国際出願、世界と日本の現状
2020/05/26
国際特許出願制度
WIPO発表の2019年の国際出願の統計を見ますと、国際特許出願(PCT制度)については、1978年の運用開始以来、世界一の出願件数であった米国を抜いて、中国が世界第一位となりました(中国58,990件見込み(以下同じ)、米国57,840件)。
日本も両国に継ぎ、世界全体の増加率5.2%を超える5.9%の伸びを示しつつ、初めて5万件を超えるとともに(52,660件)、出願上位20社の中で、日本は6社と中国の5社、米国の3社、韓国の3社と比肩しても大企業を中心に堅調な伸びを示しています。なお、出願人別にみると、ファーウェイ(4,411件)が首位、三菱電機(2,661件)、サムスン電子(2,334件)がこれに継ぐなど、東アジア企業が上位を占めています。
一方、大学等の高等教育機関を見た場合、東京大学が第12位であるものの、上位は米国および中国の大学が独占し、上位50位を見ても、日本の大学は少数です。大学および中小企業において、特許の重要性がいまだ十分に認識されていない可能性があり、ライセンス収入や技術移転が欧米に比べて低調となる背景の一つとも考えられます。高等教育機関等における国際特許出願の現状は、特許が20年にも及ぶ排他的な独占権であることを考慮しますと、将来のイノベーションや市場を担う基礎技術や、出願の伸びが顕著な情報通信技術に対する主導権争いに大きな影響を与える可能性があります。
国際商標制度
国際商標制度(マドリッド制度)について、上述のWIPO発表の統計を見ますと、2019年においても、日本企業の利用はいまだ日本の経済規模と比較し低調です。
上位50社にも日本企業は1社しか見られず、大企業も含め、同制度のメリット(加盟国への一括出願や一括管理、手続費用、代理人費用の低減)が十分に浸透していないものと考えられます。
一方、首位の米国は、上位50社に7社が入り、中にはこれまで制度の利用がなかった中堅企業が新たにランクインするなど、全体として約14%の顕著な伸びを示しています。
国際意匠制度
国際意匠制度(ハーグ制度)について、上述のWIPO発表の統計を見ますと、日本企業の利用はいまだ日本の経済規模と比較し低調です。
同様の時期に同制度に加盟した韓国などは、サムスン電子(1位)やLG 電子(3位)など、積極的に同制度を活用しています。
韓国では、高額知的財産訴訟となった米国カルフォルニア州でのアップル対サムスン事件を背景に差異化戦略としてのデザインに対する考え方が進んだとみられる一方、日本企業には、同制度のメリット(加盟国への一括出願や一括管理、手続費用、代理人費用の低減)が未だ十分に浸透していないことなどが背景と考えられます。