2022/01/17
ほとんどの企業にとって、規模の拡大と成長のために、時には生き残るために資本が必要となるタイミングがあります。しかし、資金調達を行う際に、最も価値のある資産の一つである知的財産を利用する企業は多くありません。知的財産の強みを生かした資金調達手段を強化するために、政府や民間企業も同様に、様々な取り組みやサービスを試みています。こうした経験をよりよく追跡し、各国の事例や取り組みから学ぶために、WIPOは、新たなレポートシリーズ「知的財産を活用した資金調達」(Unlocking IP-Backed Financing)を開始しました。
本シリーズでは、各国による知的財産を活用した資金調達の取り組みを追跡します。各レポートは、現地のパートナーである知的財産庁、現地の専門家、WIPOとのパートナーシップにより作成され、現地の状況に関する現場からの視点を提供するものであり、成功事例や課題に加え、今後の見通しについて考察します。本シリーズは、知的財産を活用した資金調達に関する議論を深め、ベストプラクティスを共有し、このような金融手法を主流化するために必要なことを検討する機会を提供します。
最初のレポートでは、シンガポールの歩みと、知的財産を活用した資金調達に対する包括的な取り組みについて紹介しています。本レポートでは、強固な法的枠組みや政府を挙げての取り組みなど、どのようにしてシンガポールが知的財産を活用した資金調達の体制を確立したかを解説しています。とりわけ、知的財産担保融資に参加する金融機関とともに政府がデフォルトリスクを負担する試験的な知的財産担保融資スキームについて詳しく解説しています。さらに、情報開示、評価、無形資産の流通市場など、知的財産担保融資を支援する環境整備に向けたシンガポールの取り組みについて紹介しています。また、将来に向けて、知的財産を活用した資金調達の利用可能性を拡大する上で、シンガポールのエコシステムが直面している課題も明らかにしています。
本シリーズにつきまして、追加レポートの作成が現在進められており、2022年後半に公開予定です。本シリーズは、WIPOの知財イノベーション・エコシステム部門(IP and Innovation Ecosystems Sector)のうち、知財ビジネス部門(IP for Business Division)が担当しています。