関係しています。私 はそれらを「充当性(appropriability)」及び「アクセス」と呼びます。これらの疑問点のそれぞれは、私がここでそれらについて論ずるよりさらにもっと広範な議論をするに値します。私 はそれらが知財の新しい世界における支配的問題点である、又はこれから問題点になり得ると信じる理由を示す幾つかの強調点を概説するに留めたいと思います。

「資格付与」は長年の問題です。それは所有権、又は管理権、又はフィニアンの彩飾画の問題です。それは、あるものを最初に発明又は創造したのは誰かについてであり、一 方では他の誰かの文学的創作又は意匠から得た合法のインスピレーションと他方では違法な模造品又は独創性を欠いた模写との間の境界線は何かについてであって、それは常に知財の世界を活気づけています。しかし、そ れは3つの理由でさらに一層活発化しそうです。

最初の理由は、知識経済の成長の結果として今や関係づけられる強化された価値です。

2番目の理由は、商業秘密や機密情報のスパイ行為や違法な流用の重要性の増大です。技術によって以前は不可能であった方法でスパイ行為が広範囲に可能になりました。こ の展開はスパイ行為の標的である無形資産の価値の上昇と符合します。同時に、国際的規模で企業から企業へと技術を身につけた人材が移動することも今や常識です。これはスパイ行為という形ではありませんが、企 業の知識資産に対する潜在的脆弱性を生んでいます [25]

こうした展開は機密情報又は商業秘密を保護する知財の派生的役割の重要性を強調しています。世界的にそれは劣悪な状況です。均一なアプローチがほとんどなく、コ モンローや民法は問題に対して法律上全く異なった見方をしています。多国間の規定がほとんどなく、存在するのは工業所有権の保護に関するパリ条約 [26]とTRIPS協定 [27]です。大いに注目する必要のある分野ですが、それに多国間の注意を集めるのは容易ではありません。透 明性の時代に秘密性を推進することは困難な仕事です。たとえこれが事態に対する全く表面的な方法だとしても、これは人が期待し得る緊急の対応であり、国 際的行動の土台を敷くに当たっては十分な注意を払う必要があるでしょう。

資格付与の問題の活発化を期待する第3の理由は、競争と協力の間の静かに高まる緊張です。私は競争がイノベーションと知財の分野で高まっている理由を概説しました。同時に、オ ープンイノベーションはイノベーションが取るべき姿勢として重要性が増してきています。オープンイノベーションの意味は多くありますが、広い意味でそれは、企 業がイノベーションを起こすために純粋に内的なプロセスに依存するのではなく、そのイノベーションのニーズを満たすため社外とのパートナーシップや提携に対して目を向ける傾向を言います。前述した通り、協 力の強みは増加しています [28]。この競争と協力との間の緊張は、来るべき将来、決定的問題となり、知財はこの緊張を解決する手段となるでしょう。これが、I BMの元社長兼CEOのサミュエル・パルミサーノが「知的財産は21世紀の重要な地政学的問題の1つとなるだろう」と述べた理由です [29]

第2の問題点のいくつかは「充当性」を巡って沸き起こるものですが、もちろんこの言葉のことを言っているわけではありません。私 はこの言葉を2つのことを言い表すために使用しています。すなわち、あるものが知的財産権の対象であるべきか否か、そしてあるものが知財権の対象になり得るか否か、ということです。

あるものが知的財産権の対象であるべきかどうかは、何を流通からはずして、私有財産のドメインに置くことができるかという問題が生じます。理論的には立場ははっきりしています。知 財は新規性、独創性、識別性のあるもののみを取扱います。知財は先行して存在しないもののみを保護するため、パブリック・ドメインに由来するものとは関係しません。しかし、実 際上の立場はそれほどはっきりしてはいません。科学と技術、又は発見と発明の間の境界線は、遺伝子特許に向けられた最近の議会及び司法の注目が示す通り、特に法律家にとって、線引きが益々困難になってきています[30]。何に充当すべきかという問題は科学の進歩に限定されません。それは、商標法による言葉、記号、符号の充当に関しても等しく起こります。例 えば、色は一企業が独占することができるでしょうか?

