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WIPO Arbitration and Mediation Center

紛争処理パネル裁定

株式会社ファーストリテイリング 対 Whois Privacy Protection Service by onamae.com / Akihiro Sakurada, Sakurada Akihiro

事件番号 D2021-2888

1. 紛争当事者

申立人は、株式会社ファーストリテイリングであり、その住所地は日本国である。申立人の代理人は、網野国際商標特許事務所であり、その住所地は日本国である。

被申立人は、Whois Privacy Protection Service by onamae.com / Akihiro Sakurada, Sakurada Akihiro (櫻田昭博)であり、その住所地は日本国である。

2. ドメイン名および登録機関

紛争の対象であるドメイン名:<uniqlopay.com>

本件ドメイン名の登録機関:GMO Internet, Inc. d/b/a Discount-Domain.com and Onamae.com

3. 手続の経過

本件申立書は、2021年8月31日にWIPO仲裁調停センター(以下「センター」)へ提出された。センターは2021年9月2日にメールにより本件ドメイン名の登録確認を登録機関GMO Internet, Inc. d/b/a Discount‑Domain.com and Onamae.com(以下「登録機関」)に要請した。2021年9月3日に登録機関はメールによりセンターへ登録確認の返答をし、申立書に記載された被申立人および連絡先細目と異なる情報を当該ドメイン名の登録者として公開した。センターは申立人へ2021年9月18日に登録機関により公開されたドメイン名登録者および連絡先細目を通知した。それに伴い、申立人は申立書を補正することができると案内された。申立人は申立書の補正書を2021年9月23日にセンターへ提出した。

センターは申立書および補正書が統一ドメイン名紛争処理方針(以下「処理方針」)、統一ドメイン名紛争処理方針手続規則(以下、「手続規則」)およびWIPO統一ドメイン名紛争処理方針補則 (以下,「補則」)における方式要件を充足していることを確認した。

手続規則第2条および第4条に従い、センターは本件申立を被申立人に通知し、2021年9月24日に紛争処理手続が開始された。手続規則第5条に従い、答弁書の提出期限は2021年10月14日であった。センターは、2021年10月12日に答弁書を受領した。

センターは、加藤照雄(Teruo Kato)を単独のパネリストとして本件について2021年10月28日に指名した。紛争処理パネルは、同パネルが正当に構成されたことを確認した。手続規則第7条の要請に従い、紛争処理パネルはセンターへ承諾書および公平と独立に関する宣言を提出した。

紛争処理パネルは2021年12月26日に被申立人に申立書の付録の受領の確認を求める手続き命令第1号を発出し、未受領の場合にはその受領を要求することを得る旨通知したが、被申立人からの回答は受領されなかった。

4. 背景となる事実

申立人によると、申立人は日本国内に本社を置く株式会社ユニクロや株式会社ジーユーなどの衣料品会社を傘下にもつ持株会社で、遅くとも1988 年から「UNIQLO(ユニクロ)」ブランドを展開して衣料品の製造及び販売を行っており、2021年5 月末時点においては、国内では45 の都道府県に810 店舗を展開し、日本全国において相当のシェアを有している。

申立人は1997年1月31日付登録の「UNIQLO」との商標登録第3250518号にかかる日本国商標権、また2021年2月19日付登録の標準文字からなる「UNIQLO PAY」との文字商標登録第6354218号にかかる日本国商標権を保有する。

争いの対象であるドメイン名は<uniqlopay.com>であり、登録機関によるとこれは2019年7月20日に作成され、Whois Privacy Protection Service by onamae.com がその登録者として記載されていたところ、2021年9月3日に登録機関は被申立人がその実体的登録者であることを確認した。

5. 当事者の主張

A. 申立人

申立人は、本件ドメイン名は申立人が有する商標および役務商標に同一または混同させるような類似性を有し、また、被申立人は本件ドメイン名について権利または正当な利益を有さず、更に、本件ドメイン名は不正の目的で登録かつ使用されていると主張し、本件ドメイン名の申立人への移転を求めている。

B. 被申立人

被申立人は、申立人保有の商標との同一性については認めるものの、本件ドメイン名には「関係性」がなく申立人は本件ドメイン名を放棄していたとし、また本件ドメイン名は非稼働で、利益を目的としたシステムやユーザーを誘導しようと意図的に企てるためのシステムは存在しないとする。

