世界知的財産指標報告書: 2023年、世界全体の特許出願件数が過去最多を更新
,
2024/11/07
PR/2024/927
移動: 特許 | 商標 | 意匠 | 植物品種 | 地理的表示
WIPOの世界知的財産指標 (WIPI) 年次報告書によると、2023年、世界全体の特許出願件数は初めて350万件を超えて過去最多を更新し、厳しいマクロ経済環境にもかかわらず4年連続の増加となりました。
チャート (インタラクティブ): Barchart
世界の特許出願活動を牽引したのは、特許出願件数の多かった中国 (164万件) 、米国 (518,364件) 、日本 (414,413件) 、韓国 (287,954件) 、ドイツ (133,053件) でした。インド (64,480件) は特許出願件数が15.7%増加して6位に順位が上がりましたが、これは主に、インドの急速な経済成長に支えられ、居住者による出願が大幅に増加したことによるものです。
またインドでは、2018年から2023年の間に特許と意匠の両方で出願が倍増、商標の出願が60%増加しており、今回初めて、WIPIに含まれる3つの主要な知的財産 (IP) 権のすべてにおいて上位10位にランクインしました。
先行き不透明な経済環境に直面する中でも、知的財産権に対する需要は高まっています。中でも国内需要が拡大しています。これは、特許出願件数の増加が、海外からの出願ではなく、国内居住者自身による出願件数の増加に牽引されていることからも示されています。出願件数の増加に伴う今後の課題は引き続き質の重視であり知的財産権出願を実際の製品やサービス創出につなげることです。
ダレン・タンWIPO事務局長
2023年には、世界全体の意匠出願活動 [1] も増加し、出願件数が2.8%伸びて152万件となり、上位20か国のうち7か国で2桁の伸びを示しました。商標出願活動 [2] は、出願件数が前年 (2022年) 比2%減の合計1,523万件となりましたが、前年ほど深刻な減少ではありませんでした。
長期的な傾向として、アジアの知財庁での出願活動が大部分を占めており、2023年の世界全体の特許、商標、意匠の出願活動は、アジアがそれぞれ68.7%、66.7%、69%を占めました。アジアにおける知財出願は中国、日本、韓国に集中しており、昨年のアジアの特許、商標、意匠の出願活動のうち、中国、日本、韓国の知財庁を合わせたシェアがそれぞれ91.1%、77.0%、87.2%を占めました。
知的財産権の出願 | 2022年 | 2023年 | 増加率 (%)、2022~2023年 |
特許 | 346万 | 355万 | +2.7 |
商標* | 1555万 | 1523万 | –2.0 |
意匠* | 148万 | 152万 | +2.8 |
植物品種 | 27,260 | 29,070 | +6.6 |
注: 「*」は、国をまたがる比較を可能にするために、出願に含まれる商標区分や意匠の数を表示しています。これは、各区分/意匠ごとに個別の出願を行う必要がある国もあれば、単一の出願に複数の区分/意匠を含めることを認める国もあるためです。
特許
WIPによると、中国、韓国、米国、日本、インドの居住者による特許出願が大幅な伸びを示し、2023年の世界全体の出願件数の増加の主な推進力となりました。
上位20の出願国のうち、2023年に特許出願件数が最も大きく伸びたのはインド (15.7%増) であり、5年連続で2桁の伸びを示しました。また、上位20か国のうち、過去10年間で出願件数の増加が毎年報告されているのはインドだけです。2023年の上位20か国のうち2桁の伸びを示したもう1つの国はフィンランド (+11.2%) で、居住者による出願と外国出願の両方の件数が増加したことによるものです。
2023年には、中国居住の出願人が国内と海外の法域を対象に、約164万件の特許出願を提出しました。中国に次いで、米国 (518,364件) 、日本 (414,413件) 、韓国 (287,954件) 、ドイツ (133,053件) の順となりました。上位5つの出願国は、それぞれ2022年に比べ特許出願件数が増えており、韓国 (+5.7%) の伸びが最も大きく、次いで中国 (+3.6%) 、米国 (+2.5%) 、日本 (+2.2%) 、ドイツ (+1.4%) の順となりました。
上位5つの出願国の全体の伸びは、韓国を除き、主に居住者による出願が大幅に増加したことによるものです。韓国では、居住者による出願と外国出願が両方とも増加し、全体の件数の伸びに貢献しました。