ここでの知財にとっての大きな課題は一般社会との接触がなくなることではありません。上述したように、様々な理由で知財に対する社会的注目や知財重視の機運は高まっています。知 財が、法律又は司法を通じてであるか否かに関わらず、一般社会の意向と一致しない充当性に関する決定をした場合、全ての優れた規則が依拠している社会的信用を失ってしまいます。

何を充当することができるかは、特に生命科学やデジタル技術などの完全かつ効率的模倣の出現から生じる全く異なった問題です。こ こで現れた問題点は一方での生産コストと他方での再生産コストとが分裂していることです。新薬の場合、生産コストは業界によりおよそ10億ドルと試算されており、生産工程に数年がかかります。しかしながら、一 旦開示され公有のものとなれば、有能な大学院生により比較的わずかな経費をかけて3カ月で再生産することができます。新しい長編映画は制作に2年、数百名のスタッフ、数億ドルの費用がかかる場合があります。し かしながら、一旦制作されると、ほんの数秒のうちに、ほとんど費用をかけず完全に忠実にコピーすることができます。こうした発展は知財に対する重大な挑戦であり、繰り返しますが、こ こで私がそれらを分析するよりもっと大規模な分析を行う価値があります。

新しい環境における我々の心を占める第3の問題は、アクセスです。上述した通り、知財がすることは、売却可能な商品に対するアクセスを実現することです。こ れにより技術市場が可能になる一方、アクセス価格やアクセス不足に対する社会的緊張も生まれます。この緊張は、製薬、生物医学技術、インターネット・コンテンツ、気 候変動技術へのアクセスに関連して起きていることがわかりますが、最後の分野は一般社会の注目を集めた本格的な政治的関与よりはもっと理論的な論争です。

アクセスをめぐる緊張が治まるとは思われません。政策決定者にとっての課題は、情報に基づき理にかなった公開討論を組織する試みです。企業にとっての課題は、一 方では競争力の維持と投資に対する金銭的利潤の獲得、他方では一般社会の敵対的反応の可能性の管理、その間のバランスを取ることでしょう。ここには当然パラドックスが作用しています。新しいソーシャル・ネ ットワーキング又はメディア技術から誰かが何十億と稼ごうと誰も気にかけないように見えますが、生命を救う新薬から誰かが何十億かを稼ぐことには社会的不快感が存在します。我々はイノベーション・シ ステムにおいてどちらの結果に到達したいのでしょうか?

新しい環境における政策決定

知財に関する新たな状況と同じく、知財に関する政策決定の環境も過去20年間に著しく変貌しました。政策決定者にとっての課題は、技 術変革が疑問を生むのと同じぐらい早いスピードで回答することです。世界中の国内、二国間、複数国間、地域間、多国間レベルで非常に活発な知財に関する政策のアジェンダがあります。こ れら全てをどう適合させるのでしょうか?

グランド・デザインがあると言えれば素晴らしいのですが、残念なことに現実は日和見主義的です。我々は多国的世界から多角的スピードの世界へと移行しています。先 進国にとってのその競争的意義を考え、特に社会的注目の焦点が充当性やアクセスなどの問題に絞られることを考えると、あらゆる利用可能な領域で、政府、産業界、研究学界、及び他の全ての国以外の関係者であって、知 財に利害関係があると感じている全ての者たちによって、知財は追求されることになります。この日和見主義にはリスクがあり、私は以下の3点を取り挙げたいと思います。

第1のリスクは非常に多くの交差プロセスにおける政策の統一性の維持です。理想的には、1つのレベルがロシア人形のように別のレベルに収まるようにすべきです。多 国的レベルが最も大きな人形となります(恐らく、それが最重要であるからではなく、他の全てがそれに一致すべきであるからです)。実際には、いかなる瞬間も、複 数のレベルで起きている複数のプロセスが存在するということです。最初のプロセスでは問題の決定の準備ができていない一方で、第2のプロセスは結論に至っているため、1つのプロセス(例えば、環 太平洋経済連携協定(TPP)のような複数国プロセス)が別のレベル(例えば、多国間プロセス)の議論を妨げるというリスクがあります [31]

