2021年、世界全体のIP出願件数が過去最多を更新―アジアが成長を牽引
Geneva,
2022/11/21
PR/2022/897
2021年、特許・商標・意匠を含む知的財産 (IP) の世界全体における出願件数は過去最多を更新し、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) のパンデミック下でも、グローバル・イノベーション・エコシステムの「レジリエンス」を示す結果となりました。
WIPOの世界知的財産指標 (World Intellectual Property Indicators: WIPI) 報告書によると、知財出願の件数は、過去の景気低迷時の傾向とは異なり、COVID-19のパンデミックの真っ最中であった2020年も堅調で、2021年には急増しました。
Interactive charts: Barchart
中国 (+5.5%) 、韓国 (+2.5%) およびインド (+5.5%) では、現地での特許出願件数が大きく伸びたことで、2021年の世界全体の出願件数の伸びが後押しされ、アジアの出願シェアが全体の3分の2を超えるまでに押し上げられました。一方、米国 (-1.2%) 、日本 (-1.7%) およびドイツ (-3.9%) では2021年、現地での特許活動が減少しました。
2021年、大多数の国で商標出願活動の増加が見られ、2021年の世界全体の出願件数は商標区分数にして1,810万件に上り、2020年比で5.5%増でした。新ブランドの出願・登録数の増加は、パンデミックの混乱に乗じた起業家活動やベンチャーキャピタル投資のブームと時を同じくするものでした。意匠出願活動も9.2%増となりました。意匠の件数についても、アジアの知財庁において最も増加しました。
「最新のWIPIのデータによれば、知的財産の出願は、主にアジアでの件数増に牽引されて、継続的・持続的に伸びており、他の地域でも概ね増加傾向にあります。」とWIPOのDaren Tang (ダレン・タン) 事務局長は述べています。また、「パンデミック中にIP出願が伸びたことは、世界中の人々が、パンデミックによる経済的・社会的混乱に屈することなく、創造とイノベーションを続けたことを示すものです。」と付け加えました。
一方で、タン事務局長は次のようにも述べています。「この『レジリエンス』を当たり前のことと考えてはいけません。さらなる不況が迫っており、地政学的な緊張も高まっています。気候変動や国連SDGsの達成など、私たちは現在さまざまな課題に直面しています。したがって、発明者・創作者が知財制度を利用してアイディアを実現し、私たちの暮らしをより良くするようなインパクトを生み出せるよう、支援を続けなければなりません。」
知的財産権の出願 | 2020年 | 2021年 | 増加率 (%) 、 2020~2021年 |
特許 | 3,281,900 | 3,401,100 | 3.6 |
商標 * | 17,193,800 | 18,145,100 | 5.5 |
意匠 * | 1,387,800 | 1,515,200 | 9.2 |
植物品種 | 22,620 | 25,340 | 12.0 |
注: 「*」は、国をまたがる比較を可能にするために、出願に含まれる商標区分および意匠の数を表示しています。これは、各区分/意匠ごとに個別の出願を行う必要がある国もあれば、単一の出願に複数の区分/意匠を含めることを認める国もあるためです。
特許に関する2021年の統計データ
約150の国内・広域知財庁の最新データをまとめたWIPIによると、中国での特許出願の大幅な増加に加え、韓国特許庁および欧州特許庁においても強い伸びが見られました。これらが、2021年の世界全体の出願件数の増加の主な推進力となりました。
2021年の世界全体の特許出願件数は合計340万件でしたが、そのうち、中国の国家知識産権局では2021年に159万件を受理しました。この数は、世界ランク第2位から第13位の計12官庁の総計に匹敵します。中国に次いで、米国特許商標庁 (591,473件) 、日本国特許庁 (289,200件) 、韓国特許庁 (237,998件) 、欧州特許庁 (188,778件) の順となりました。これら五庁を合わせると、世界全体の85.1%を占めました。
上位20官庁の過半数 (20のうちの15庁) で、2021年の特許出願件数が2020年よりも多い結果となりました。最も大きな伸びを見せたのは、南アフリカ (+63.9%) 、イスラエル (+18.3%) 、メキシコ (+12.9%) 、オーストラリア (+10.6%) 、シンガポール (+10%) で、いずれも2桁成長を報告しました。これら五庁全てにおいて、非居住者による出願の増加が全体の件数増に大きく貢献しました。
主に中国における長期的な成長に牽引され、アジアにある知財庁は、2021年の世界全体の出願の3分の2 (67.6%) を受理しました。この割合は2011年の54.6%から大きく増加しています。北米にある知財庁は世界全体の18.5%を占め、欧州にある知財庁が占める割合は10.5%と10分の1をわずかに上回りました。2021年、アフリカ、中南米カリブ海地域およびオセアニアにある知財庁の占める割合は合計で3.4%でした。
世界全体における権利存続中の特許件数は、2021年に4.2%増加して約1,650万件に達しました。2021年に存続中の特許件数に関しては、中国が360万件で、米国を抜いて世界一になりました。中国に次いで、米国 (330万件) 、日本 (200万件) 、韓国 (120万件) 、ドイツ (877,763件) の順となりました。2021年に存続中の特許数が最も大きく伸びたのは中国で (+17.6%) 、次いでドイツ (+5.2%) 、韓国 (+5.2%) の順となりました。
機密の特許出願は公開が遅れるため、2021年の技術分野別のランキングはまだ発表されていませんが、完全なデータが入手できる直近の年である2020年に世界全体で公開された特許出願において最も高い頻度で登場した分野はコンピューター技術で、公開された全出願の10分の1 (10.2%) を占めました。次いで電気機械 (6.5%) 、計測 (5.7%) 、デジタル通信 (5.1%)、医療技術 (5%) の順となりました。
