2017年、WIPOに提訴されたサイバースクワッティングの紛争解決申立件数が 過去最高記録を更新
ジュネーブ,
2018/03/14
PR/2018/815
統一ドメイン名紛争処理方針(UDRP)に基づく手続に従い、3,074件という過去最高記録の件数の訴訟が商標名義人により提訴されました。銀行金融業界、ファッション業界、IT業界は告訴活動が最も多かった上位3つの業界で、2017年にWIPO仲裁調停センターが取り扱った全サイバースクワッティング紛争解決申立件数の約1/3を占めました。 (付属書1及び4)
新一般トップレベル・ドメイン(新gTLD)と関連したサイバースクワッティング訴訟は、2017年にWIPOに提訴された訴訟の12%強を占め、全部で6,370のドメイン名が対象になりました。WIPOに提訴された新gTLD事件のうち、最も多かったのが.STORE、.SITE、.ONLINEドメインの登録に関するものでした。(付属書2)2027年には、.EU(欧州連合).SE(スウェーデン)が加わり、76の国別コード・トップレベル・ドメイン(ccTLD)の登録簿がWIPO紛争処理サービスの利用を指定しており、2017年にWIPOに提訴された事件のうち、ccTLDが提訴全体の約17%を占めました。
WIPOのフランシス・ガリ事務局長は、「ドメイン名制度での商標濫用を行なうサイバースクワッティングは、正当な商取引を損ない、消費者に害を与えています。特に、サイバースクワッターがドメイン名を使って偽造品を販売しようとしたり、フィッシングを行なおうとしたりする場合には、それが顕著です。WIPOに提訴される事件でも、このようなケースが数多く見られます。極めて有効なUDRP手続が利用できることは、電子商取引の信頼性と詐欺行為からの保護をサポートするために欠かせません。」と話しています。
2017年にUDRPに基づき提訴された手続の国別申立人では、米国が920件と最も多く、次いでフランス(462件)、英国(276件)、ドイツ(222件)、そしてスイス(143件)となっています。(付属書3)。2017年、全体で112カ国の申立人が訴訟を起こしました。2017年、WIPOは45カ国から298名のパネリストを指名し、15の異なる言語で手続が行われました。
提訴が最も多かったのは銀行金融業界(全体の12%)で、ファッション業界(同11%)、インターネット・IT業界(同9%)、重工業・機械業界(同8%)と続き、食品・飲料・レストラン業界、バイオテクノロジー業界、医薬品業界、エレクトロニクス業界、エンターテインメント業界、小売業界はそれぞれ6%を占めました。(付属書4)
2017年に紛争解決が申し立てられ、裁定した銀行金融業界関連事件の約1/3で、申立人は不正行為、フィッシング、詐欺が行われたと主張し、これは全業界で最も高い割合となりました。(付属書5)2017年に紛争解決が申し立てられ、裁定したファッション業界関連事件の約1/3で、申立人は偽造が行われたと主張し、これは全業界で2番目に高い割合となりました。(付属書6)
申立件数が最も多かったのはPhilip Morris(91件)で、以降、Michelin、AB Electrolux、Andrey Ternovskiy (Chatroulette)、Sanofi、Zions Bank、Carrefour、Virgin、Accor、BASF、LEGOと続きました。(付属書)
WIPOは2017年にWIPO Jurisprudential Overview最新版を発行しました。WIPOに提訴される事件の基本紛争解決申立を促進するこのツールは、100を超えるトピックを取り扱い、WIPO UDRP法体系とドメイン名制度の発展について詳述しています。
WIPO仲裁調停センターが1999年に初のUDRP適用事件を受理してから、2017年までに、7万3千個以上のドメイン名を対象とした、合計で3万9千件を超える申立を取り扱ってきました。(付属書1)
知的財産権にかかる紛争
2017年、WIPOセンターはさまざまな知的財産権(IP)関連紛争で、52件の仲裁・調停事件 と84件の斡旋解決申立を受理しました。(付属書8)近年、特許関連の紛争が最も多く、次いで、情報通信技術商標、そして著作権関連の紛争の順になっています。紛争当事国は、ヨーロッパが依然として首位(51%)で、次いで北米、アジア、ラテンアメリカと続きます。(付属書9)WIPOに提訴される事件は、開発契約、販売契約、ソフトウェア契約、映画共同制作契約、守秘義務契約などの取引と関連するものでした。
WIPOセンターで最も選択される手続は調停で、次いで、簡易仲裁、仲裁と続きました。国内裁判所や加盟国の知財庁に持ち込まれる前に保留とされた訴訟手続を含め、紛争が起きた後に申し立てられた契約外紛争と関連するこれらの事件は、年々増加傾向にあります。
2017年には、WIPOの仲裁・調停サービスを最もよく利用するのは多国籍企業や中小企業を含めた企業が首位で、次いで、個人、研究機関・大学、著作権管理団体の順になっています。WIPOに提訴される事件の約60%の当事者が、WIPOの特許協力条約(PCT)、マドリッド制度またはハーグ制度も利用しています。
他の加盟国と既に行われていた同様の連携に基づき、WIPOセンターは、2017年に、新たに12の知財庁と著作権事務局との連携を開始しました。連携方法には、裁判外紛争解決手続(ADR)の枠組みの策定、トレーニングやプロモーションの整備、事件の管理手続などがあります。(付属書10)
WIPOは公正、合理的かつ非差別的な(FRAND)条件に基づく標準必須特許(SEP)にかかる紛争の解決申立を促進するため、Guidance on WIPO FRAND ADRを発行しています。WIPOのWorld Intellectual Property Report 2017は、1990年以降、世界中で出願される特許の最大35%がスマートフォン関連で、SEPに該当するスマートフォン特許の占める割合が比較的高いことを報告しています。Guidance on WIPO FRAND ADRには、ADR手続で当事者が考慮すべき事項について記載されており、裁判外紛争解決手続であるWIPOのFRAND条件に基づく紛争処理手続を参照した、個別に対応したモデル申立合意も掲載されています。
WIPO仲裁調停センターの背景
WIPO仲裁調停センターは、本部をスイスのジュネーブ、支局をシンガポールに置き、私的当事者間の国際的商取引紛争を解決するための裁判外紛争解決手続サービスを提供しています。WIPOセンターが提供する仲裁、調停、及び専門家による裁定手続は、技術、エンターテイメント、及びその他の知的財産をめぐる紛争に特に適していると認識されています。WIPOセンターは、世界中の商標名義人からの提訴を受理しており、WIPOが提案したUDRPに基づきドメイン名紛争処理を行なう、世界トップクラスの紛争処理サービスプロバイダーです。
WIPOについて
世界知的所有権機関 (WIPO) は、世界中のイノベーターやクリエイターにサービスを提供し、アイデアの確実な市場投入を通じてあらゆる場所における生活の向上実現を支援する国連機関です。
WIPOは、知的財産 (IP) の国境を越えた保護と展開を目指すクリエイターやイノベーターまた起業家たちを支援するサービスを提供し、また知的財産に関する最先端の課題解決に取り組むためのフォーラムとして機能します。WIPOが発表する知的財産データと情報は世界中の意思決定者により参照されます。またそのインパクト重視のプロジェクトや技術支援を通じて、あらゆる場所のすべての人が知的財産の利益を受けられるように支援します。
詳しくはWIPO Media Relations Sectionにお問い合わせください。- 電話: (+41 22) 338 81 61 / 338 72 24
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