第2のリスクも多国間レベルで起こり、非常に多くの多様な利害が関係する政策プロセスを管理する複雑さから生じます。これは、方針なしのリスクであり、ここでは、政 策が初めから民間セクターの行動により決定され、裁判所は立法機関が下すことのできない決定をするよう要求されるという次第です。この好例はグーグル・ブックの調停に係る訴訟です。この訴訟では、フ ランスとドイツの両主権国が国際的に確立された原則の利益だと理解していたものを維持しようとして異議を申立てたため、米 国連邦地方裁判所ニューヨーク南地区における私法訴訟が国際政策の公開討論の場となりました [32]

最後のリスクは政策の対応能力が問題の規模と等しくないというリスクです。我々はこのことがもっと一般的に多国間の関係で起こることを知っています。国 際社会の合意に達する能力は限られていますが、世界が直面する問題や課題は日々規模が大きくなっており、人、商品、兵器、細菌、汚染又は文化的内容から生じるものなど、そ れらのほとんどが適切な政策による対応を提供することのできる国際協力を求めています。

WIPOではこの2年間に、加盟国が2つの新たな条約を成立させることによってこの傾向に抵抗しました。最初の条約は俳優や視聴覚実演を著作権に関する国際法の枠組み内に含めることを目指した北京条約 [33]、2番目の条約は盲人、視覚障害者、又は読字障害者の出版物へのアクセスが改善されることを目指すマラケシュ条約 [34]です。私はこれら2つの条約の合意がいくつかの理由のため [35]可能であったと考えていますが、際立った理由は、これらの条約が、広範な知財又は多国間アジェンダにおける利害と関係なく、自 分たちの実力で交渉した具体的かつ技術的な問題を扱ったということでした。新しい条約は関係者、視覚障害者、知財、WIPO、多国間主義にとって非常に歓迎すべき勝利であります。しかし、それはまた、知 財政策を新しい環境に適応させる道のりが、多くの具体的かつ技術的ソリューションによって築かなければならない長い道のりであることを示しています。しかしながら、我々の胸の奥では、世界が急速に動いており、そ の途上で、ソリューションを導き出すためにかき集めることのできる能力のすべてを要求するであろう大きな問題が我々に投げかけられていることを知っています。

ここで、皆さんに率直に語りたい考えがあります。もしあなたが18世紀か19世紀初頭に存在していたなら、新たな富は物的資本や工業化によって、新 たな方法でやや大規模に創造されるでしょう。工業化は次の200年の世界を方向づけた多くのイデオロギー的論争や分裂―資本主義、マルクス主義、共産主義、社会主義―を引き起こしましたが、それらはみな財産、財 産の管理、国家や国民による財産の消費を中心としていました。21世紀初頭の現在、新たな富は知的資産やバーチャル化によって新たな方法でやや大規模に創造されています。これが、私 が述べてきたことの中に我々が見ているもの、すなわち、近い将来の我々の世界を方向づける新たなイデオロギー戦線の輪郭です。



[1] 世界知的所有権機関(WIPO)事務局長。この論文に表明された意見は必ずしもWIPO加盟各国の意見を反映したものではない。

[2] アイルランド王立アカデミーMS 24 P25. 手書き原稿のこのページのコピーがWIPOの壁に掛けられている。Thomas Cahill, How the Irish Saved Civilization (1995, ニューヨーク)170も参照のこと。Thomas Jeffersonも同じ指摘をし、「 誰もがその全体を所有するのであって、誰もその一部を所有するのではない。私のろうそくから自分のろうそくに光を灯す者は、私を暗くすることなく光を受け取るのと同じように、私 からアイデアを受け取る者は私を矮小化することなく知識を受け取る」という考えを書き記した(Isaac McPhersonへの書簡、1813年8月13日)。

