世界知的財産指標報告書:2022年、世界全体の特許出願件数が過去最多を更新
ジュネーブ ,
2023/11/06
PR/2023/910
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2022年の世界全体の特許出願活動は、インドと中国のイノベーターに支えられて急増し、過去最多を記録しましたが、経済見通しの不透明感が、さらなる成長の重荷になっています。
Interactive charts: Barchart
WIPOの世界知的財産指標 (WIPI) 年次報告書によると、2022年、世界全体の商標と意匠の出願件数は減少しましたが、世界中のイノベーターが346万件の特許を出願し、特許出願件数は3年連続の増加となりました。
2022年に特許出願件数が多かった国は、中国、米国、日本、韓国、ドイツの順でした。中国のイノベーターが引き続き世界全体の特許出願のほぼ半数を占めていますが、中国の伸び率は2年連続で減少し、2021年の6.8%から2022年には3.1%となりました。一方、インドの居住者による特許出願は、2022年に31.6%増加し、出願件数上位10カ国のなかで他国に類を見ない伸びを11年連続で続けています。
報告書の公表にあたり、ダレン・タンWIPO事務局長は、地政学的に不安定な状況と不透明な経済見通しが世界の知的財産 (IP) エコシステムの重荷になる可能性があると警告しました。
知的財産 (IP) 出願は、世界中のイノベーション、創造性、起業家精神、デジタル化のレベル向上に牽引され、パンデミックにもかかわらず引き続き増加しています。発展途上国はますます知的財産の牽引役となりつつあり、国民のイノベーションと潜在的な創造力を活用し、大きな増加率を示しています。しかし、不安定な状況がグローバル・イノベーション・エコシステムを相変わらず圧迫しており、世界の多くの地域でベンチャーキャピタルへの資金提供が落ち込んでいます。投資家に対しては質の追求を促しますが、世界を良い方向に変えることができる優れたアイデアへの支援を犠牲にしてはなりません。
ダレン・タンWIPO事務局長
商標出願は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のパンデミックが仕事と生活のパターン変更を加速させ、新たな商品やサービスの市場導入を促した2020年と2021年に大幅に増加したことを受けて、2022年には、商標出願区分数で14.5%減少しました。同様に、意匠出願活動は、過去4年間にわたる成長を受けて、2.1%の減少を記録しました [1]。
出願人を国別に見ると、長期的な傾向として、知的財産出願活動の大部分はアジアで行われています。2022年の世界全体の特許、商標、意匠の出願活動は、アジアがそれぞれ67.9%、67.8%、70.3%を占めました。
知的財産権の出願 | 2021年 | 2022年 | 増加率 (%) 、2021~2022年 |
特許 | 3,400,500 | 3,457,400 | +1.7 |
商標* | 18,182,300 | 15,543,300 | –14.5 |
意匠* | 1,513,800 | 1,482,600 | –2.1 |
植物品種 | 25,200 | 27,260 | +8.2 |
注: * 国をまたがる比較を可能にするために、出願に含まれる特定の商標区分および意匠の数を表示しています。これは、各区分/意匠ごとに個別の出願を行う必要がある国もあれば、単一の出願に複数の区分/意匠を含めることを認める国もあるためです。
WIPIに含まれる情報は、世界の約150の知財庁から収集された最新データをWIPOの統計担当者が集計した結果であり、これにより、国内外の法域に出願を行う個々の国々に対して、国レベルの正確なデータを提供することができます。
特許
WIPIによると、中国とインドの居住者による特許出願が大幅な伸びを示しました。これらが、2022年の世界全体の出願件数増加の主な推進力となりました。
2022年には、中国居住の出願人が国内と海外の法域を対象に、約158万件の特許出願を提出しました。次いで、米国 (505,539件) 、日本 (405,361件) 、韓国 (272,315件) 、ドイツ (155,896件) の順となりました。
2022年には、2021年と比べて、それぞれ中国 (+3.1%) 、韓国 (+1.9%) 、米国 (+1.1%) で出願件数が増加しました。対照的に、ドイツ (-4.8%) と日本 (-1.6%) は2022年に出願件数が減少しています。
