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循環経済における持続可能性

2020年3月

著者 Cecelia Thirlway、フリーランスライター

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」では、エメット・ブラウン博士の作ったアイコニックなデロリアンタイムマシーンは家庭廃棄物を動力として走行するよう改良されていました。2015年の出来事として描かれているこの想像上の未来のイノベーションは、予定から少なくとも5年は遅れています。しかし、バナナの皮とビニール袋を使って車両に燃料を供給することはまだ実現されていませんが、廃棄物の世界では画期的なイノベーションが起きています。

私たちが、廃棄物を、それらを作り出すのに使用されたものと同等またはそれ以上の価値がある資源として認識し始めれば、ループを閉じ、真に循環的な経済を作り出すことができます。(写真:HoWei / GettyImages)

世界銀行によれば、早急に行動を起こさなければ、世界の年間廃棄物の量は2050年までに 34 億トンに達し、これは、 2018 年の排出量と比較して 70 パーセントの増加となるとされています。高所得国の廃棄物の 3 分の 1 以上がリサイクルと堆肥化を通じて回収されていますが、低所得国では廃棄物の 4 パーセントしかリサイクルされていません。

リサイクルの問題に取り組むことができれば、気候危機とそれに伴う貴重な生息地の喪失を解決するための基盤を築くこともできます。 私たちが処女資源を使えば使うほど、地球をさらに傷つけることになります。世界経済フォーラム pdf (WEF) は、「資源の採取と処理だけで、世界の生物多様性の損失と水ストレスの90%以上が発生し、そして、世界的な気候変動の影響の約半分を引き起こしている」と推定しています。

石油と鉱物の採取への依存を減らすことで、高いレベルの排出量の発生を回避し、これにより地球の弱体化した生態系の回復を支援することができます。そして、ここにはチャンスがあります。 WEF によれば、「天然資源の採取に依存しないスマートな資源の使用とビジネスモデルは、イノベーションと新しい成長モデルにとって巨大な未開発分野です。」

捨てる神あれば拾う神あり

資源が再利用・リサイクルされて、廃棄されることなく、完全に持続可能で循環するシステムを作る秘訣は、その経済的価値にあります。私たちが、廃棄物を、 それらを作り出すのに使用されたものと同等またはそれ以上の価値がある資源として認識し始めれば、ループを閉じ、真に循環的な経済を作り出すことができます。これは新しい考えではありません。例えば、17 世紀には、ウイスキーの生産者が、シェリー酒をスペインから港に運ぶのに使用したオーク樽を再利用し始めました。これは、新しいオークを購入するよりもはるかに安価な解決策であり、また、空の樽を補充のためにスペインに送り返すことにはほとんど意味がありませんでした。このアプローチの利点は、後になって初めて発見されました。

同様に、1935 年に桶産業を保護するために米国で可決された法律は、バーボン樽を 1 回以上使用することを違法にしました。これにより、使用済みのバーボン樽が廃棄物になり、木材が利用可能な限り樽を再利用できる 英国のウイスキーの大部分がアメリカ製オーク樽で熟成されるようになりました。

しかし、これらの原則を再利用が更に難しい素材にどのように適用すればよいのでしょうか。2016 年には、世界で 2 億 4,200 万トンのプラスチック廃棄物 が排出され、多くの人がプラスチックを問題のある物質と見なすようになりました。

プラスチック廃棄物は私たちの海を乱し、マイクロプラスチックは驚くべき速度で自然の生態系と食物連鎖に侵入しています。世界中の多くの国や都市では、顧客に袋の使用料金を直接請求するか、顧客にビニール袋を提供している小売業者に課税することでビニール袋の使用を劇的に削減しています。 さらに、英国のSky's Ocean RescueやオーストラリアのPlastic Free Julyなどの取り組みが、企業や消費者に使い捨てのプラスチックを生活から排除するよう求めています。

しかし、完全にプラスチックを使用しないことが正解なのでしょうか?プラスチックは非常に用途の広い素材で、適切な代替品を見つけるのは必ずしも容易ではありません。さらに、開発された代替案が新しい廃棄物や排出問題を引き起こさないようにすることが重要です。選択肢の1 つは、すでに持っているプラスチックをうまく処理することです。

「私たちが抱えている最大の問題は、人々がプラスチックを悪魔や、死、悲観的なものとして分類していることです。 」と Green Lizard Technologies の CEO 、 Martin Atkins 教授は述べます。 「しかし、実際には、プラスチックの利点を見ると、例えば、食品を梱包して運ぶことができる他のすべてのものよりもはるかに上回っています。プラスチックの唯一の問題は、プラスチックを廃棄物として適切に処理する方法を私たちが知らないということです。」