6. 審理および事実認定

6.1 手続き面について

本件紛争処理は処理方針、手続規則、補則の枠組みにての本件ドメイン名の登録の帰趨についての決定をその目的とするものであり、不正競争防止法違反、商標権侵害等の法令上の問題を取り扱うものではない。またその登録の帰趨の決定のための事実認定に際しての立証水準は“balance of probabilities”であり、主張される事実が真である確率と偽である確率を比較し、前者が後者を上回ると紛争処理パネルが判断すればその立証がなされたこととなる。(WIPO Overview of WIPO Panel Views on Selected URRP Questions, Third edition(以下「WIPO Overview 3.0」)第4.2パラグラフ)

6.2 実体面について

A. 同一または混同を引き起こすほどに類似しているかどうか

紛争処理パネルは、まず(a)申立人が登録商標を保有しているか、そして(b)紛争の対象であるドメイン名がその登録商標と同一または混同を引き起こすほどに類似しているかについて判定しなければならない。

1、UNIQLO商標について

まず上記(a)について、申立人は1997年1月31日付登録の「UNIQLO」との商標登録第3250518号にかかる日本国商標権を保有し、当該商標権にかかる商品および役務の区分並びに指定商品または指定役務は第16類とされことを示す証拠を提出し、当職は申立人がかかるUNIQLO商標の保有者であることを認定した。

続いて上記(b)について、当職は本件ドメイン名と上記の申立人が保有するUNIQLO商標の比較を行った。

これに関して、WIPO Overview 3.0第1.11.1パラグラフは、ドメイン名の中に含まれる(“.com”, “.club”, “.nyc”のような)トップレベルドメイン(TLD)は登録に際して標準的に求められるものであり、第一のテスト(同一性・混同性)の目的上考慮されないとしており、本件においてもこの確立された標準を不適用とすべき格別の理由はなく、よって 通常通り TLDは考慮外とする。

続いて、TLD以外の紛争対象ドメイン名を見るに、これは申立人が保有するUNIQLO商標の後に、支払いを意味する平易な英単語である「pay」が加わっているものである。

このようにドメイン名の中に申立人保有の登録商標全体が含まれている場合において、他の語が追加されていた場合でもその類似性の認定を妨げないことはUDRPのパネリストの間で確立されている。(WIPO Overview 3.0 第 1.7パラグラフ、第1.8パラグラフ、Salvatore Ferragamo S.p.A v. Ying ChouWIPO Case No. D2013-2034Salvatore Ferragamo S.p.A. v. Haonan HongWIPO Case No. D2013-2040Salvatore Ferragamo S.p.A. v. Brian E. NielsenWIPO Case No. D2014-1123;及び Salvatore Ferragamo S.p.A. v. Wei HuanWIPO Case No. D2014-1290。)

以上に鑑み、当職は、本件ドメイン名は申立人が保有する登録商標と混同を引き起こすほど類似していると認定した。

2、UNIQLO PAY商標について

まず上記(a)については、申立人は 2021年2月19日付登録の標準文字からなる「UNIQLO PAY」との文字商標登録第6354218号にかかる日本国商標権を保有し、当該商標権にかかる商品および役務の区分並びに指定商品または指定役務が第09類、第36類及び第42類であることを示す証拠を提出し、当職は申立人がかかるUNIQLO PAY商標の保有者であることを認定した。

続いて上記(b)について、当職は本件ドメイン名と上記の申立人が保有するUNIQLO PAY商標の比較を行った。(上記と同様に通常通りTLDは考慮外とした。)

本件ドメイン名には、申立人が保有するUNIQLO PAY商標には含まれる「UNIQLO」と「PAY」の間のスペースが本件ドメイン名に含まれていないものの、この点を除けば両者は同一である。また、押しなべてドメイン名の登録に際しスペース (「 」)の利用は許されていないものである。

また、被申立人は、答弁書にて「ドメイン名は、申立て人が有する商標および役務商標(サービスマーク)に同一または混同させるような類似性を有しているか否か」と題する箇所において、「<uniqlopay>は申立人が権利を持つと主張する商標ないし役務商標(サービスマーク)と同一ではあるが、2020 年11 月25 日に関連性が無いと被申立人に対して回答している。」と述べており、本件ドメイン名が申立人保有のUNIQLO PAY商標と同一と自ら認めている。(被申立人の言う「関連性」については後述する。)

以上に鑑み、当職は、本件ドメイン名は申立人が保有するUNIQLO PAY登録商標と実体的に同一と認定する。

よって、当職は、申立人保有のいずれの登録商標についても、処理方針第4条(a)(i)所定の第一要件が充足されると認定する。

B. 権利または正当な利益を有しているかどうか

処理方針第4条(c)は、以下の状況のいずれかが認められる場合には、被申立人がそのドメイン名についての権利または正当な利益を有していることが⽴証されたものとする旨の定めがある。即ち、