2022年には、上位20の出願国の過半数 (20カ国のうち13カ国) で、2021年よりも特許出願が増加しました。最も大きな増加を示したのがインドで、2022年の出願件数は31.6%増加しています。スイス (+6.1%) 、中国 (+3.1%) 、オーストリア (+2.5%) 、英国 (+2.5%) も出願件数の堅調な伸びを記録しています。
居住者による出願の大きな増加が、中国とインドにおける全体の伸びの主な推進力となりました。一方で、オーストリア、スイス、英国における全体の増加の背後には、海外での出願の大きな伸びがありました。
出願から公開までは遅延があるため、完全なデータが入手できる直近の年は2021年になりますが、2021年に世界全体で公開された特許出願において、最も高い頻度で登場した分野はコンピューター技術で、世界の全出願の11.1%を占めました。次いで、電気機械 (6.4%) 、計測 (5.8%) 、医療技術 (5.2%) 、デジタル通信 (4.9%) の順となりました。上位15の技術分野のうち、2011年から2021年までに2桁の伸びを示したのは、化学工学 (+11.4%) 、コンピューター技術 (+11%) 、IT経営手法 (+13.7%) でした。
商標
2022年に世界全体で、1,550万件の区分に及ぶ推定1,180万件の商標出願が行われました。2022年の出願において指定された区分数は14.5%減少し、2009年以降初めて、年間の出願区分数が減少を記録しました。それでも、パンデミックによる一時的な落ち込みにもかかわらず商標出願の長期的な傾向は活発と言えます。
中国に居住する出願人による商標出願活動[2]が最も多く、国内出願と外国出願の区分件数の合計は、約770万件に及びました。次いで、米国 (945,571件) 、トルコ (482,567件) 、ドイツ (479,334件) 、インド (467,918件) の出願人の順となりました。
2022年に世界全体で商標出願件数が減少した原因は、上位20の出願国のうち14カ国からの出願が減少し、10%を超える減少を示した国も多かったことです。国別の出願件数でトップであるにもかかわず、中国の居住者による出願は、国内外とも21%前後縮小しました。また、上位5つの出願国のうち、ドイツ (-14.2%) と米国 (-8.9%) からの出願も同様に、大きな減少を示しました。
上位20の出願国の大部分で出願が減少したのとは対照的に、6カ国では商標出願件数が増加しています。2022年に2桁の増加を記録した国が3カ国あり、ロシア連邦からの出願が11.8%、トルコからの出願が13.2%、インドネシアからの出願が16.3%の伸びを示しました。トルコの場合、国内出願と外国出願が同程度の割合で伸びを牽引しています。一方で、インドネシアとロシア連邦からの出願が大きく伸びたのは、もっぱら外国出願の大幅な減少を補って余りあるほど国内出願が大幅に増加したことによるものでした。トルコと同様に、ブラジル、インド、ベトナムの居住者による出願全体の増加も、国内出願と外国出願の両方の増加が原因でした。
アジアは世界全体の商標出願の67.8%と大部分を占めており、10年前の2012年の47.7%から大きく増加しました。この傾向により、他の5つの地理的地域が全体に占める割合は、同じ期間に減少しています。ヨーロッパは2022年に世界全体の16.2%を占め、次いで中南米カリブ海地域が6.8%、北米が5.9%を占めました。残りのシェアは、アフリカ (1.8%) とオセアニア (1.3%) が占めました。
2022年、出願人が最も多く海外で商標保護を求めた分類は研究・技術で、世界全体の非居住者による商標出願の22%を占めました。次いで保健 (13%) 、衣類・アクセサリー (11.9%) 、レジャー・教育 (10.9%) の各分類が続きました。次いでシェアが大きかった商標の分類はビジネスサービス (10.5%) 、農業 (9%) 、家庭用機器 (8%) でした。対照的に、外国出願の割合が小さい分類は、化学製品 (3.1%) 、建設 (5.5%) 、輸送 (6.2%) でした。
権利存続中の商標登録は、世界全体の152の知財庁で合わせて推定8,250万件あり、2021年から9.4%増加しました。2022年に権利存続中の商標登録件数が最も多かったのは再び中国で、合計約4,270万件でした。次いで、権利存続中の登録件数が310万件の米国、約290万件のインドの順でした。
意匠
2022年に世界全体で、推定110万件の意匠出願が行われました。この出願には約150万件の意匠が含まれ、2021年と比べると2.1%の減少に相当します。
中国に居住する出願人が841,164件の意匠を出願し、2022年の意匠件数では世界で最も積極的でした。次いで、トルコ (80,559件) 、ドイツ (70,346件) 、米国 (67,349件) 、韓国 (62,014件) の出願人の順となりました。これら上位5カ国の合計は、2022年における世界の活動の4分の3 (75.6%) を占めました。主に中国の出願人による出願の急増に牽引され、上位5つの出願国が占める割合は、過去10年間で4.6%増加しています。