クイーンズ大学ベルファストのスピンアウト企業であるGreen Lizard Technologies は、産業問題に対して環境に優しく持続可能なソリューションの開発に取り組んでいます。プラスチック廃棄物に対するそのソリューションは、廃棄 PET (ポリエチレンテレフタレート)を、現在 Poseidon Plastics UK を通じて商品化されている有機化合物である BHET (ビス( 2- ヒドロキシエチル)テレフタル酸)に変換するプロセスです。

「多くの人が単にエネルギーを回収するためにプラスチックを燃やしています。しかし、その過程では二酸化炭素が生成され、実際にはそれほど多くのエネルギーを回収できません。そのため、それは最悪の行為と言えます。私たちは、二次用途や三次用途に使用できるようにするため、プラスチックを燃料、化学物質、溶剤にまで戻し、製品に転換するプロセスを開発しました。これらの製品は別の方法でも作ることができますが、廃棄物として分類される原料を使用しているため、はるかに安価です。」

Green Lizard のようなプロセスの重要な要素は、産出物を以前と同じ価値を持つ目的のために再利用できることです。

Atkins 教授は、プラスチック廃棄物を管理することは困難だが、食品サプライチェーンでそれを他のものに置き換えると、重い梱包材(ガラスなど)による輸送排出量または食品廃棄物が増える可能性があることを指摘しています。しかし、廃棄されたプラスチックが経済的に実行可能な方法で再利用できれば、それはすべてを変えるでしょう。

「個人的な見解では、私たちがプラスチックに価値を置けば、人々はプラスチックを問題ではなく資源として見るようになるため、問題は解決します。 」

リサイクル対ダウンサイクル

歯ブラシ製造会社のReswirlは、手動の歯ブラシや電動歯ブラシ用の取
り替え用ヘッドを開発しています。このヘッドは、使用後、同社に返却
すると、新しいブラシに再成形されます。(写真:Reswirl提供)

歯ブラシ製造会社Reswirl の Conway Daw 氏は、次のように述べています。「リサイクルのために返却されるプラスチックの多くは、実際にはリサイクルされておらず、ダウンサイクルされています。細かく切り刻まれ、グレードの低い材料になり、公園のベンチ、ジョウロ、車止めのポールなどになります。これは二次用途になりますが、継続的な循環ではありません。そして、最終的には埋め立て地に使用されることになります。」

Reswirl は、手動の歯ブラシや電動歯ブラシ用の取り替え用ヘッドを開発しています。このヘッドは、使用後、同社に返却すると、新しいブラシに再成形されます。 同社が使用する材料とリサイクルのプロセスにより、生成物が繰り返し使用されるようになります。そして、歯ブラシが通常の廃棄物経路に行き着いた場合でも、歯ブラシの持ち手は PHA (ポリヒドロキシアルカノエート)と呼ばれる生分解性材料でできているため、安全に生分解されます。

Reswirl はリサイクルプロセスと材料の 特許を申請しましたが、Conway Daw 氏は経験豊富なデザイナーとして、特許プロセスでは製品の寿命の終わりをより重視すべきだと考えています。

「私は、何かが作られる方法だけではなく、寿命の終わりにそれがどのように再利用されうるかを考慮する責任を強く信じています。再利用やリサイクルを容易にするモノ、プロセス、化合物の特許申請の場合、審査の追加的基準が存在するべきかもしれません。」 

卑金属

「1 世紀以上にわたってリサイクルに成功している素材の一つに鉛があります。多くの様々な用途を持つ高価な金属として、その価値は可能な限り多く復元する取り組みに値することを意味します。しかし、これにはそれ自体の問題があります。」とリサイクル会社 Aurelius Environmental の Athan Fox 博士は述べます。

「多くの人はこれに気づいていませんが、鉛蓄電池は実際、世界で最も成功しているリサイクル商品生産物です。 電池はリサイクルされたプラスチックケースに収められており、このプラスチックはお金になり、その価値は新しいプラスチックになることで保たれます。次に、電解質があります。酸は通常中和され、付加価値のある塩に変換され、様々な産業用途で使用されます。そして、鉛金属があり、その鉛金属は1850 年代から電池に使用されています。」

(写真:AvigatorPhotographer/GettyImages)