(i) 被申立人が、この紛争についての通知を受ける前に、善意による商品またはサービスの提供を⾏なうために、そのドメイン名またはこれに対応する名称を使⽤していたとき、またはその使⽤準備をしていたことを⽴証可能なとき、

(ii) 被申立人(個⼈、会社または団体として)が、その商標権を保有していなくても、そのドメイン名の名称で⼀般に知られていたとき、

(iii) 被申立人によるそのドメイン名の使⽤が、消費者の誤認に乗じて商業的利益を得るためにあるいは問題とされている商標を汚し貶めるような意図で使⽤されているのではなく、正当な⾮商業的使⽤または公正な使⽤ (fair use)であるとき。

これに係るUDRPのパネルのコンセンサスは、ドメイン名についての権利または正当な利益を被申立人が持っていないことを疎明する (making out a prima facie case)義務は申立人の側にあり、そしてこの疎明がなされたならば、反証の義務が被申立人に移るとされる。(WIPO Overview 3.0第2.1パラグラフ)

本件において、申立人は、上記(i)については、「被申立人が本件について通知を受ける前に、善意による商品または役務(サービス)の提供を行うために、本ドメイン名もしくはこれに対応する名称を使用していたという証拠は存在せず、また、使用のための明白な準備をしていたという証拠も存在しません」と主張し、さらに「申立人のブランドである「UNIQLO」の国内外における知名度は極めて高く、加えて、申立人による「UNIQLO PAY」の日本における商標登録出願が2019 年7 月1 日、同出願公開が2019 年7 月16日であるのに対し、被申立人による「uniqiopay corn」の登録が公開からわずか4 日後の2019 年7 月20 日にされていることから、被申立人は申立人よってなされた商標登録出願の公開商標公報を閲覧して、本ドメイン名を登録したと推察でき」ると主張する。

上記(ii) については、申立人は、被申立人が、本ドメイン名の名称で一般に知られていたという特段の事情はないと主張する。

上記(iii) については、申立人は、「被申立人による本ドメイン名の使用は、消費者の誤認に乗じて商業的利益を得るために、あるいは申立人の商標の価値を段損する意図でもって使用されており、正当な非商業的使用または公正な使用とはいえ」ないと主張し、本ドメイン名にアクセスをするとクリック課金型のパーキングサイト若しくはマルウェア系サイトがランダムで表示されることを示す証拠を提出し、「本ドメイン名によりクリック課金型のパーキングサイトやマルウェア系サイトを表示させることは、 「正当な非商業的使用」または「公正な使用」ということはでき」ないと主張する。

当職は、申立人のかかる主張と提出資料を検討し、それらが上記の申立人による疎明に求められる立証水準を満たしていると判定する。

他方、被申立人の答弁書には上記の(i)から(iii)についての反証はなされておらず、よって当職は申立人主張を採用することとなる。

この点について、前述の「関係性」に関連し、被申立人は、「当該ドメイン名に関して、2020 年11 月16 日に英文の警告メールが届いた。(中略)2020 年11 月25 日に差出人及び意図を確かめるために申立人に対して問い合わせを行った。その結果、申立人のアドレスではないとの回答があり、詐欺的メールの疑いと判明した。また同時に、ドメイン名および保有に関しても申立人とは一切関連性が無いとの回答を得た。従って、2020 年11 月25 日時点において申立人が主張する権利根拠に関して当該ドメインが商標権者または役務商標(サービスマーク)を侵害する様な、ドメイン名に該当するとの認識が無く、申立人は当該ドメインとの関連性がないと考えていた。よって被申立人は当該ドメイン保有には何ら問題ないと考える」と主張する。

上記の被申立人主張について、被申立人提出資料を見るに、上記の「問い合わせ」は申立人が提供する「ユニクロお客様窓口」・「お問い合わせ・お客様の声の活用」(https://faq.uniqlo.com/)の中にある「よくあるお問い合わせ」、「チャットで問い合わせ」、「IQ(自動化一等)がよくあるお問い合わせに自動回答します。自動回答できないご質問はチャット専門のオペレーターが引き継ぎお答えします。」とされるチャットサービスによる被申立人とオペレーターとのやりとりである。

そしてそこでは、被申立人から「ドメインの警告が発信されているので、本当に貴社なのか?知りたいと思います」とのメッセージに対して、オペレーターから、「お客様よりお知らせ頂いたアドレスとドメインについてですが、弊社と全く関係のないものとなっております」との返信がなされ、そのオペレーターから、「この度頂いた内容について担当部署へ申し伝えさせていただきたく存じますので、お伺いしたいことがございます」、「上記メールアドレスより警告が出ているとのことでございますが、どのような状況で出ているのでしょうか?」との問いかけが被申立人に対してなされているが、これに対する被申立人の回答は被申立人提出資料には見受けられない。

