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世界で活躍する女性からのメッセージ 1 ~日本科学未来館 館長 浅川 智恵子~

2023/04/20

日本科学未来館の館長であり、日本人女性として初のIBMフェローにご就任された浅川智恵子館長にインタビューを行いました。IBMでホームページ・リーダー(浅川智恵子氏により開発されたウェブページを音声で読み上げる世界初の実用的な音声ブラウザソフトウェア)の開発背景、多様性がもたらすイノベーションの役割についてお話しいただくとともに、リケジョをはじめとした若い女性へのメッセージをいただきました。

私たちは発明や創作を奨励していますが、日本では必ずしも「発明」が、その言葉とともに尊重されていない印象です。一方、浅川館長の多くの発表の中で「発明」の語が良く用いられています。

おっしゃる通り、私の講演の中で、「発明」・「研究」という言葉を意識的に用いるようにしております。アメリカでは、小学生でも「invention」や「research」という言葉を使いますが、日本では縁遠いものとして、あまりこうした言葉は使用されていないからです。発明や研究について、STEAM教育を通じて、広く知らせる必要があると考えております。

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左から、日本科学未来館 副館長 高木啓伸氏、館長 浅川智恵子氏、経営戦略室長 屠耿氏(日本科学未来館にて)

STEM教育の重要性、特に今年の国際女性デーのテーマは、「ジェンダー平等のためのイノベーションとテクノロジー」でした。世界における女性の発明者いわゆる「リケジョ」が少ない現状をどうお考えですか?

多様な視点を持った人々が集まることでイノベーションが生みださせることが知られています。そういったことからも日本では女性の発明者や理系に進む女性を増やす必要はあると感じています。私が現在も所属しているアメリカのカーネギーメロン大学(CMU: Carnegie Mellon University)では、情報科学科に入学する女子学生が少ない状況を打開すべく、リーダーシップなどの情報科学とは直接的に関係しないけれど研究活動を行うために重要な項目を、評価において重視するといった各種の施策を実施しました。その結果、男女比1:1となるまで、女子学生を増やすことに成功しました。

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Alexander Graham Bell の米国特許公報(米国特許174,465号,
1876年
)の表紙

“多様性がイノベーションを創出する”ことを伝えるにあたり、フランス・ヨハンソンの著書「アイデアは交差点から生まれる」の言葉を引用することが少なくありません。“イノベーションは多様な視点を合成することで生まれる。そのため、多様性のあるチームの方がより多くの新しいアイディアを生み出すことができる。”というものです。私自身もこうした体験をしてきました。ホームページ・リーダーをIBMで開発した当時、私の所属していた研究所の中には「ウェブページは視覚的な表現のために設計されており、耳で聞いて分かるものではない」という意見もありました。研究所には優秀な男性の研究員が多くいましたが、彼らには音声で聞くことの可能性が想像できなかったのです。しかし、目が見えないからこそ、ウェブページを耳で聞いて分かるものにしたいという視点を持ち、ウェブページを合成音声に変える方法を見つけ、ホームページリーダーの開発につなげることができました。このように多様な視点がイノベーションを創出するのだと思います。

また、私の場合、目が見えないということに加えて、女性であるという視点も持ち合わせています。女性ならではのユーザーインターフェイスに対する考え方もイノベーション創出に寄与したと考えています。

グラハム・ベルは母親や奥様が聴覚障害であり、自身が聴覚障害者の学校の先生をしていました。そうした経験から音声を電気信号に変換する研究をすすめ、電話機の発明に至りました。アクセシビリティをモチベーションにして生まれたイノベーションのよい例だと思います。

IBMでの音声ウェブブラウザの開発が、まず日本語で始まり、その後英語圏等に広がったとお聞きし、大いに驚き、日本人として感銘を受けたことを思い出します。一方、近年は日本発のイノベーションが少ない印象です。

イノベーションを起こしにくい環境であることが日本の課題と言えるかもしれません。その要因としては、2つ挙げられると思います。1つ目は、“多様性と多様な視点の価値”が浸透していないことです。もう1つは、技術の社会実装がしにくい環境であることです。米国では、発明の社会実装に際し、自己責任であることを契約に明記することでリスクを回避することができます。日本の場合、その契約があったとしても、責任を問う場合があります。

私は、2019年に既述の「IBMホームページ・リーダー」の発明の功績が認められ、全米発明家殿堂(NIHF)入りしましたが、これはアメリカにおいて、多様性の普及を促進していることも関係していると考えています。

日本のPCTの出願件数は、中国、アメリカに次いで3位ですが、移行国の平均は、2.6国と多くの国々に比べて少ないことを危惧しており、 日本では“多様性”に加え、グローバル化にも遅れがあるような印象です。

アメリカではハーバード大学、MIT、スタンフォード大学が有名ですが、活躍している人材は必ずしもそれらの大学出身者に限らず、色々な人たちがいます。さらに私が現在も所属しているCMUでは世界各国から多くの人材が集まってきており、多様な考え方から刺激を受ける機会がありました。ただ、インドや中国の学生が多く日本人の割合は少ないです。日本人は外国で学ぶ割合が少なく、グローバル人材が不足している結果、グローバルな特許取得やインパクトファクターの高い論文が少ないのかもしれません。

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環境保全やリサイクル性を考慮し、日本科学未来館の自動販売機の飲料はペットボトルを避け、全てアルミ缶飲料となっている

STEM分野での女性進出が求められる今日、リケジョ(理系女子)に向けてメッセージをお願いいたします。

現状、男性の多い理系の世界で、女性の比率が少ないことが気になることがあるかもしれません。しかし、イノベーション創出にあたり、「女性であること」を意識する必要はなく、むしろ「女性であること」は強みであるとポジティブに捉え、ご自身の道を進まれると良いと思います。自分の専攻している学問などにとらわれることなく、無限大にある可能性を信じてご自身の道を進まれてください。

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日本科学未来館 館長 浅川智恵子氏(左)、WIPO日本事務所 所長 澤井智毅(右)(日本科学未来館にて)