[3] 私は新しい創造的表現も含めるために非常に一般的意味で「知識」(及び「情報」)を使用する。

[4] iPhoneの場合、2~3カ月。各企業は今日、対応する特許出願の公告と共に新製品の発表を行う傾向がある(最初の出願後18カ月)。

[5] 一般的調査では、OECDの2年プロジェクトに関連する出版物 New Sources of Growth: Knowledge-based Capital, particularly New Sources of Growth: Knowledge-Based Capital: Key Analyses and Policy Conclusions-Synthesis report.(OECD 2013)を参照のこと。

[6] Wall Street Journal、2012年5月23日

[7] 米国商務省、 Intellectual Property and the U.S. Economy: Industries in Focus ( 2012年、3月) http://www.uspto.gov/news/publications/IP_Report_March_2012.pdf から閲覧できます。

[8] 国立科学審議会、 Science and Engineering Indicators 2012, 4-5 (バージニア州、アーリントン):アメリカ国立科学財団(NSB 12-01)

[9] この10年間、公開された科学論文数の平均増加率はアメリカ合衆国1%、EU1.4%、日本1.1%であったが、中国では16.8%、大 韓民国10.1%、シンガポール8.2%、インド6.9%(国立科学審議会、op.cit. 5-33)であった。

[10] 王立協会、 Knowledge Networks and Nations. Scientific Collaboration in the 21st Century (2011)

[11] Jenna Worthman、“Public Outcry Over Antipiracy Bills Began as Grass-Roots Grumbling”, New York Times, 2012年1月19 - 

http://www.nytimes.com/2012/01/20/technology/public-outcry-over-antipiracy-bills-began-as-grass-roots-grumbling.html?pagewanted=1&ref=technology);Jenna Wortham, “With Twitter, Blackouts and Demonstrations, Web Flexes Its Muscle”, New York Times, 2012年1月18日 - http://www.nytimes.com/2012/01/19/technology/protests-of-antipiracy-bills-unite-web.html?ref=technology; Deborah Netburn, “Wikipedia: SOPA protest led 8 million to look up reps in Congress”, Los Angeles Times,2012年1月19日 - http://latimesblogs.latimes.com/technology/2012/01/wikipedia-sopa-blackout-congressional-representatives.html. を参照のこと

[12] Nbcnews.com‐h ttp://www.nbcnews.com/technology/anonymous-says-it-takes-down-fbi-doj-entertainment-sites-117735

[13] 例えば“1.5 million signed a web petition calling on the European Parliament to reject ACTA” (http://www.nytimes.com/2012/02/06/technology/06iht-acta06.html) 及び“ Global protests on February 11, 2012” (http://www.ibtimes.com/anti-acta-day-action-february-11-protest-details-where-when-how-join-worldwide-fight-407660 を参照のこと。

[14] John Gaudiosi, “Microsoft Xbox: The damage has been done – Anyone who questions the power of the crowd need only talk to Microsoft”, Fortune Tech - Media Round-Up June 20, 2013 - http://tech.fortune.cnn.com/2013/06/20/microsoft-xbox-the-damage-has-been-done/

[15] 例えば、全米研究評議会、 Rising to the Challenge. U.S. Innovation Policy for the Global Economy (National Academies Press, 2012) の第5章を参照のこと。

[16] Jessica Leber, “Silicon Valley Fights for Immigrant Talent” MIT Technology Review, 2003年7月26日を参照のこと。

[17] Josh Rogin, “NSA Chief: Cybercrime constitutes the ‘greatest transfer of wealth in history’” Foreign Policy The Cable、2012年7月9日を参照のこと。

[18] 米国立アジア研究局、 Report of the Commission on the Theft of American Intellectual Property 2013年5月。その他の見解としては、“a rounding error in a 15 trillion dollar economy” , John Reed, “The Cost of Cyber Espionage: ‘A Rounding Error’ ” FP National Security 2013 3 25日, 2013, Center for Strategic and International Studies, The Economic Impact of Cybercrime and Cyber Espionage 2013年7月を参照のこと。

[19] アメリカ合衆国における特許訴訟の年間件数は1991年以降、全体で年間6.4%の伸び率で増加している(特許出願も比例して伸びている)。P wC、2012 Patent Litigation Studyを参照のこと。