上記のやりとりを見るに、被申立人が答弁書にて言及する「関係性」とは、被申立人が2020 年11 月16 日に受領した英文警告メールと申立人の間の関係性を指しているものと推測される。もしそうであれば、申立人による本件申立はその英文警告メールに依拠するものではなく、申立人の一般的なチャットサービスで「弊社と全く関係のない」という回答を得たことでもって、上記の申立人による疎明に対する反証は不要ということにはならない。

また、被申立人は、答弁書において、「被申立人は、当該商標または役務商標(サービスマーク)に関する権利は取得していないが、申立人により当該ドメイン名は関連性が無く放置されていたものと考える。日本経済新聞報道によると他社に商標を先取されないためとして決済サービスとして使うかは出願時点で決まっていなかった。(中略)また、当該ドメイン名は取得されていない事からも関連性は無いと考えられる」、「当該ドメイン名は申立人が事業や関連性が無いと認識しており放棄されていたものと考えられる」と主張し、そこに権利は取得していない旨を記載している。

答弁書にはこの「関係性」が何を意味するのか述べられていないところ、前後の文脈から、申立人にとっての本件ドメイン名の「重要性」という趣旨(くだけた表現を用いれば、申立人にとって本件ドメイン名はどうでもよかったという趣旨)で被申立人が「関係性」という表現を使用したものと解釈する余地があろう。もしそうであれば、申立人が本件ドメイン名について抱いていた主観的価値観の如何は、本件審議における本項目に関する立証・反証に関連しないと思量する。

以上のことから、当職は、被申立人は権利または正当な利益を有せず、第二の要件が充足されると認定する。

C. ドメイン名が悪意で登録かつ使用されていること

第三の要件を充足するためには、申立人は紛争対象ドメイン名が悪意で登録され、悪意で使用されていることを立証しなければならない。この目的のために、処理方針第4条(b)は悪意の登録かつ使用とされる場合の非限定の例を複数掲げており、その中に以下が含まれる。

「(iv) そのドメイン名の使⽤により、あなたが商業的利益を得る⽬的のために、そのウェブサイトもしくはオンラインロケーションの、またはそれらに登場する製品・サービスの、出所(ソース)・スポンサーシップ・取引提携関係・推奨について、申⽴⼈の標章との混同の虞れを⽣じさせることにより、インターネットのユーザーを、そのウェブサイトまたはその他のオンラインロケーションに意図的に引き寄せるために、使⽤しているとき。」

この点について、申立人は、本ドメイン名にアクセスして表示されるコンテンツは、クリック課金型のパーキングサイトとマルウェア系サイトの二種類がアクセスする際にランダムで切り替わるように設定されており、被申立人は日本在住であることから、日本国内において著名である「UNIQLO(ユニクロ)」ブランドを知らなかったはずはなく、公開商標公報の発行が 2019 年7 月16 日であるのに対し、本件ドメイン名がそのわずか4 日後の2019 年7月20 日に登録されていることから、よって被申立人は本ドメイン名が登録されていないことを奇貨として「UNIQLO (ユニクロ)」ブランドの著名性及び申立人の提供するサービスの信用を利用するために、これらに類似する本ドメイン名を取得・利用したと考えるのが自然である、と主張する。
これに対し被申立人は、(他の主張と共に)①被申立人は申立人あるいはその競業者に当該ドメイン名の売却、貸与、移転の打診をしたことがない、②被申立人は個人であり、申立人とは競業者ではない、③当該ドメイン名は申立人が事業や関連性が無いと認識しており放棄されていたものと考えられる、④当該ドメイン名は登録及び継続更新のみで非稼働であり、被申立人は当該ドメイン名でのサービスは予定していない、⑤利益を目的としたウェブサイトやシステムは存在しない、⑥申立人の標章との混同のおそれを生じさせたりユーザーを誘導しようと意図的に企てるためのシステムも存在しない、と主張する。

かかる双方の主張を踏まえ当職の見解を以下に述べる。

まず悪意の登録については、申立人が保有する UNIQLO PAY登録商標は、2021年2月19日付で登録されたものの、それに先立つ2019 年7 月16 日にその公開商標広報が発行され、その4日後の2019 年7月20 日に被申立人が当該ドメイン名を取得したことが認定され、被申立人が本件ドメイン名を入手した際に被申立人は申立人によるUNIQLO PAY登録商標の出願の存在を認識していたことが容易に推認される。