出願から公開までは遅延があるため、完全なデータが入手できる直近の年は2022年になりますが、2022年に世界全体で公開された特許出願において、コンピューター技術が最も高い頻度で登場し続けており、世界の全出願の12.4%を占めました。次いで、電気機械 (6.8%) 、計測 (5.9%) 、医療技術 (5.4%) 、デジタル通信 (5.3%) の順となりました。上位10の技術分野のうち、2012年から2022年までに2桁の伸びを示した分野は、コンピューター技術 (+10.7%) のみでした。
エネルギー技術 (太陽光、燃料電池、風力、地熱、水力) 関連の公開された特許出願の件数は、2007年の約29,400件から2022年には約44,700件に増加しました。
商標
2023年には世界全体で1,523万の区分に及ぶ推定1,163万件の商標出願が行われました。2023年の出願において指定された区分数は2%減少し、2009年以降2度目の減少であり、2年連続の減少を記録しました。
中国に居住する出願人による商標出願活動が最も多く、国内出願と外国出願の区分件数の合計は、約740万件に及びました。次いで、米国 (849,876件) 、ロシア連邦 (543,692件) 、インド (496,293件) 、ドイツ (441,293件) の出願人の順となりました。上位5つの出願国のうち、インド (+6.1%) とロシア連邦 (+30.1%) の両国で2023年に出願件数が増加しましたが、中国 (–3.4%) 、ドイツ (–7.3%) 、米国 (–10.1%) では減少しました。インドでは、居住者による出願と外国出願の増加が伸びを牽引したのに対し、ロシア連邦では、全体の伸びは居住者による出願の増加のみによるものでした。ドイツと米国では居住者による出願と外国出願が両方とも減少して全体の減少に寄与しており、中国では居住者による出願の落ち込みが減少理由となっています。
2023年に世界全体で商標出願件数が減少した要因として、上位20の出願国のうち13か国からの出願が減少し、スイス (-10.5%) 、トルコ (-17.6%) 、米国 (-10.1%) の3つの出願国では2桁の減少が見られたことが挙げられます。対照的に、上位20の出願国のうち7か国からの商標出願は増加しており、そのうちインドネシア (+10%) 、メキシコ (+11.1%) 、ロシア連邦 (+30.1%) は2桁の伸びを示しました。さらに、ブラジル (+8.5%) も2023年に堅調な伸びを示しました。ブラジルの伸びは、国内出願の増加のみによるものでした。インドネシアとメキシコの居住者による出願の増加には国内出願と外国出願の両方の増加が寄与しました。
アジアは世界全体の商標出願の66.7%と大部分を占めており、10年前の2013年の49%からシェアを大きく拡大しました。この傾向により、他の5つの地理的地域が全体に占める割合は、同じ期間に減少しています。ヨーロッパは2023年に世界全体の17.2%を占め、次いで中南米カリブ海地域が7.1%、北米地域が5.8%を占めました。残りのシェアは、アフリカ (1.9%) とオセアニア (1.3%) が占めました。
2023年に出願人が最も多く海外で商標保護を求めた分野は研究・技術で、世界全体の非居住者による商標出願の20.1%を占めました。次いで保健 (13.7%) 、衣類・アクセサリー (12.4%) 、レジャー・教育 (10.1%) の各分類が続きました。次いでシェアが大きかった商標の分野は農業 (10.1%) 、ビジネスサービス (9.7%) 、家庭用機器 (8.7%) でした。対照的に、外国出願の割合が小さいのは、化学製品 (3.1%) 、建設 (5.5%) 、輸送 (6.6%) でした。
権利存続中の商標登録は、世界全体の155の知財庁で合わせて推定8,820万件あり、2022年から6.4%増加しました。2023年に権利存続中の商標登録件数が最も多かったのは再び中国で、合計約4,610万件でした。次いで米国とインドの知財庁が続き、権利存続中の登録件数はそれぞれ320万件近くでした。
意匠
2023年に世界全体で、推定119万件の意匠出願が行われました。これらの出願に含まれる意匠数は約152万件で、前年 (2022年) 比で2.8%増に相当します。
2023年、出願意匠数ベースで、世界で最も活動的だったのは中国に居住する出願人で、882,807件の意匠に関して出願を行いました。次いで、米国 (69,076件) 、ドイツ (64,986件) 、イタリア (60,486件) 、韓国 (60,120件) の出願人の順となりました。これら上位5か国の合計は、2023年における世界の活動の4分の3近く (74.6%) を占めました。主に中国の出願人による出願の急増に牽引され、上位5つの出願国が占めるシェアは、過去10年間で3.6%増加しています。
