ガリ事務局長が訪日:大臣や政府高官、産業界のリーダーと会談
2020/02/20
フランシス・ガリ世界知的所有権機関(WIPO)事務局長が日本を公式訪問し、政府高官や産業界のリーダーと会談を行いました。会談では、WIPOとの協力関係、人工知能(AI)やビッグデータがイノベーション及び知的財産(IP)制度へもたらす大きな影響などが議論されました。
経済産業大臣や文部科学大臣をはじめとした政府高官との会談の中で、ガリ事務局長は、日本の多国間主義へのコミットメントやWIPOへの支援を歓迎しました。日本政府とWIPOは、世界経済の成長を支援し、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために、イノベーションの促進に向けて、引き続き協力していくことを再確認しました。
ガリ事務局長は、2020年2月19日に梶山弘志経済産業大臣と会談し、日本とWIPOとの間の現在進行中の種々の協力を更に深化させる方法やSDGsの達成のためにイノベーションをどのように促進するかについて議論しました。
また、ガリ事務局長は、萩生田光一文部科学大臣と会談しました。萩生田文部科学大臣は、今後予定されている視聴覚的実演に関する北京条約の発効につながった、著作権および関連する権利の分野におけるルール作りへのWIPOの努力について感謝の意を述べました。さらに、萩生田文部科学大臣とガリ事務局長は、2019年1月1日に日本で発効したマラケシュ条約の実施について意見交換を行いました。
また、ガリ事務局長は、松永明特許庁長官と会談し、環境に優しい技術の利用を増やすためのイノベーションの促進と国際的な技術移転に焦点をあてたWIPOの官民パートナーシップであるWIPO GREENへの支援に関する同意書に署名を行いました。WIPO GREENは、環境技術のイノベーターと、環境技術を探している人達と、環境に優しい技術を支援する公的および私的団体と、グリーンイノベーションやその他関係分野の専門家とを繋げます。最近では、日本企業16社が、環境技術の提供者としてWIPO GREENに参画しました。
ガリ事務局長は、松永特許庁長官と、WIPOが現在進めているAIと知的財産に関するパブリックコンサルテーションや、AIに支援された発明の保護についての日本国特許庁のポリシーについて、議論しました。日本国特許庁とその他のIP5の知財庁は、AI関連発明の特許審査基準について意見交換を行っています。
また、ガリ事務局長はパナソニック株式会社を訪問しました。同社は、WIPOが提供する特許協力条約に基づく国際特許出願制度の世界屈指のユーザーの一つであり、太陽光発電を蓄電するための電気自動車用電池などの環境技術の主要な提供者です。
パナソニック株式会社は、2019年にWIPO GREENのパートナーになりました。
二日間わたる日本訪問において、ガリ事務局長は、国際出願・登録制度の活発なユーザーである1,000社以上の日本企業からなる一般社団法人日本知的財産協会(JIPA)主催の会議で、その他の民間企業の幹部と意見交換するとともにスピーチを行いました。
ガリ事務局長は会議の中で、「国際的な話し合いを早急に必要としている多くの知財政策事項の中で、AIは複雑で強力な汎用技術であることから、AI政策とそれが現在の従来型知財制度へ与える影響は、オープンな話し合いを決定的に必要としています。この分野における日本の経験と考えは、知財の文脈でのAI政策の国際的な話し合いの最初の段階において、正しい問を設定するにあたり、価値があります。」と述べました。