WIPO標準委員会がデジタル時代の新しい標準を承認し、その他の標準を改訂
2021/01/22
WIPO標準委員会(CWS)は、2020年11月30日の週の会期中に、4つの新しい標準を承認し、他の3つの標準を改訂しました。11月30日~12月4日のセッションの開会にあたり、WIPOのダレン・タン事務局長は、WIPO標準が世界中の知的財産庁で起こっているデジタルトランスフォーメーションの中心にあることを強調しました。
仮想フォーマットでの作業という制約にもかかわらず、委員会は、デジタル時代の要求を反映した4つの新しいWIPO標準を採択しました。これらの標準は、知的財産データの自動処理と交換のためのウェブAPI、動きとマルチメディアの標章の管理と商標の法的状況(リーガルステータス)、意匠の視覚的表現の管理などの内容を含んでいます。
すべてのセッションのビデオは、WIPOウェブキャスティングポータルで入手できます。
新しい標準
4つの新しいWIPO標準は、まもなくWIPOのウェブサイトで公開されます。
- ウェブ アプリケーションプログラミングインターフェイス(API)に関するWIPO標準ST.90(CWS/8/2)は、ウェブ上の 機器間通信を介した知的財産データの処理及び交換を容易にするための勧告を提供します。これは、統一されたウェブサービス設計原則を確立し、知的財産コミュニティのウェブサービスパートナー間の相互運用性を確立することにより、一貫性を促進するものです。
- マルチメディアの標章に関するWIPO標準ST.69(CWS/8/3)は、動き及びマルチメディアの標章の保護のための出願に関する勧告を提供しています。この標準は、出願人と知的財産庁が、マルチメディアファイルの取扱い及び公開のための共通のマルチメディアフォーマット及び慣行について合意することを支援しています。
- 商標の法的状況(リーガルステータス)に関するWIPO標準ST.61(CWS/8/4)は、マドリッドシステムを含む各国の法域における法的状況(リーガルステータス)の世界的な利用可能性、信頼性、比較可能性を改善するための勧告を提供しています。これが一度実装されると、知的財産情報ユーザー、知的財産庁、知的財産データプロバイダ、一般市民、その他の人々は、商標出願や登録に関するデータへのアクセスが容易になるという恩恵を受けることになります。これが承認されることにより、特許(WIPO ST.27)、意匠(WIPO ST.87)、商標(この新しい標準であるWIPO ST.61)という主要な産業財産のための3つの法的状況(リーガルステータス)の標準のセットが完成します。
- 意匠の電子的表示に関するWIPO標準ST.88(CWS/8/5)は、意匠の電子画像及び動画の作成、保存、表示、管理、公開及び交換の方法に関する勧告を提供しています。この標準は、複数の官庁における同一の意匠の出願を簡素化するために、出願人と知的財産庁が共通のフォーマットに合意することを支援するものです。また、知的財産庁がデータを交換し、公開し、意匠の画像及び動画の自動検索を強化するための共通のガイドラインも提供しています。
改訂された標準
会期中に3つの標準が改訂されました。特許の法的状況(リーガルステータス)に関する標準ST.27は、知的財産庁とユーザーが特許や出願の状況に関する情報を交換するのに役立ちます。ST.26は、出願人が共通のXML形式でヌクレオチド及びアミノ酸配列リストを作成するのに役立ちます。また、ST.37は、公開された特許文書の権限ファイルのフォーマットを提供するので、知的財産庁やその他の機関は、その管理文書の対象範囲を検証することができます。
特に重要なのは、本セッションで行われた配列リストに関するWIPO ST.26の改訂であり、これはPCT制度および世界中の配列リストを有する特許出願に影響を与えます。この改訂は、加盟国の合意に基づき、国内、国際、地域レベルで2022年1月1日から世界的に発効することになります。国際事務局は、WIPO ST.25からST.26への2022年の一括導入型の移行に備えるために、残り数ヶ月の重要性を強調したいと思います。移行を円滑かつ成功させるためには、すべてのオフィスによるタイムリーな実施が不可欠です。
この実施を支援するために、国際事務局は、出願人及び知的財産庁のためのソフトウェアアプリケーション「WIPO Sequence」をさらに改良し、知的財産庁及び末端利用者と緊密に協力して開発してきました。 WIPO Sequenceの初版は2020年11月に公開され、出願人や知的財産庁が試験的に利用できるようになっています。国際事務局では、WIPO ST.26の改訂版で新機能を搭載したツールの改良などを行っています。