グラナ・パダーノの環境に対するコミットメント
グラナ・パダーノは世界で最も有名な地理的表示の一つです。イタリア北部にあるポー川の渓谷(ピアヌラ・パダーナ)を原産とする硬くて砕けやすいこのチーズは、自然なクリーミングプロセスによる低温殺菌されていない半脱脂の牛乳から作られています。グラナ・パダーノの起源は、12世紀のキアラバレ修道院の修道士が余った牛乳を保存する方法を考案したことに遡ります。
1954年、グラナ・パダーノの酪農生産者は、製品を保護、奨励、増進し、グラナ・パダーノチーズの製造方法を向上するための科学的研究および市場調査を推進するグラナ・パダーノPDOチーズ保護協会(Grana Padano PDO Cheese Protection Consortium、以下協会)を創立しました。翌年、グラナ・パダーノは大統領命令により原産地名称(地理的表示のサブカテゴリ)としてイタリアで正式に認定されました。1996年、グラナ・パダーノは欧州連合にて原産地名称保護(Protected Designation of Origin、PDO)のステータスを獲得しました。
その任務を実行する中で、協会はすぐに地球温暖化および環境を保護する必要性に気づきました。
世界人口は2050年までに約98億人に増加するとされており、世界の人口が増加するにつれ、食料に対する需要も高まります。効果的な措置がなければ、特に、反すう動物の腸内発酵が総排出量の40パーセントを生成する農業生産および乳業による温室効果ガスの排出量も増加します。これらの理由により、2017年、グラナ・パダーノ協会はLIFEプロジェクト、「タフ・ゲット・ゴーイング(“タフ”はプロジェクトの対象となるハードチーズ、セミハードチーズを意味する)」の発足を決定しました。
欧州委員会から一部資金提供を受けているこのプロジェクトは、コンテチーズの生産者、複数の大学、新興企業、非政府組織とのコラボレーションにより設立されました。その目的は、持続可能性のために、PDOの対象となる牛乳で作られたハードチーズおよびセミハードチーズのヨーロッパにおける生産の環境的パフォーマンスおよび効率性を改善することです。
このプロジェクトでは、環境に関する生産者の決定をサポートするために、「環境に関する決定をサポートするソフトウェア(Environmental Decision Support Software 、EDSS)」と呼ばれるソフトウェアツールが開発されました。生産者は、EDSSにより、彼らの製品の環境フットプリント(製品環境フットプリント)を評価し、それを改善する技術や解決策を取り入れることができるようになりました。それが完了すると、EDSSは生産者に実証済みの方法論を備えた信頼性の高いツールを提供します。また、他のEU PDO協会と共有し、同様に環境イノベーションおよび高い品質生産の基準となることを奨励しています。
「タフ・ゲット・ゴーイング」プロジェクトでは、農家、乳業、包装メーカーから、家畜糞尿の管理方法、乳製品工場を効率的に改善する方法、食品廃棄物および生ゴミの削減方法など重要な質問に対する回答の作成を目的として使用するための有用なデータを収集しています。このデータ収集の実践により、グラナ・パダーノおよびコンテは持続可能性のためのベンチマークを開発し、生産チェーンをより効率的にする革新的な解決策を考案することができるようになります。
プロジェクトの目的は、硬くて砕けやすいチーズの生産に関わる当事者の環境的パフォーマンスおよび経済的成果を改善し、生産者および消費者の環境に対する認識を高めながら、回収したノウハウを他のヨーロッパのPDOおよびPGI(保護された地理的表示)に移行することです。
グラナ・パダーノの事例は、生産チェーンの全当事者をつなぐ特別なスレッドを通じて、持続可能性に関する政策を採用する際に、地理的表示がいかに原産となるエリア、地域、国の環境に大きな影響を与えることができるのかを示す完璧な実例です。