上位20の出願国のうち、2022年に意匠の出願件数が増加したのは5カ国だけでした。最も急成長を遂げたのはトルコ (+31.4%) で、1年間で世界ランキングを3つ上げました。トルコに次いで、ブラジル (+11.3%) 、インド (+9.5%) 、イタリア (+7.1%) 、スイス (+3.6%) が続きます。上位20の出願国以外の低・中所得経済の出願国の中で、2022年の年間増加率が特に高かったのは、ブルガリア (+69%) 、モロッコ (+28.4%) 、インドネシア (+20.4%) でした。
2022年に世界全体で出願されたすべての意匠のうちで、アジアが占める割合は70.3%となりました。アジアに次いで、ヨーロッパ (22.4%) 、北米 (4.4%) の順となりました。アフリカ、中南米カリブ海地域 (LAC) およびオセアニアの2022年の合計シェアは2.9%で、10年前の3.4%から減少しています。同じ2012年から2022年までの期間に、意匠の出願件数が平均して大きく増加したのは、北米 (+5.5%) とアジア (+2.1%) の2地域でした。
2022年に権利存続中の意匠登録は、約580万件でした。これは前年 (2021年) 比で8.8%の増加となります。中国で権利存続中の意匠登録数は、9.7%増加して280万件となり、2022年の世界全体のほぼ半数 (49%) を占めるようになりました。中国に次いで、韓国 (406,009件) 、米国 (389,540件) 、欧州連合知的財産庁 (EUIPO) (296,912件) 、日本 (270,073件) の順となりました。
2022年に世界全体で大きな割合を占めた分類は、家具・家庭用品 (17.2%) 、衣料品・アクセサリー (15.6%) 、工具・機械 (12.4%) 、電気・照明 (9.1%) でした。これら4つの分類を合計すると、世界で登録された全区分の過半数 (54.3%) を占めました。
植物品種
2022年に世界全体で約27,260種の植物品種出願が行われ、前年 (2021年) 比で8.2%増となり、7年連続の増加を記録しました。2022年に最も出願が活発だったのは中国の出願人で、12,357件の植物品種出願を行っています。これは世界全体の45.3%に当たります。中国の出願人に次いで、オランダ (2,874件) 、さらに米国 (2,120件) 、英国 (1,657件) 、フランス (1,167件) の各国出願人が続きます。
上位5つの出願国のうち、中国 (+16.9%) 、英国 (+377.5%) 、フランス (+9.9%) では、2021年から2022年にかけて出願が大幅に増加しました。一方、オランダ (-10.6%) と米国 (-23.6%) における同期間中の出願件数は大幅に減少しました。
地理的表示
91の国内・広域機関からのデータによると、2022年現在、保護された地理的表示 (GI) は推定58,400件あります。GIは、チーズのグリュイエールまたは蒸留酒のテキーラのように、特定の原産地があり、その原産地に起因する品質または評価を持つ産品に使われる表示です。
2022年は、中国 (9,571件) が最も多くの有効GIを持ち、次いでハンガリー (7,843件) 、ドイツ (7,386件) 、チェコ共和国 (6,383件) の順となりました。EU諸国が上位にランクインしているのは、EUの広域制度下で登録されている5,176件のGIが全ての加盟国において効力を有することで説明されます。
ワインおよび蒸留酒 (50.7%) に関連する有効GIが2022年の世界全体の半数を占め、農産物および食品が全体の43.1%、手工芸品が4.2%を占めました。
WIPOについて
世界知的所有権機関 (WIPO) は、世界中のイノベーターやクリエイターにサービスを提供し、アイデアの確実な市場投入を通じてあらゆる場所における生活の向上実現を支援する国連機関です。
WIPOは、知的財産 (IP) の国境を越えた保護と展開を目指すクリエイターやイノベーターまた起業家たちを支援するサービスを提供し、また知的財産に関する最先端の課題解決に取り組むためのフォーラムとして機能します。WIPOが発表する知的財産データと情報は世界中の意思決定者により参照されます。またそのインパクト重視のプロジェクトや技術支援を通じて、あらゆる場所のすべての人が知的財産の利益を受けられるように支援します。
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