国際特許出願数が過去最多を記録 米国と中国が牽引
2014/04/30
ジュネーブ、2014年3月13日
PR/2014/755
2013年にWIPOを通じてなされた特許出願活動は米国と中国が牽引する形で記録的なレベルに達し、年間国際特許出願数が初めて20万件の大台を超えました。商標と意匠の国際出願数も過去最多となっています。
2013年のWIPO特許協力条約(PCT)1 出願数は合計20万5,300件に上り、2012年と比較して5.1%増となっています2 。米国は中国とともにPCT出願において2桁の成長を見せており、それぞれPCT出願の増加分の56%と29%を占めています。
米国は2013年の出願数が5万7,239件となり、世界金融危機前の2007年に記録した5万4,046件を上回りました。また中国はPCT出願数でドイツを抜き3位となりました(2位は日本)。米国は引き続きPCT出願数の首位を守りました (Annex 1)。
Infographics
2013年の出願人別PCT出願公開数では日本のパナソニックが2,881件で中国の中興通訊(ZTE)を抜き首位となりました3。
「知的財産(IP)の国際出願数が過去最高を記録したことは世界のイノベーション・エコシステムにおける知的財産の重要性を証明しています。」とフランシス・ガリWIPO事務局長は述べました。そして「WIPOの世界的な知的財産制度はグローバル・イノベーション・エコシステムの不可欠な要素であり、国際的な知的財産保護の適用に関して費用効果の高い選択肢を提供しています。」としました。
自動車産業では研究開発(R&D)への投資増に沿う形で、過去3年間国際特許出願が急増しています。
2013年のマドリッド制度による国際商標出願は2012年比で6.4%増の4万6,829件に上り過去最高を記録しました4 。今回の増加の21.8%は米国によるものです。国別のマドリッド国際出願数ではドイツが6,822件で昨年同様首位となり、続いて米国(6,043件)、フランス(4,239件)の順となりました (Annex 1)。出願人別ではスイスの製薬会社ノバルティスが2013年に228件の出願を行い首位となりました。
2013年のハーグ制度による国際意匠出願は前年比14.8%増の2,990件に上り、こちらも過去最高を記録しました5 。国別ではスイスが662件でドイツの643件を上回り首位となり、出願人別ではスイスのスウォッチが113件で首位を守りました6。
PCT 制度
PCT出願におけるその他の傾向
2013年のPCT出願上位10カ国中、中国(15.6%増)、米国(10.8%増)及びスウェーデン(10.4%増)が2桁の伸びを示しました。米国は2001年以降で最高の伸び率となっています。中国の伸び率は2012年の伸び率とほぼ同じです。PCT出願上位10カ国の中でドイツ(4.5%減)と英国(0.6%減)の2カ国だけが前年比で減少しました。日本は2011年と2012年に高い伸びを示しましたが、2013年は0.6%のわずかな増加となりました。
中低所得国のPCT出願は、中国に続いてインド(1,392件)が多く、さらにトルコ(835件)、ブラジル(661件)、南アフリカ(350件)、マレーシア(310件)、メキシコ(233件)の順となりました。これらの国の中ではトルコ(56.1%増)の伸び率が最も高く、続いてメキシコ(22%増)とブラジル(12.2%増)となっています。Annex 2 にはすべての国のデータが記載されています。
PCT制度の上位出願人
日本のパナソニックは2013年に2,881件のPCT出願が公開され、中国のZTE(2,309件)を抜いて首位となりました。過去にはZTEが2011年と2012年、パナソニックが2009年と2010年に1位となっています。このほか2013年に2,000件以上のPCT出願の公開が行われた出願人は中国の華為技術(2,094件)と米国のクアルコム(2,036件)の2社です。PCT出願人上位50の中では米国のインテル(1,212件増)が増加数で最多となる一方、ZTE(1,597件減)は最も減少しました。Annex 3 には出願人上位50のデータが記載されています。
