事務局長の日本訪問中にAIがIPの将来に与える影響に関する話し合いを行いました
2019/02/15
フランシス・ガリWIPO事務局長は、2019年2月14日に2日間の日本公式訪問を終えました。 事務局長は訪問中に、政府高官および企業経営者と会談し、相互関係およびイノベーションと知的所有権(IP)システムに対する人工知能(AI)の重大な影響について話し合いました。
事務局長は大臣や高官との会話の中で、 日本の多国間外交に対するコミットメント、そして、当機関に対する支援を歓迎しました。
日本政府とWIPOは、世界経済の成長をサポートし、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成するためのイノベーションを促進することを目的とした強固な協力関係について再確認しました。
ガリ氏は訪問中、世耕弘成経済産業大臣と会談し、SDGsを達成するためのイノベーションの促進を目的とした日本とWIPOの継続的な良好関係を築く方法について議論しました。
コラボレーションには、大阪で開催される2025年国際博覧会の際に、イノベーションエコシステムに不可欠な一部として、IPシステムを促進することが盛り込まれています。万博のテーマは、包括的で人間中心な未来社会とイノベーションです。
「私は、2025年大阪万博をSDGsに向けた未来社会を模索する‘People’s Living Lab’として活用したいと考えています。既存のIPシステムの土台 は、1878年パリ万博で展示された発明品の保護に関する一般協定に由来しています。万博とIPの密接な関係を考慮すると、IPシステムがどのように2025年大阪万博で第四時産業革命をサポートするべきかを検討するのは良い機会であり、有益なことです。」と、世耕大臣は述べました。
ガリ氏は宗像直子日本特許庁(JPO)長官とも会談し、技術的なIPインフラの整備および知財庁のデジタル変革支援に関する JPOのWIPOへの将来的な貢献、ブランド関連の知的所有権を活用する戦略的ブランディングプロジェクト、 開発途上国および後開発途上国におけるイノベーション基盤の拡大に取り組む新興企業に対するWIPOのJapan Funds-in-Trustによるサポートについて議論しました。
ガリ氏は、IPシステムのアクティブユーザーである1,000社以上の日本企業が参加する日本知的財産協会(JIPA)年次シンポジウムで登壇した際、AI関連のイノベーションおよびIP活動における日本の強い存在感を称賛し、それは新しいテクノロジーに関するWIPOの新しい文献「WIPO Technology Trends on AI」でも立証されていることを紹介しました。
「AIは近い将来、産業界の状況を大きく変える可能性を秘めています。近い未来、多くの産業分野にAI技術が広範囲で導入されるようになるでしょう。」と、ガリ氏は述べました。
「IPシステムは、相互交流の一般的なAI技術から異なる技術分野、そして、製造でAIとロボットによる自動処理の混合使用にいたるまで、これまでにない方法で異なる技術分野間のよりダイナミックな相互作用を促すでしょう。そして、それは、日本ではソサエティー5.0としても知られている第四次産業革命を支えるでしょう。」
事務局長はまた、 日本の内閣府によって設置された総合科学技術イノベーション会議で常勤議員を務めた原山優子氏と共に、SDGsを支持する日本企業の国際的なパートナーシップに関して議論する特別パネルに登壇しました。また、ソニー執行役員コーポレートエグゼクティブ、JIPA副会長の御供俊元氏もこの議論に参加しました。
ガリ氏はAI産業のリーダー企業のトップであるソニーの吉田憲一郎社長、日立製作所の東原敏昭社長とも会談を行い、新しいテクノロジー、イノベーションおよびIP管理について意見交換をしました。
ガリ氏はNHK放送技術研究所を訪問し、三谷公二所長と超高解像テレビに関する研究および視覚障害者に向けた支援技術(AIによって可能となったテキストから音声へ変換するツール)について話し合いました。世界でも有数の放送機関の一つであり、また最新のAV技術を保有し、 イノベーションを積極的に推進する組織でもあるNHKは、視覚障害者が放送内容を楽しむことを可能にする最新の技術を提供しています。
昨年、日本はWIPO視覚障害者等による著作物の利用機会促進マラケシュ条約に加盟し、WIPOで現在行われている放送機関の保護に関する新しい条約の可能性に関する議論に積極的に参加しています。