持続可能な開発目標（SDGs）達成に、知的財産が中心的な役割を果たす

ジュネーブ, 2023/05/30
PR/2023/902

WIPOとポルトガルの共催によるSDGs会議において、世界のイノベーション・エコシステムを支える知的財産（IP）ツールは、より良い持続可能な未来のための国連ロードマップである持続可能な開発目標（SDGs）の達成に重要な役割を果たすことが確認されました。

2023年5月29-30日の日程で、85以上の国から集まる数百の代表がリスボンに集まり、知的財産に関する会議が開催されました。本会議では、特許、商標、意匠、その他イノベーションや経済的および社会的発展を促進する知的財産が、17の全てのSDGs達成に向けた強力な存在になる点に注目しました。

WIPOのダレン・タン事務局長は歓迎の挨拶において、「知的財産は、私たちの共通のグローバル課題に対する解決策の一つであり、成長と発展のための強力な土台となり得るとともに、素晴らしいアイデアをSDGsの達成および誰一人取り残さない社会を目指す力に変換する、重要なツールであると信じています」と述べました。

「すでに、知的財産は、クリーンテックやグリーンテックなどの分野でリスクを冒して新しいアイデアを生み出す人たちを保護しています。また、生命を救う医薬品や画期的な技術を市場に送り出すための手段も提供しています。知的財産は、ライフサイエンス分野の研究成果が持つ影響力を高める助けになります。そして、画期的な発見を、それが最も必要とされる場所に届ける手段でもあります」とタンは述べ、来年の2024年4月26日の世界知的財産デーでは、SDGsに焦点を当てることを発表しました。

国連副事務総長で国連持続可能な開発グループ議長のアミーナ・J・モハメッドは、開会挨拶で「デザインや法律、商標や情報に至るまで、イノベーションと産業財産権は、すべてのSDGsで進展を加速させるために新しいアイデアとソリューション（解決策）を生み出す我々の共同の努力における重要な要素です」と述べました。

ポルトガル大統領Marcelo Rebelo de Sousaは、会議の最後をこう締めくくりました。「産業財産権は、持続可能な経済発展のための非常に重要なツールです。これがなければ消滅してしまうような経済活動を継続させることができます。また、創造性や発明の法的保護を強化し、学術界と企業との関係を強化することで、イノベーションの強い推進力を生み出します。」

「持続可能性のための重要な要素である産業財産権について、法的・組織的な面だけでなく、文化的な面でもパラダイムシフトが必要であり、それには司法の場が明確になることが含まれます。この点で、我々は3人の専門裁判官を擁する知的財産裁判所を設立し、産業財産権の保護に資する専門化と雰囲気作りを可能にしました」とポルトガル法務大臣のカタリナ・サルメント・エ・カストロは述べました。

アンドレ・モズ・カルダス国務大臣は、SDGsの実現における知的財産の重要な役割を強調し、SDGsの進展を促すイノベーションを支援する上で産業財産権がいかに重要な役割を果たすかを検討した最近の国内報告書を紹介しました。

欧州特許庁のアントニオ・カンピノス長官と欧州連合知的財産庁（EUIPO）のアンドレア・ディ・カルロ副長官は、効果的な知的財産エコシステムがEU経済に与える影響を定量化した欧州での研究を挙げ、成長や開発、雇用の土台としての知的財産の価値をさらに強化しました。

ポルトガル産業財産庁（INPI）が世界知的所有権機関（WIPO）や欧州特許庁（EPO）、欧州連合知的所有権機関（EUIPO）と共同で開催したこの会議は、「産業財産権、サステナビリティ、地球の未来について考える」というテーマで行われました。

知的財産機関やEUIPO、ポルトガル語圏共同体、政府関係者、民間企業代表、学術界など、国内外の機関から350名以上の参加者が集まり、現在のグローバルな課題に対する解決策としての知的財産とイノベーションの役割について議論しました。

また、男女平等とイノベーションと知財への女性の貢献、持続可能な未来のためのグリーンテクノロジーと再生可能エネルギー、伝統産業における適応とイノベーション、経済における自然・文化遺産の重要性、知的財産制度の推進における政府の役割、知的財産研究・報告書の経済的・社会的影響といったテーマでラウンドテーブル形式での会議も行われました。