パナソニックの特許活動を技術分野別に見ていくと、半導体デバイスがPCT出願の中で最多となっており、テレビ関連技術と化学電池がこれに続きます。ZTEと華為技術の出願はデジタル通信とコンピュータテクノロジーの分野に集中しています。両社に関しては最も無線通信ネットワーク関連技術の出願が多く、デジタル情報送信とデジタルデータ処理がこれに続きます。
教育機関では、カリフォルニア大学が398件で最多の出願公開数となり、続いてマサチューセッツ工科大学(217件)、コロンビア大学(133件)、テキサス大学群(119件)、ハーバード大学(119件)の順となりました。上位10機関のうち米国の大学が9つを占めています。唯一米国の大学以外の国の教育機関としてはKAIST(韓国科学技術院)が105件でトップ10に入りました。Annex 4 には出願人(教育機関)上位50のデータが記載されています。
技術分野別のPCT出願
1万4,897件のPCT出願は、公開された電子機器が全体の7.8%を占め最多となり、続いてコンピュータテクノロジー(7.7%)、デジタル通信(7.3%)の順となりました。Annex 5 には35の技術分野のデータが記載されています。電子機器の上位出願人はパナソニック、トヨタ自動車、ロバート・ボッシュ、シーメンスとなっています。コンピュータテクノロジーの上位出願人はインテル、マイクロソフト、クアルコム、NECとなっています。またデジタル通信部門の出願人トップ4はZTE、華為技術、エリクソン、クアルコムとなっています。
35の技術分野のうち31分野では上位10の出願人がすべて民間企業でした。残りの4つの技術分野(生物学的物質の分析、バイオテクノロジー、医薬品、ナノテクノロジー)では出願人上位10の中に公的機関も入っています。
自動車産業における2013年のPCT出願公開数は、日本のトヨタ自動車がトップで1,696件、続いて日本の日産自動車(644件)、日本の本田技研工業(364件)、ドイツのダイムラー(237件)、ドイツのアウディ(231件)の順となりました。自動車メーカー13社のPCT出願の総数は2010年の2,322件から2013年には4,275件と急増しており、同産業におけるR&D投資の急速な伸びを反映しているものと思われます 7。
マドリッド制度
マドリッド制度の上位出願国
2013年のマドリッド出願の上位10カ国の顔ぶれは2012年とほとんど変わっていません。上位10カ国中、オーストラリア(20.9%増)、オランダ(14.9%増)、米国(11.3%増)が大きな伸びを示す一方、日本のみが前年比で減少しました。上位10カ国のほかにマドリッド出願の多い国としてはトルコ(1,213件)やロシア(1,126件)が挙げられます。マドリッド制度に新たに加盟した2カ国、メキシコ(46件)とインド(41件)は2013年にほぼ同数の国際商標出願を行いました。Annex 6 にはすべての国のデータが記載されています。
マドリッド制度の上位出願人
2013年にマドリッド出願が最も多かった出願人はスイスのノバルティスで228件であり、続いてチェコのゼンティバ・グループ(114件)、ハンガリーのEgis Gyógyszergyár(111件)、フランスのロレアル(109件)、ドイツのベーリンガー・インゲルハイム・ファーマ(107件)となっています。上位50のほとんどが欧州の出願人です。上位50に入っている欧州以外の出願人はアップル(48件)、マイクロソフト(48件)、現代自動車(37件)エイボン・プロダクツ(31件)、武田薬品工業(29件)、ユニバーサルエンターテインメント(29件)のわずか6社です。Annex 7にはマドリッド制度の上位出願人のデータが記載されています。
マドリッド制度の指定国8
2013年の国際登録における指定及び事後指定の総数は7.2%増加しました。マドリッド加盟国の中で、最も多くの指定を受けた国は中国でした。ただし2013年の全指定件数に占める中国の割合は2012年の6.1%から5.8%に減少しました。またロシア(5.2%)が欧州連合(EU)を上回りマドリッド加盟国中指定件数で2位となり、続いてEU(5%)、米国(4.9%)、スイス(3.8%)、日本(3.7%)の順となりました。Annex 6 には指定を受けたすべてのマドリッド加盟国のデータが記載されています。
