ファーウェイ、サムスン、クアルコムがWIPO国際特許制度の出願人上位を占める; 世界的需要が軟化する中でインド、トルコ、韓国が好調
ジュネーブ ,
2024/03/06
PR/2024/914
2023年、WIPOが管轄する国際特許制度における世界の上位出願人は、中国のファーウェイ・テクノロジーズ (Huawei Technologies) 、韓国のサムスン電子 (Samsung Electronics) および米国のクアルコム (Qualcomm) でした。WIPOを経由した知的財産 (IP) の国際保護の世界的需要がやや軟化する中、インドの発明者・出願人による特許出願件数は50%近く増えました。
インド以外では韓国とトルコのみが、過去3年間連続で対前年比増を記録し、国際特許出願制度のトップユーザである中国と米国では特許の国際出願件数が前年より減少しました。
金利の上昇と景気不透明を背景に、WIPOの特許協力条約 (PCT) 制度を利用した国際出願の件数は1.8%減少し、14年ぶりの減少となりました。国際商標制度における出願件数も7%減でしたが、国際意匠制度の利用に関しては、中国での件数増に伴い1%増となりました。
ダレン・タン (Daren Tang) WIPO事務局長は、「金利の上昇と景気不透明が2023年のイノベーション活動に影を落としました。一方、2024年以降はインフレ率の低下が予想されており、インドや東南アジアをはじめとするホットスポットの存在と相まって景況感とイノベーション投資の回復につながり、国際的なIP出願件数の回復のための舞台が今年後半に整う可能性があります」と述べます。
「短期的な鈍化はあるものの、長期的な傾向としては、知的財産の利用が、グローバル化・デジタル化が進む経済において着実に増加していて、世界中の経済圏が発展するにつれて地球全域で広がりをみせていることが示されています。アジア各国からのWIPO経由の国際特許出願は、わずか10年前は40.5%でしたが、今や55.7%を占めるまでになっています。WIPOは、特に中小企業や若者、女性など、これまでIP分野であまり目立たなかったグループにおけるグローバルな知的財産利用の促進に力を注いでいます。あらゆる場所でイノベーションと創造性が進展することは、新しい技術や優れたブランド・芸術・文化を意味し、どこに住んでいようとも、私たち全員に恩恵をもたらします。」
国際特許制度 (特許協力条約 – PCT)
PCT上位出願人・出願国
2023年、PCT出願件数は合計272,600件で、前年比で1.8%減でした。2023年、中国は前年比0.6%の小幅な減少となる69,610件で、引き続きPCT出願件数でトップとなりました。中国の出願件数が対前年比で減少したのは、2002年以来初めてです。米国が対2022年比で5.3%減の55,678件で2位につけ、次いで、日本からの出願が48,879件 (–2.9%) でした。韓国とドイツが出願件数のトップ5に入り、それぞれ22,288件および16,916件でした。2023年、韓国では1.2%増を記録する一方で、ドイツでは3.2%減となりました (附属書1) 。
上位15ヵ国のうち、2023年におけるPCT出願件数の伸びが最も大きかったのはインド (+44.6%) およびトルコ (+8.5%) でした。2023年、インドの発明者によるPCT出願の件数は前年比で44.6%増であり、前年の25.9%増に引き続き、インドにおけるイノベーションエコシステムの強化・拡大を示す結果となりました。上記以外で2023年に出願件数が増加したのは、オランダ (+5.8%) 、フランス (+2%) 、韓国 (+1.2%) のみでした。
2023年のPCT出願公開件数については、中国の電気通信大手ファーウェイ・テクノロジーズが6,494件で、他社を寄せ付けず首位を維持しました。韓国のサムスン電子が2位につけ (3,924件) 、次いで、米国のクアルコム (3,410件) 、日本の三菱電機 (2,152件) 、中国のBOEテクノロジー (1,988件) の順となりました (附属書2) 。出願人トップ10中、中国の寧徳時代新能源科技 (Contemporary Amperex Technology) の伸び率が最も大きく、2023年における出願公開件数が1,533件の増加を記録し、順位を84ポイント上げて8位にランクインしました。一方、首位であったファーウェイ・テクノロジーズの公開件数は2023年、前年比で1,195件減少しました。
