2023/07/21
2023年6月5日、日本知的財産協会(JIPA)とWIPOによる共同ワークショップ「イノベーション主導の成長と知的財産の役割の未来を探る:日本の産業界の経験」が開催されました。
本ワークショップは、知的財産 (IP) がいかに世界的な生産性低下の傾向を変革することができるか、またイノベーションへの投資を具体的な効果に変換する方法について議論することを目的としたものです。
キヤノン株式会社、中外製薬株式会社、三菱化学株式会社、パナソニックホールディングス株式会社、ソニー知的財産サービス株式会社、株式会社東芝、トヨタ自動車株式会社などの、世界で最も革新的な企業の方に登壇いただき、最先端かつビジネスの最前線に近い視点から議論が行われました。
イベント冒頭、田中茂明 内閣府知的財産戦略推進事務局長より、オープンイノベーションの機会を社会的に最大化するための知財観の共有、オープンイノベーションの機会創出の媒介手段としての知財の役割の追求、そのための新たな知財ガバナンス文化を形成していくことへの期待が示されました。
また、桂正憲 日本国特許庁特許技監より、アフターコロナの新たな生活様式の定着、地球温暖化問題の解決に向けた脱炭素社会の実現といった世界規模の社会課題を乗り越えるため、これまで以上に強く、イノベーション創出が求められていることが強調されました。
下川原郁子 日本知的財産協会理事長より、AIやデータをはじめとする技術の発展は非常に速く、様々なイノベーションが社会に大きな変化をもたらしつつあり、知的財産はそれらを理解する共通言語となることが期待がされること、が述べられました。
Marco M. Alemán WIPO事務局長補(知的財産イノベーションエコシステム部門)より、迫り来るデジタル時代とディープ・サイエンスのイノベーションの2つの波について説明するとともに、大規模な投資を奨励し、イノベーション主体間の知識交換を飛躍的に向上することによって、知財がどのように貢献できるかについて、その見解を述べました。
主な発言:
その他のハイライト:
企業知財部門には、従来の役割に加えて、情報解析や事業企画、事業開発といった役割も求められてきています。
池田 敦氏 キヤノン株式会社
これからは、知財が共創の呼び水となって、そこから様々な共同の発明、そしてイノベーション創出につながることになります。私たちは、これを「関係性のデザイン」と呼んでいます。
若代 真吾氏 パナソニックホールディングス株式会社
デジタルをイノベーションに活かすためには、顧客ニーズの可視化、グローバル課題の可視化だけでなく、特に知財の役割として技術の可視化が重要です。それらに加え、顧客の生の声など、現場・対話というのも非常に重要になります。
矢藤 有希氏 ソニー知的財産サービス株式会社
ディープ・サイエンスが化学業界にもたらす変化には、2つの大きな側面があります。1つは、水・食糧・エネルギーなど人間の基盤になる部分に大きなテクノロジーを生み出すこと、もう1つは、実験や経験が必要であった世界からコンピュータが解を出してくれる世界になるという、業界のゲームチェンジです。
阿部 仁氏 三菱ケミカル株式会社
アカデミアに加え、スタートアップ、ハイテク企業との共創が一層広がっていきます。プレイヤーの増加に伴い知財活動やプラクティスが複雑化する中、企業知財もより柔軟に考え、行動することが求められています。
奥脇 智紀氏 中外製薬株式会社
ディープ・サイエンスと知財が絡み合う機会が増えています。より社会が発展していく、ディープ・サイエンスが発展していく中で、知財部門へ求められる期待が高まっています。
杉村 多恵氏 トヨタ自動車株式会社
オープンイノベーションやディープテックの発展に向け、知的財産の役割が拡大しています。こうした認識が広まることで、発明や創作の社会実装や知的財産権の利活用が進み、イノベーションの実現につながることが期待されています。
澤井 智毅 WIPO日本事務所
イノベーション促進に向けて、共創やマッチング、そして社会課題を解決するための知財の役割が議論されています。テクノロジーの急速な進化や社会課題の複雑化に迅速に対応するため、国内外の様々なステークホルダーとさらなる連携を進めていきます。
上野 剛史氏 日本知的財産協会
卓越したリーダーシップを発揮してくださった、東京大学の奥村洋一氏、そして示唆に富んだ結論をまとめてくれた上野剛史氏に感謝いたします。