マドリッド制度に新たに加盟した国の中で最も多く指定を受けたのはメキシコ(5,095件)で、続いてインド(1,916件)、チュニジア(138件)、ルワンダ(100件)の順となりました。
指定件数の多い上位10カ国中、ロシア(9.6%増)、大韓民国(8.7%増)、オーストラリア(8.6%増)の伸び率が大きい一方、スイス(1.8%減)のみが減少しました。
分類別のマドリッド国際登録
商標出願の際に出願人は「ニース国際分類」として知られる国際分類制度に従って保護を求める商品又はサービスを特定する必要があります。2013年に最も国際登録の多かった商品及びサービスの区分は第9類(コンピュータハードウェア及びソフトウェア等)で全体の9.1%を占めました。2位には全体の7.7%を占めた第35類(事務処理、広告、事業管理等のサービス)が入り、第42類(科学・産業・技術エンジニア、コンピュータ専門家等が提供するサービス)と第25類(被服、履物、かぶり物)がこれに続きました。Annex 8 には区分上位15のデータが記載されています。
区分上位15の中で、第5類(主に医薬品)と第30類(主に植物性食品)は2013年の伸び率が最も高く、それぞれ9.0%増、8.6%増でした。
ハーグ制度
ハーグ制度の上位出願国
2013年のハーグ出願全体の58%が上位3国(スイス、ドイツ、イタリア)によるものでした。ハーグ制度に加盟している中低所得国の中ではトルコ(70件)の出願数が最も多く、次いでブルガリア(22件)、中国(18件)となっています。Annex 9にはすべての国のデータが記載されています。
2013年のハーグ出願上位10カ国中、イタリア(121.7%増)とノルウェー(105.9%増)の伸び率が極めて高かった一方で、スウェーデン(5.8%減)、フランス(4.9%減)、オランダ(4.6%減)、トルコ(2.8%減)の出願は減少しました。
ハーグ制度では1つの出願に最大100の意匠を含めることができます。2013年にこの制度に基づき出願された意匠の総数は前年比で5.8%増加しました。意匠の総数に占める各国の割合は多い順にドイツ(27.5%)、スイス(23%)、フランス(10.8%)、イタリア(8.4%)となっています。
ハーグ制度の上位出願人
スイスのスウォッチ(113件)が2年連続でハーグ出願数の首位となり、次いでフィリップス(コーニンクレッカ・フィリップス・エレクトロニクス)(82件)、プロクター・アンド・ギャンブル(76件)、ダイムラー(52件)、フォルクスワーゲン(51件)となりました。出願人上位20はプロクター・アンド・ギャンブルとジレット(どちらも米国)を除きすべて欧州企業でした。2013年の出願人上位20の中ではスウォッチ(32件増)、オメガ(23件増)、プロクター・アンド・ギャンブル(22件増)が最も大幅な伸びを示す一方で、ドイツのアウディ(41件減)とダイムラー(23件減)は大きく減少しました。Annex 10 にはハーグ制度の上位出願人のデータが記載されています。
ハーグ制度の指定国9
2013年の国際出願の総指定件数は1万6,159件で2012年から13.9%増となりました。最も多くの指定を受けた国はEU(2,099件)で、次いでスイス(1,934件)、トルコ(1,339件)、ノルウェー(785件)、シンガポール(743件)となりました。Annex 9には指定を受けたすべてのハーグ加盟国のデータが記載されています。
2013年の指定に含まれる意匠の総数は6万7,113で、2012年からわずかに増えました(1%増)。
クラス別のハーグ国際登録
ハーグ登録全体の中では、包装及び容器(クラス9)と時計・腕時計・その他の計測機器(クラス10)がそれぞれ10.9%で最大の割合を占め、家具(クラス6)と輸送手段(クラス12)がそれぞれ8.4%、7.2%となりこれに続きました。クラス上位15のうち、記録及び通信機器(クラス14、42.5%増)と工具及び金物類(クラス8、40.3%増)が2013年の出願において最も高い伸び率を示す一方、衣料品(クラス2、15.3%減)は最も減少しました。Annex 11 にはクラス上位15のデータが記載されています。