教育部門では、2023年もカリフォルニア大学 (米国) が首位の座を維持し、PCT出願公開件数は531件でした。蘇州大学 (中国) が2位につけ (332件) 、次いで、テキサス大学システム (米国、217件) 、清華大学 (中国、209件) 、リーランド・スタンフォード・ジュニア大学 (米国、180件) の順となりました (附属書3) 。教育機関トップ5中、清華大学の伸び率が最も大きく、PCT出願公開件数にして35件増でした。
上位の技術分野
公開されたPCT出願のうち、コンピュータ技術が最大のシェア (10.2%) を占め、次いで、デジタル通信 (9.4%) 、電気機械 (7.9%) 、医療技術 (6.7%) 、製薬 (4.7%) の順となりました (附属書4) 。これら5分野が、2023年における全PCT出願公開件数の約5分の2を占めました。
トップ10の技術分野のうち、2023年に成長が見られたのは4分野のみで、電気機械 (+8.8%) が最も伸び率が高く、僅差で輸送手段 (+7.7%) が続き、次いで、半導体 (+5.6%) 、バイオテクノロジー (+3.8%) の順となりました。コンピュータ技術の分野は7年連続で対前年比増を記録してきましたが、2023年には3.4%減となりました。同様に、デジタル通信の分野も、2023年には、2019年以来初めてとなる2.1%の減少となりました。
国際商標制度 (マドリッド制度)
マドリッド制度の上位出願人・出願国
2023年、WIPOのマドリッド制度を利用した国際商標出願の件数は合計64,200件となり、前年比で7%減となりました。国別では、国際商標出願を最も多く行ったのは米国の出願人 (10,987件) で、次いで、ドイツ (6,613件) 、中国 (5,473件) 、フランス (4,267件) 、英国 (3,817件) の順となりました (附属書) 。
上位10の出願国のうち、2022年から2023年にかけて件数増が見られたのは中国 (+7.7%) および韓国 (+2.9%) の2ヵ国のみでした。一方、ドイツ (–14%) 、オーストラリア (–13.9%) 、スイス (–12.4%) 、米国 (–11.8%) では2桁減となりました。これらの出願国では、出願件数が2年連続で対前年比減となりました。
2023年、フランスのロレアル (L’Oréal) が199件のマドリッド商標出願を行い、3年連続で首位を維持しました。ドイツのBMW社 (124件) が順位を33上げて2位につけ、次いで、ブルガリアのEuro Games Technology (118件) 、ドイツのベーリンガーインゲルハイム (Boehringer Ingelheim International GMBH、110件) 、スイスのノバルティス (Novartis AG、110件) の順になりました。
ドイツのBerlin-Chemie社の出願件数は、2023年には2022年よりも104件増え、ランキングを6位に押し上げました。BMW社 (+85件) 、ベーリンガーインゲルハイム (+56件) およびフランスのStokomani社 (+56件) も、2022年から2023年にかけて出願件数の大幅増を記録しました (附属書6) 。
上位の分類
WIPOが受理した国際出願のうち最も多く指定された分類は、コンピュータハードウェア・ソフトウェアおよびその他の電気電子機器であり、2023年の合計の11%を占めました。次いで、事業向けサービス (8.8%) 、科学的・技術的サービス (8.1%) の順となりました。
国際意匠制度 (ハーグ制度)
ハーグ制度の上位出願人・出願国
2023年、WIPOのハーグ制度を通じた国際出願に含まれる意匠の数は、過去最高となる合計25,343意匠を記録し、対前年比にして1%の微増を示すとともに、3年連続の件数増となりました。ドイツが引き続き国際意匠制度の最大ユーザーとなり、意匠数は4,517件、次いで、中国 (3,758件) 、米国 (2,668件) 、スイス (2,196件) 、イタリア (1,817件) の順となりました (附属書7) 。2023年、上位10ヵ国のうち、中国 (+46.9%) およびトルコ (+45.7%) において2桁成長を記録しました。また、米国 (+9.2%) 、日本 (+6.9%) およびフランス (+4.7%) でも2023年に高い伸びが見られました。
