フェローシップ研修:Dr. Dara Ajay (インド)
2018/03/15
WIPO日本事務所(WJO)の招待と志賀国際特許事務所の協力により、インド出身のDara Ajay (哲学博士NIPER) は、WIPO ジャパン・トラスト・ファンドの下でWIPO短期フェローシップ研修を修了しました。WJOは、この2週間に渡って行われる短期フェローシップに毎年平均で3名のフェローを招待しています。 Dara氏の研修は、日本の特許法、知的財産(IP)訴訟、PCTなどのWIPOの国際的な知財保護制度について行われました。
Dara氏が12人目のフェローとして参加したこの研修フェローシップは、WIPOがサポートするLL.M. プログラムの卒業者向けに、ホーガン•ロヴェルズ•インターナショナルLLP、伊東国際特許事務所、日本特許情報機構、青和特許法律事務所を含めた日本に存在する大手知財事務所で実際に知的財産関連業務を経験する機会を作る目的で創られました。実務経験を通し、研修生は特許事務所の中核業務や各事務所が知的財産権所有者のために提供しているサービスをより良く理解することができます。研修生の経歴・要望を考慮し、研修は知的財産の出願、登録、訴訟など実際の業務にかかわる場合もあります。以前はガーナ、マレーシア、モンゴリア、スリランカやフィリピンなどからも研修生が参加しました。
実践的な能力の向上
今回の研修を通しDara氏は出願書類の作成, 具体的にはクレームの作成方法やオフィスアクションへの対応について理解を深めることができました。志賀国際特許事務所での研修はDara氏の実用的な知識の向上や、日本での出願書類の作成・出願・審査を経験する良い機会となりました。研修の終盤には志賀国際特許事務所が日本特許庁、日本最高裁判所へDara氏を案内しました。日本特許庁では、日本国内での特許・商標の審査手順について、またアウトソーシングを行い処理の迅速化にも努めていることなどへの理解も深めることができました。それに加え、特許出願書類上の翻訳不一致に関する侵害についての審理を公聴する機会も設けられました。日本最高裁判所では、日本の法制度についての概略紹介、事例が3つの小法廷と大法廷間でどのように処理されているのかについての詳細な説明を受けました。
互いの経験を共有
フェローシップの条件として、Dara氏はインド特許庁での現在の知的財産権の傾向を発表、議論しました。プレゼンテーションでは、インドと日本の二国間の特許審査の違いについて指摘しました。その他にも、インドの伝統的知識電子図書館(TDLK)の重要性について、先進技術特にハーブ抽出物に関しての発明に対してのTKDLの重要性が強調されました。更にはインド特許庁に報告された強制実施権の事例研究についても議論され、インド特許庁で最初に強制実施権が認められた極めて重要なケースであるNatco v. Bayerや、強制実施権が製薬工業の特許に与える影響が議題にあがりました。最後に、プレゼンテーションではインド最高裁判所での特許侵害・禁止命令の傾向についても紹介されました。
これからの見通しについて
Dara氏は今回の日本での研修を通し、特に日本国内での、特許出願の請求項と明細書の作成・検索スキルを身につけることができたと表明しています。現在、彼は知財訴訟についての研究に力を入れ、今後のインドでの政策変更の発展に繋げることに興味を示しています。そんな彼の将来の目標は、生まれ故郷インドの代表として世界保健機関(WHO)、世界知的所有権機関 (WIPO)、世界貿易機関(WTO)などの国連機関で知財に根ざした専門職を全うすることです。