国際協力の相互利益:キャパシティビルディングと従業員の成長の促進
2021/04/26
WIPO Re:Searchに参加することで、医学研究における国際的な知識の共有を向上させるだけでなく、企業の従業員の成長と満足度をどのように高めることができるのでしょうか?WIPO Re:Searchは、武田薬品のR&D Center for Health Equityの責任者であるChris Reddick博士に武田薬品の経験についてお話を伺いました。
武田薬品は2015年からWIPO Re:Searchのアクティブメンバーです。この経験は会社にどのような影響を与えましたか?
2015年にWIPO Re:Searchに参加したとき、私たちが主に重視していたのは、低中所得国を中心に影響を与える疾患の医薬品開発を支援すべく、化合物ライブラリを世界の研究コミュニティと共有することでした。このようなアプローチは、特定の研究プロジェクトでは良い結果をもたらしましたが、時が経つにつれ、知識の共有を通じて幅広い科学的専門知識の構築を支援することで、さらに多くのことができるということを理解するようになりました。意識的に方針転換を行った結果、武田薬品は現在、研究開発(R&D)のキャパシティビルディングの面で先導する役割を果たしています。今日、私たちは自分自身に問いかけているのは、「私たちが焦点を当てていない特定の感染症に重点的に取り組む研究機関や非政府組織(NGO)を強化するためには何ができるだろうか」ということです。
この戦略をどのように実装していますか?
一部の共同研究では、ある特定の疾患にも利用できるかを調べるために、研究開発を行っている機関と化合物ライブラリを共有しています。例えば、WIPO Re:Searchの共同研究を通じて、武田薬品は、ブリティッシュコロンビア大学のAv-Gay教授と共に、結核に対するスクリーニングのための一連の阻害剤を共有しました。また、キャパシティビルディングと知識の共有に重点を置いた、より幅広いアプローチも取り入れています。このような共同研究の最終目標は、医薬品開発ではありますが、そのプロセスは知識の共有にあります。これはWin-Winの戦略であり、当社の科学者は外部の科学者の専門知識から学び、その逆もまた然りです。知識を共有した例としては、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)との共同研究がありますが、これは武田薬品のマイクロニードルパッチ技術を用いて、マラリアの伝播阻止ワクチンの投与が可能であるかについて調べることを目的としています。
WIPO Re:Searchの共同研究に武田薬品の研究者をどのように参加させていますか?
今日、企業はこれまで以上に世界的な医療エコシステムとのつながりを求めています。武田薬品の科学者もこの目標を共有しています。彼らにとって、日々の業務の中で、世界的な医療の課題に直接対応する機会を得ることが重要です。WIPO Re:Searchのようなプログラムに参加することで、実際に従業員の満足度が向上しています。また、すでに述べたように、当社の研究者はこうした共同研究に参加することで新たな知見やスキルを得て、専門的に成長し続けています。
WIPO Re:Searchについて
WIPO Re:Searchは、WIPOとBIO Ventures for Global Health(BVGH)の間の世界的な官民パートナーシップであり、非営利団体であるBVGHは、世界的な健康問題を解決するために、営利部門と非営利部門を結び付けています。WIPO Re:Searchは、顧みられない熱帯病(NTDs)、マラリア、結核との闘いにおける初期段階の研究開発(R&D)を支援しています。対象を絞った相互に有益なメンバー間の研究開発協力を通じて、化合物、データ、臨床サンプル、技術、専門知識を含む知的財産のロイヤリティフリーの共有を促進し、国連の持続可能な開発目標に向けた進展を促進しています。