2022/07/14
ダレン・タンWIPO事務局長は、WIPO総会の冒頭で、各国の代表団に対し、知的財産(IP)を雇用、投資、ビジネスの成長、経済発展のための強力な起爆剤としていくよう、引き続き尽力をいただきたいと呼びかけました。
2022年7月14日~22日にわたって開催される第63回WIPO加盟国総会には、WIPOの193の加盟国から約900人の代表者が現地での直接出席をするために参加登録しました。2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが始まって以来、最大の登録者数となりました。
タン事務局長は代表団を歓迎し、「ウクライナへ侵攻、世界的なインフレ、食品・エネルギーのサプライチェーンの混乱。世界情勢は依然として極めて厳しい状況です。しかし、このような困難があっても、私たちは後ろを振り向いたり、グローバルな知財エコシステムの未来を構築する活動を止めたりすることはできません」と述べました。
「グローバルな知財コミュニティとして、私たちは知的財産を専門家だけが関心を持つ技術的なものから、世界中のイノベーターやクリエイターを支援する雇用、投資、開発のための強力な起爆剤としていくよう、引き続き全力で取り組まなければなりません。」
タン事務局長とともに、カーボベルデのジョゼ・ウリシュス・コレイア・エ・シルヴァ首相とコロンビアのイバン・ドゥケ大統領が、WIPO総会への代表団を歓迎しました。
参加した代表団は、知的財産やイノベーションに関連した活動の力強い成長、および知的財産のグローバル化の進展を背景に、WIPOの活動を検討します。
タン事務局長は演説の中で、イノベーティブな活動は今や従来のイノベーション大国を超えて広がり、国際出願の10件のうち7件はアフリカ、アジア、ラテンアメリカで行われている、と述べました。
イノベーションの国際化の更なる例として、ベンチャーキャピタルの投資は、過去12ヶ月間にアフリカとラテンアメリカで4倍以上に増加したことが挙げられました。
さらに、イノベーション活動への意欲を示す指標の一つである研究開発費は、COVID-19のパンデミックを通じて世界的に増加し続けており、研究開発費支出額が上位の企業は昨年、推定10%増の支出を行いました。
また、WIPOを通じて申請された特許、商標、意匠の国際出願件数は増加し続け、2021年に過去最高レベルに達したことにも言及しました。
「企業や経済が今回の危機を契機に、イノベーションや創造性を成長の原動力として、再考し、再構築することで、知財はこれまでよりも重要な位置づけへとシフトを続けています」とタン事務局長は述べています。
タン事務局長は、2020から2021年の2年間で、約2億4500万スイスフランの黒字を計上したWIPOの強固な財政状態にも言及しました。「こうした財政状態のおかげで、全体的な金融およびマクロ経済環境が不安定で困難な状況が続いても、これらの黒字分を能力、ツール、プロジェクトに投資し、皆様を強力にサポートし続けることができる状態にあります」と述べました。
7月19日(火)、知的財産を活用して国内外にプラスの影響をもたらしている優れた企業や個人を表彰するWIPOの新しいプログラム「WIPOグローバル・アワード」の第一回受賞企業5社が発表されます。
世界各国出身の著名な7名の審査員により、世界62か国から応募された272社の中から受賞企業が選定されました。2022年のWIPOグローバル・アワードは、世界経済のバックボーンである中小企業を対象としました。翌年以降は、若者や女性など、様々なカテゴリーを対象としていく予定です。
タン事務局長は演説の中で、2021年のWIPO総会で加盟国によって承認された、新しいWIPO中期戦略計画2022-2026の進展について代表団に概要を説明しました。
「それ以来、皆様が期待する結果とインパクトをもたらすべく、具体的な計画と行動に移すために私たちが重視していることは、純粋にひたむきな姿勢で取り組むことです」とタン事務局長は代表団に語りました。
タン事務局長は、4つの主要な分野で取り組みが進んでいると述べました。それは、「新たな方法で世界中のあらゆる人々に知財を啓蒙すること」、「グローバルな知財コミュニティをまとめ、アイデアを共有し、実行し、世界の課題を解決すること」、「サービス、データ、知識を提供して、企業経営者や政策決定者を支援すること」、「イノベーターとクリエーターが成長のために知財を活用できるようなインパクトのある具体的なプロジェクトを現場レベルで実施すること」です。
「どのような課題や困難があろうとも、グローバルな知財コミュニティは、私たちが支援するイノベーターやクリエーターの活力、エネルギー、楽観性を生かし、共に始めた変革への歩みを進めることができますし、そうすべきなのです」とタン事務局長は述べ、演説を締めくくりました。
今回の総会では、国連およびその他の在ジュネーブ国際機関の常任代表であるTatiana Molcean大使が議長を務めています。
世界知的所有権機関(WIPO)は、は知的財産政策、サービス、情報、協力のための世界的なフォーラムです。国連の専門機関であるWIPOは、193の加盟国が社会の進化するニーズに対応するために、バランスのとれた国際的な知的財産の法的枠組みを開発することを支援しています。そして、複数の国で知的財産権を取得し、紛争を解決するためのビジネスサービスを提供しています。また、発展途上国が知的財産権から利益を得られるよう、能力開発プログラムを提供するとともに、無料でIP情報へのアクセスを提供しています。
詳細については、WIPOのニュースおよびメディア部門にお問い合わせください。