この点、一般的に、被申立人のドメイン名の取得が申立人の登録商標の登録以前である場合でも、限定的に悪意の登録となり得ることは、UDRPのパネリストの間で確立されており、そしてそのようなケースとして挙げられたものの中には、申立人の登録商標の申請に追随した場合 (following the complainant’s filing of a trademark application) が含まれている。(WIPO Overview 3.0第3.8.2 (iv)パラグラフ)。当職は、本件がその類型に該当すると認定する。

さらに被申立人は本件ドメイン名の中に「UNIQLO」が含まれていたからこそ取得したのであり、被申立人が直接的あるいは間接的にUNIQLO登録商標のフリーライドを期待していたことが強く推認される。

この点、被申立人は当該ドメイン名の売却、貸与、移転の打診を申立人にもその競業者にもしていないことを挙げるが(上記①)、かかる売却、貸与、移転の打診は紛争処理パネル裁定における悪意の登録・利用の判定のための必要条件ではなく、それらがなかったことでもって認定がなされないということにはならない。

また、被申立人は、被申立人が個人であり、申立人とは競業者ではないとするが(上記②)、紛争処理パネル裁定において、被申立人が個人であるか法人・団体等であるかの被申立人の属性は問題とならず、また、申立人と被申立人が競業関係にあることは、悪意の登録の判定のための必要条件ではない。更に、既述の通り、本件では被申立人が直接的あるいは間接的にUNIQLO登録商標のフリーライドを期待していたことが強く推認されるのであり、申立人の事業に影響を与える可能性という意味合いで両者の関係を「競業」と見ることも可能である。よって被申立人の主張を反論として採用することはできない。

また、被申立人は本件ドメイン名が申立人により「放棄されていた」と主張するが(上記③)、申立人が本件ドメイン名をUNIQLO PAY登録商標出願後に即座に取得しなかったことだけでもって、これを権利放棄と認めることはできず、更に、被申立人が本件ドメイン名を取得した際に、被申立人が申立人から本件ドメイン名に関連する権利を譲り受けていたことを示す事実もない。

以上に鑑み、当職は、被申立人の悪意の登録を認定する。

続いて悪意の使用については、その「使用されている」の原文は“is being used”といわゆる現在進行形で記載されており、よってその対象期間は2021年9月23日の申立人による申立書提出日から一定期間遡るものと解する。この点、被申立人は2021年10月12日付の答弁書において、当該ドメイン名は登録及び継続更新のみで非稼働であり、被申立人は当該ドメイン名でのサービスは予定していなく、利益を目的としたウェブサイトやシステムは存在せず、と主張する。(上記④⑤⑥)

本件ドメイン名の利用状況について、申立人は本件申立に先立つ2021年8月31日付の補正前の申立書に当該サイトの一部スクリーンショット画像を添付しており、これを見るに、当該サイトはその時点で稼働していたことが明らかである。また、その画面の形態・デザインは、本裁定書の準備の過程で当職が職権でもって検証したものと概ね一致しており、よって被申立人の非稼働等の主張は事実と相違すると言わざるを得ない。

特に、当職が2021年10月28日と2021年10月29日に記録した画面によると、その両日付において画面中央にジャンプ先の選択肢として「メンズ通販」、「ケーズデンキ店舗」、「レディース抜け毛」、「GU店舗」、「通販」、「イトーヨーカドー通販」が挙げられ、その中の「GU店舗」をクリックすると別画面となり、そこには「ウェブサイトにアクセス」の大きなアイコンが表示され、それらは「ジョヴィ」、「AMOMA店舗検索」等の外部検索サイトに連携している。

この「GU」が申立人の完全子会社である株式会社ジーユーが展開するブランド・店舗であることは日本では周知であり、被申立人が、本件ドメイン名を使ったウェブページにおいて申立人の子会社である「GU店舗」との名称を利用してインターネットユーザーを外部の検索サイトに誘導していることが認められる。このことは、申立人の標章との混同のおそれを生じさせたりユーザーを誘導しようと意図的に企てるためのシステムも存在しない、との被申立人の主張(上記⑥)と相容れない。

以上に鑑み、当職は、被申立人の悪意の使用を認定し、よって第三の要件が満たされる。

7. 裁定

以上の理由により、処理方針第4条(i)項および手続規則第15条に従い、紛争処理パネルは当該ドメイン名<uniqlopay.com>を申立人へ移転することを命じる。

加藤照雄(Teruo Kato)
パネリスト
日付:2021年12月2日