[20] 大学は通常、特許権非実施団体なので、この用語はあまり適切とは言えない。

[21] RPX, 2012 NPE Activity Reporthttp://www.rpxcorp.com/siteFiles/SiteManager/0BF995E82CFF591EE80EFE8AC69259E7.pdf

[22]   Authors Guild v Google, No: 05 CV 8881、2005年9月20日提起された告訴、集団訴訟; McGraw-Hill et al v Google, No: 05 CV 8136、2005年10月19日に提起された告訴、大手出版社5社と米国出版者協会による民事訴訟。

[23] 例えば、Association for Molecular Pathology v Myriad Genetics Inc, 569 US _ (2013) (2013年6月13日); Cancer Voices Australia v Myriad Genetics [2013] FCA 65 (2013年2月15日)を参照のこと。

[24] 利益の相反とそれらを調和させる暗黙の必要性は、世界人権宣言の第27条の2つのパラグラフにおいて認識されている:「1.すべて人は、自 由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵とにあずかる権利を有する。2.すべて人は、その創作した科学的、文 学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護される権利を有する。」

[25] 上海日報誌は、「上海裁判所は商業秘密の流布に関する中国史上初めての禁止を昨日言い渡した。こ れは中国法の下での知的財産権保護における大きな前進である。上海第一中級人民法院は米国系製薬会社Ell Lilly and Companyの元従業員が商業秘密を利用し、流布することを禁じた。」と 2013年8月3日に報じた。 http://www.china.org.cn/china/2013-08/03/content_29613779.htmを参照のこと。t t t t t t t t t t t t t t t t t t t < /p>

[26] 第10-2条及び10-3条

[27] 第39条

[28] Ellen Enkel, Oliver Gassmann and Henry Chesbrough, “Open R&D and Open innovation: Exploring the Phenomenon”(2009) 39 R&D Management 4.

[29] Samuel J. Palmisano, “The Globally Integrated Enterprise” 2006 Foreign Affairs. この後、「幸い、幾つかの有望な新しいアプローチが試みられている。所有権、投資、総資本の共有に基づき知的資産を最大化するために使用制限を求める、知 的財産の保護からの重点の移動がすでに始まった。」と続いている。

[30] 例えば、

オーストラリア政府、IPオーストラリア、 Patentable Subject Matter, Consultation on an Objects Clause and an Exclusion from Patentability (2013年7月);国際経済センター、 Economic Analysis of the Impact of Isolated Human Gene Patents: Final Report (2013年5月)オーストラリア政府、 Response to Senate Community Affairs References Committee Gene Patents Report (2011年11月);オーストラリア政府、知的財産に関する諮問委員会 Patentable Subject Matter, Final Report (2010年12月);オーストラリア議会、コミュニティ関係に関する上院常設委員会、 Inquiry into Gene Patents (2010年);オーストラリア法制度改革委員会, Genes and Ingenuity: Gene Patenting and Human Health, Report No 99 (2004年); Association for Molecular Pathology v Myriad Genetics Inc., 569 US _ (2013) (2013年6月13日); Cancer Voices Australia v Myriad Genetics [2013] FCA 65 (2013年2月 15日)を参照のこと。

[31] この他の例として、今回の多国間及びその他の外的アジェンダに影響を与えると推定される一方的対策。James Politi and Richard Waters, “Apple Import Veto Risks Undermining Patent Protection Push”, Financial Times 2013年8月4日を参照のこと。

[32] Authors Guild v Google, No: 05 CV 8881、2005年9月20日提訴、集団訴訟; McGraw-Hill et al v Google, No: 05 CV 8136, 2005年10月19日提訴、5つの大手出版社と米国出版者協会による民事訴訟。

[33] 視聴覚実演に関する北京条約

[34] 盲人,視覚障害者及び読字障害者の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約

[35] 理由の分析のためにマラケシュ外交会議での私の閉会演説を参照のこと。 https://www.wipo.int/about-wipo/en/dg_gurry/speeches/dg_dc2013_closing.html.から閲覧可能。e e e e e e e e e e 。 。 。 。 。 。 。 。 。 < /p>

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