商標に関する2021年の統計データ
2021年には世界全体で1,810万の区分に及ぶ推定1,390万件の商標出願が行われました。2021年の出願において指定された区分数は+5.5%と大きく増加し、12年連続の成長を記録しました。商標出願活動は上位20官庁のうち18庁で増加しました。
それだけではなく、2021年には、韓国の12.7%から英国の61.8%まで、11の知財庁で2桁成長を記録しました。増加の要因は官庁ごとにさまざまでした。例えば、ブラジル、インドおよびトルコでは、国内出願が全体の増加を牽引しました。一方、カナダ、スイスおよび英国では、主に外国出願の増加が全体の件数の伸びに貢献しました。
中国の国家知識産権局における商標出願活動 [1] が最も多く、その区分数は約950万件でした。これに次いでUSPTO (899,678件) 、欧州連合知的財産庁 (EUIPO) (497,542件) 、インド (488,526件) および英国 (450,815件) の各知財庁の順となりました。
2021年における全ての商標出願活動のうち、アジアにある知財庁が占める割合は69.7%となり、2011年の44.7%から増加しました。欧州のシェアは、2011年の31.6%から2021年には15.7%に減少しました。北米は2021年に世界全体の5.9%を占め、一方、アフリカ、中南米カリブ海地域およびオセアニアにある知財庁の2021年の合計シェアは8.7%でした。
2021年、出願人が最も多く海外で商標保護を求めた分類は「研究・技術」で、世界全体の非居住者による商標出願の20%を占めました。次いで「保健」 (13.8%) 、「衣類・アクセサリー」 (12.8%) 、「レジャー・教育」 (10.5%) の各分類が続きました。次いでシェアが大きかった商標の分類は「家庭用機器」 (9.7%) 、「農業」 (9.6%) 、「ビジネスサービス」 (9.5%) でした。
2021年に権利存続中の商標登録は、149の知財庁で合わせて推定7,370万件あり、2020年から14.3%増加しました。そのうち中国が単独で3,720万件を占め、次いで米国の280万、インドの260万の順となりました。
意匠に関する2021年の統計データ
2021年、世界全体で150万件の意匠を含む推計120万件の意匠出願が行われました。意匠数は2021年に9.2%増となりました。2021年に中国の国家知識産権局は、805,710件の意匠を含む出願を受理しました。これは世界全体の53.2%に当たります。次いで、EUIPO (117,049件) 、英国 (74,781件) 、韓国 (69,248件) 、トルコ (65,924件) の順となりました。ブレグジット (Brexit) の影響により、英国知的財産庁への意匠出願件数が2021年には2020年比で2.3倍になり、2021年の出願意匠数で見ると、1年間で世界ランキングを4つ上げて、第3位にランクインしました。
2021年、上位20官庁の中では、英国 (+128.5%) 、インド (+67.6%) 、メキシコ (+38.4%) 、トルコ (+38.3%) において意匠出願活動が非常に活発でした。メキシコおよび英国においては、非居住者による出願活動の増加が全体の件数の伸びに貢献しました。一方、インドおよびトルコでは、居住者による出願活動の増加が全体の件数増の主要因でした。 [2]
2021年に世界全体で出願された全ての意匠のうち、アジアにある知財庁のシェアは69.3%となり、2011年の64.1%から増加しました。欧州のシェアは、2011年の28.9%から2021年には23.3%に減少しました。2021年におけるアフリカ、中南米カリブ海地域、北米およびオセアニアの合計シェアは7.4%でした。
世界全体における権利存続中の意匠登録の総数は、2021年に10.9%増加して約530万件に達しました。権利存続中の登録件数が最も多かったのが中国 (260万件) で、次いで韓国 (388,500件) 、米国 (381,549件) 、EUIPO (268,150件) 、日本 (263,274件) の順となりました。
2021年の世界の意匠出願活動のうち、「家具・家庭用品」に関連する意匠 (17.8%) が最大の割合を占め、次いで「衣料品・アクセサリー」 (14.7%) 、「工具・機械」 (11.8%) 、「電気・照明」 (9.9%) 、「ICT・音響映像」 (8.5%) の順となりました。
植物品種に関する2021年の統計データ
2021年、世界全体で約25,340種の植物品種出願が行われ、2020年比で12%増となりました。2021年に中国の関係官庁は11,195件の植物品種出願を受理しました。これは世界全体の44.2%に当たります。中国に次いで、欧州連合の欧州植物品種庁 (CPVO; 3,480件) 、さらに米国 (1,902件) 、ウクライナ (944件) 、オランダ (836件) の関係官庁の順となりました。
上位5官庁のうち、中国 (+24.9%) および米国 (+32.8%) では、2020年~2021年にかけて出願数の増加率が2桁になりました。一方、ウクライナ (-25.1%) における同期間中の出願件数は大幅に減少しました。
地理的表示に関する2021年の統計データ
93の国内・広域機関からのデータによると、2021年現在、保護された地理的表示 (GI) は推定63,600件あります。GIは、チーズの「グリュイエール」や蒸留酒の「テキーラ」のように、特定の原産地があり、その原産地に起因する品質または評価を持つ産品に使われる表示です。
報告によると、有効なGIが最も多かったのは中国 (9,052件) で、次いでハンガリー (7,743件) 、チェコ共和国 (6,272件) 、スロバキア (6,112件) 、ボスニア・ヘルツェゴビナ (6,087件) の順となりました。EU諸国が上位にランクインしているのは、EUの広域制度下で登録されている5,076件のGIが全ての加盟国において効力を有することに起因します。
「ワインおよび蒸留酒」に関連する有効GIが2021年の世界全体の約51%を占め、次いで「農産物および食品」 (43.6%) 、「手工芸品」 (3.9%) の順となりました。
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