PCT、マドリッド及びハーグ制度の背景情報
PCT制度
PCT制度は複数の特許付与機関の管轄区域(国及び地域)での特許権の取得を促すものです。この制度を利用することにより、保護を受けたい管轄区域に個々に出願するよりも時間的な猶予が与えられ、複数の国及び地域への特許出願の手続が簡素化されます。ただし特許を付与するか否かの判断はそれぞれの国又は地域の特許庁に委ねられており、特許権の効力は特許付与機関の管轄区域に限定されます。PCT制度には現在148の国が加盟しています。
PCT制度の2013年の実績に関するデータのアップデート及び更なる分析については、WIPOウェブページの「 IP(Intellectual Property) Statistics」内で2014年5月に公表される『PCT Yearly Review: The International Patent System』をご参照ください。
マドリッド制度
マドリッド制度は、出願人がこの制度に加盟している国又は地域の知的財産庁に単一の国際出願をすることで、多数の加盟国において当該商標を出願できるようにするものです。この制度を利用することにより、保護を受けたい国の知的財産庁に個々に出願する手間が省かれ、複数の国内商標登録の手続が簡素化されます。さらにこの制度では記録の変更や登録の更新が単一の手続で済むため、商標の事後的な管理も簡素化されます。
マドリッド制度の2013年の実績に関するデータのアップデート及び更なる分析については、WIPOウェブページの「IP Statistics」内で2014年4月に公表される『Madrid Yearly Review: International Registrations of Marks』をご参照ください。
ハーグ制度
ハーグ制度は出願人がWIPO国際事務局に単一の出願を行うことで複数の国に意匠登録できるようにするものです。この制度では1つの出願に最大100の意匠を含めることができるため、効率性を上げる機会を大いに提供しています。また保護を受けたいハーグ加盟国又は地域の知的財産庁に個々に出願する手間が省かれ、複数の国内登録の手続が簡素化されます。さらにこの制度では、記録の変更や登録の更新が単一の手続で済むため、意匠登録の事後的な管理も簡素化されます。
ハーグ制度の2013年の実績に関するデータのアップデート及び更なる分析については、WIPOウェブページの「IP Statistics」内で2014年4月に公表される『Hague Yearly Review: International Registrations of Industrial Designs』をご参照ください。
- PCT制度では利用者が単一の国際特許出願で複数の管轄区域に同時に特許保護を請求できます。 ↑
- WIPOは2013年に国内官庁に提出されたPCT出願を2014年に入っても引き続き受領しており、PCT出願のデータは暫定値です。↑
- 機密保持のため、上位出願人のランキングと技術分野ごとの出願状況は、PCTの出願件数ではなく出願公開公報に基づいています。国際公開日に基づく統計データは、国際出願日に基づくデータと比べておよそ6カ月遅れとなります。 ↑
- WIPOの「標章の国際登録に関するマドリッド制度(略して「マドリッド制度」)」では単一の国際出願で複数の管轄区域に商標登録ができます。 ↑
- WIPOの「意匠の国際登録に関するハーグ制度(略して「ハーグ制度」)では、出願人が単一の国際出願で複数の管轄区域に最大100の意匠の登録を可能にします。 ↑
- 単一のハーグ出願には、最大100の個別の意匠を含めることができます。 ↑
- PCT出願人上位500の中に自動車メーカーは、13社含まれています。 ↑
- 国際出願において、出願人はその商標の保護を求める国又は地域(EU)を指定します。 ↑
- 国際出願において、出願人はその意匠の保護を求める国又は地域(EU)を指定します。 ↑
更なる情報については、WIPOのメディア関連セクションにお問い合わせください。
- Tel: (+41 22) - 338 81 61 / 338 72 24
- Fax: (+41 22) - 338 81 40