公表された出願に含まれる意匠数では、韓国のサムスン電子が、前年首位であった米国のプロクター・アンド・ギャンブル (Procter & Gamble、525意匠) を抜いて、544意匠で首位に返り咲きました (附属書8) 。韓国のLGエレクトロニクス (LG Electronics) およびドイツのポルシェ (Porsche AG) がそれぞれ352意匠で同率3位につけ、次いで、中国のXiaomi Mobile Softwareが315意匠で続きました。
ポルシェ、フランスのエルメス・セリエ (Hermes Sellier) 、ドイツのTriple A Finance社、ドイツのアルフレッド ケルヒャー (Alfred Karcher) はいずれも、2022年と比較して2023年の出願に含まれる意匠数が大幅に増加し、それぞれ、意匠数にして235件、179件、175件、142件の増加となりました。
上位の分野
2023年の意匠の合計のうち最大シェアを占めたのは、輸送手段 (11.2%) で、次いで、記録・通信機器 (8.6%) 、家具 (7.6%) 、パッケージ・容器 (6.9%) 、家庭用品 (5.6%) の順となりました。
WIPOの紛争解決 (WIPO仲裁調停センター)
2023年、WIPOの裁判外紛争解決 (ADR) サービスに対する需要は高く、WIPO仲裁調停センター (WIPO AMC) は2023年、679件の知財・イノベーション・技術関連の紛争解決に関与しました。これは2022年比で24%増であり、過去5年間で280%増えたことになります。
WIPO ADR規則に付託された紛争のうち、43%が著作権およびデジタルコンテンツに関連し、27%が商標、10%が特許 (標準必須特許/FRAND紛争やライフサイエンス分野の注目度の高い紛争を含む) に関連するものでした。また、共同管理案件の96%が著作権関連でした。
2023年には、スタートアップ、クリエイターやイノベーターを含む中小企業が紛争当事者となる事件が増え51%を占め、そのほか、集中管理団体 (23%) 、大企業 (13%) 、大学や研究開発センターを含むその他の団体 (13%) が関与しました。主な事業部門としては、創造産業 (集中管理、ビデオゲーム、eスポーツ、ソフトウェア) 、ICT (FRAND、テレコム) 、ライフサイエンス (バイオテクノロジー、製薬) が挙げられます。
WIPOドメイン名紛争解決サービスの利用件数は過去最高を記録し、2023年における商標権者による訴えは6,200件近くに上りました。これは2022年比で7%増を示し、COVID-19のパンデミック発生以来68%の増加となっています。
2023年に申立てられたWIPOドメイン名事件はほぼ全ての産業を網羅し、上位の部門としては、銀行業・金融 (13%) 、バイオテクノロジー・製薬 (11%) 、ファッション (10%) 、小売業 (10%) 、インターネット・IT (9%) が挙げられます。申立件数の多い国としては、米国、フランス、英国、ドイツおよびスイスが上位を占めました。
「.com」以外では、WIPOにおける事件の12%超が国別トップレベルドメイン (ccTLD) に関連するものでした。
WIPOについて
世界知的所有権機関 (WIPO) は、世界中のイノベーターやクリエイターにサービスを提供し、アイデアの確実な市場投入を通じてあらゆる場所における生活の向上実現を支援する国連機関です。
WIPOは、知的財産 (IP) の国境を越えた保護と展開を目指すクリエイターやイノベーターまた起業家たちを支援するサービスを提供し、また知的財産に関する最先端の課題解決に取り組むためのフォーラムとして機能します。WIPOが発表する知的財産データと情報は世界中の意思決定者により参照されます。またそのインパクト重視のプロジェクトや技術支援を通じて、あらゆる場所のすべての人が知的財産の利益を受けられるように支援します。
詳しくはWIPO Media Relations Sectionにお問い合わせください。- 電話: (+41 22) 338 81 61 / 338 72 24
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