世界知的財産報告書: デジタル化が今日のイノベーションを促進、グリーン技術の再興が必要
2022/04/08
社会を変えるイノベーションの発展を方向付ける複雑な一連の意思決定について調査するWIPOの世界知的財産報告書では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対する素早いグローバルな対応は、イノベーティブな活動が優先事項の変化に即応できることを示し、気候変動に早急に対処するためには同様の効果が必要であると述べています。
本報告書では、人間のイノベーションは必然ではあるが、その成果はそうではないとしています。イノベーションは、起業家、研究者、消費者、政策立案者による様々な行動の結果であり、COVID-19が急速に拡大したときと同様、社会のニーズは短期間で変化する可能性があります。
COVID-19のパンデミックに伴い、イノベーターはリモートワークという新たな現実や様々なサービスの需要低下、さらに、新たな医療製品の必要性に対応する取り組みにシフトしました。新たな医療製品には、抗ウイルス剤とmRNAワクチンがありますが、これらの迅速な開発には、政府やイノベーション・エコシステムの様々なプレーヤーからの資金提供や支援により、COVID-19に対応するために速やかに採用された新しいプラットフォームが役立ちました。
タン事務局長は、「この重要な報告書は、気候変動をはじめとする地球規模の共通課題に対し、人間の創意工夫を効率的かつ効果的に発揮させるため、私たちが何をすべきかを理解するのに役立ちます。」と述べました。また、政府は重要な役割を担っているとし、「例えば、政府はリソースを動員し、社会のニーズに対してより広い視野を提供し、適切なインセンティブを与え、人間の潜在能力を促進および活用するための環境を整えることで、イノベーションを奨励する唯一の立場にあるのです。」と述べました。
主な調査結果は以下のとおりです。
- 過去一世紀(イノベーションが相次いだ時代)にわたる特許出願率の調査が行われ、全体の成長率は25倍増、すなわち毎年訳3%ずつ増加していることが分かりました。この成長は数多くの技術によるものです。
- 運輸部門のイノベーションは、1925年までのわずか30年間で倍増しました。全特許の28%を占め、この間の年間成長率21%でした。
- 医療のイノベーションは、1960年までのわずか30年間で3倍以上増加しました。全特許の7%を占め、この間の年間成長率は5%でした。
- コンピューターおよびコンピューター関連イノベーション(ICTs)は、2000年までの35年間で3倍増加しました。全特許の24%を占め、この間の年間成長率は8%でした。
- デジタル化は新しい大きなイノベーション革命です。イノベーションを起こす人やイノベーションの種類とプロセスを変えることで、デジタル化は今、産業を大きく変えつつあります。
- デジタルイノベーションは、2020年までの20年間で4倍増加しました。この時の特許出願件数は全体の12%を占め、年間成長率は13%でした。
- 新たな技術を活用して、大規模な経済発展を実現することができます。東アジアでは、日本、韓国、中国がそれぞれ科学的能力、技術資本、熟練労働力を活用し、ITグローバル・バリュー・チェーンの中心かつ積極的な参加者として、世界経済に深く組み込まれています。
- 2020年までに、日本を拠点とするイノベーターが世界のICT関連特許の25%を保有し、次いで韓国が18%、中国が14%でした。
- 1973年の石油危機以降、低炭素化技術におけるグローバル・イノベーションは2012年より前までは年率6%で成長しましたが、それ以降、グリーン・イノベーションは停滞しています。