上位5つの出願国のうち、2023年に出願件数が最も大きく伸びたのはイタリア (+15.7%) で、次いで中国 (+5%) 、米国 (+2.6%) の順となりました。対照的に、ドイツ (–7.6%) と韓国 (–3.4%) は減少しました。イタリアでの2桁の伸びは居住者による出願の急激な増加によるものであり、米国では、外国出願の大幅な増加が全体の伸びを後押ししました。
2023年の上位20の出願国のうち13か国で出願件数が増加し、そのうち7か国は2桁の伸びを示しました。最も大きく伸びたのは、インドネシア (+37.3%) 、インド (+36.4%) 、ロシア連邦 (+31.6%) の出願人によるものでした。
2023年に世界で出願された意匠数全体の中で、アジアが占める割合は69%となりました。アジアに次いで、ヨーロッパ (23.5%) 、北米 (4.5%) の順となりました。アフリカ、中南米カリブ海地域 およびオセアニアの2023年の合計シェアは3%で、10年前の3.4%から減少しています。2013年から2023年までの期間に、すべての地理的地域の中で意匠数の平均増加率が最も高かったのは、北米 (+5.3%) とアジア (+2%) でした。
2023年に権利存続中の意匠登録は、約610万件でした。これは前年 (2022年) 比で10.5%の増加となります。中国で権利存続中の意匠登録件数は、14.2%増加して320万件となり、2023年の世界全体の半数以上 (53.2%) を占めるようになりました。中国に次いで、米国 (424,718件) 、韓国 (414,117件) 、欧州連合知的財産庁 (EUIPO) (329,358件) 、英国 (309,554件) の順となりました。
2023年に世界全体で大きな割合を占めた分野は、衣料品・アクセサリー (17.3%) 、家具・家庭用品 (16.9%) 、工具・機械 (11%) 、電気・照明 (9.2%) 、ICT・音響映像 (8.8%) でした。合計すると、これら5つの分類が世界で登録された全区分の 63.2% を占めました。
植物品種
2023年に世界全体で約29,070件の植物品種出願が行われ、前年 (2022年) 比で6.6%増となり、8年連続の増加を記録しました。2023年に最も出願が活発だったのは中国の出願人で、15,552件の植物品種出願を行っています。これは世界全体の53.5%に当たります。中国の出願人に次いで、オランダ (2,924件) 、さらに米国 (1,763件) 、フランス (993件) 、英国 (939件) の各国出願人が続きました。
上位5つの出願国のうち、2023年に2桁の伸びを示したのは中国 (+25.9%) だけでした。オランダ (+1.7%) は、前年の急激な減少の後、緩やかな伸びを回復しました。対照的に、フランス (–14.9%) 、英国 (–43.3%) 、米国 (–16.8%) は、2023年の出願件数が2022年と比べ大幅に減少しました。
地理的表示
86の国内・広域機関からのデータによると、2023年現在、保護された地理的表示 (GI) は推定58,600件あります。GIは、チーズの「グリュイエール」や蒸留酒の「テキーラ」のように、特定の原産地があり、その原産地に起因する品質または評価を持つ産品に使われる表示です。
2023年、有効なGIが最も多かったのは中国 (9,785件) で、次いでドイツ (7,586件) 、ハンガリー (7,290件) 、チェコ共和国 (6,657件) の順となりました。EU諸国が上位にランクインしているのは、EUの広域制度下で登録されている5,376件のGIは全ての加盟国においてそれぞれ効力を有するためです。
ワインおよび蒸留酒 (48.1%) に関連する有効なGIが2023年の世界全体の半数を占め、農産物および食品が全体の44.8%、手工芸品が4.2%を占めました。
WIPOについて
世界知的所有権機関 (WIPO) は、世界中のイノベーターやクリエイターにサービスを提供し、アイデアの確実な市場投入を通じてあらゆる場所における生活の向上実現を支援する国連機関です。
WIPOは、知的財産 (IP) の国境を越えた保護と展開を目指すクリエイターやイノベーターまた起業家たちを支援するサービスを提供し、また知的財産に関する最先端の課題解決に取り組むためのフォーラムとして機能します。WIPOが発表する知的財産データと情報は世界中の意思決定者により参照されます。またそのインパクト重視のプロジェクトや技術支援を通じて、あらゆる場所のすべての人が知的財産の利益を受けられるように支援します。
詳しくはWIPO Media Relations Sectionにお問い合わせください。- 電話: (+41 22) 338 81 61 / 338 72 24
- メール