個人的な見解では、私たちがプラスチックに価値を置けば、人々はプラスチックを問題ではなく資源として見るようになるため、問題は解決します。

Martin Atkins、CEO、Green Lizard Technologies

これは実践されている循環経済の完璧な例のように聞こえるかもしれませんが、 一つにはリサイクルのプロセスが高価かつエネルギー集約型で、大量の二酸化炭素を排出するという理由から、電池から鉛をリサイクルする業界は、非常に汚染されています。

Aurelius Environmental は、電池内の活物質、いわゆる「鉛酸化物」を回収しながら、炭素排出量を 85 パーセント以上削減できるプロセスを開発しました。この廃棄物ゼロのプロセスは、加熱炉ではなく冷水で行われるため、エネルギー使用量が持続可能な形で削減されます。

「私たちのプロセスでは、古い活性材料は、精製プロセスや材料のダウンストリーム変換を経る必要なく、直接新しい活性材料に変換されます。」とFox 博士は続けます。「しかし、さらに喜ばしいのは、リサイクルのプロセスを通じて生成された活物質にはより高い多孔性があるため、優良な電池に適していることです。採掘された鉛金属から作られる電池よりもエネルギー密度が高いのです。」

これにより、業界にこの新しいプロセスを採用するための強力な経済的推進力が提供され、また、これがAurelius Environmental が現在、世界中のすべての主要市場でライセンス供与を交渉している理由でもあります。

不足と豊富さ

廃棄物は部分的に「豊富さ」によって促進されています。資源が豊富にある場合、それらは安価になります。そのため、私たちはそれらを十分に評価せず、使用から除外します。石油など、私たちが依存しているいくつかの資源の不足が近づいていることと、埋立地の廃棄物によって引き起こされる問題に対する理解の高まりが相まって、天然資源の使用方法と再使用方法に関するイノベーションが推進されています。しかし、特に気候変動の状況において、この不足がイノベーションを十分な速度で推進しているかどうかは、別の問題です。

ときに、廃棄物に関するイノベーションの推進要因は、不足とは関係なく、逆の場合もあります。 Eoin Sharkey 氏の会社、 BioFactory は、発展途上国の不衛生なトイレ設備が引き起こす健康問題の解決に取り組んでいます。

BioFactoryはアフリカの難民キャンプや農村部で使用できる衛生問題に関するソリューションを開発しています。この一体型の仮設トイレと廃棄物処理プラントでは、人間の排泄物を調理用油や土壌調整剤に転換するバイオ消化を使用します。(写真:The BioFactory提供)

「基本的な汲み取り式トイレは、病原菌が増殖するための理想的な環境です。それらは、掃除が非常に難しく、放置されて地下水源に溢れ出すことがよくあり、あらゆる種類の問題を引き起こします」とSharkey 氏は述べます。「しかし、私たちは、トイレの建設費と維持費の高さが大きな問題であることを発見しました。」

この問題を解決するために、Sharkey 氏は昨年、ある種のバイオ消化を利用して排泄物を燃料(バイオガス)に変換するトイレシステムの設計に時間を費やしました。これを行うプロセスは新しいものではありませんが、経済的に実行可能にすることは常に困難でした。

「衛生に関する問題は、大抵ビジネスの問題であり、テクノロジーの問題ではありません。他の多くの公衆衛生会社が廃棄物を収集し、それを廃棄物処理所に配送し、それらの副産物を作り、ユーザーに販売しています。そこで、私たちは全てを1 か所で行う共同トイレと廃棄物処理システムを構築しました。」

アフリカの人々の80 パーセントが燃料として使用している木炭の一部をバイオガスに置き換えることにより、 BioFactory のシステムは、肺炎や肺癌など、木炭の煙が原因となる健康問題のいくつかを解消するのに役立っています。また、持続可能な代替燃料源を提供することで、このシステムは多くのアフリカ諸国を脅かす森林破壊を防ぐのにも役立ちます。

「私たちはモザンビークでパイロットプロジェクトを立ち上げ、現在基本設備にアクセスできない150 〜 250 名の人々にトイレを提供しています。このプロジェクトを通じて、バイオガスを、木炭と同量のエネルギーを同価格で提供できるようになります。私たちは最初にこれを学校で試用します。」

リサイクルプロセスによる排出量の削減、以前は無価値だった材料から価値あるものを創出すること、または、廃棄物を埋め立て地から転用するという経済的に実行可能な方法の発見に至るまで、廃棄物に関するイノベーションが世界中で起こっていることは明らかです。しかし、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change 、 IPCC )の最新の報告書は、廃棄物に関して無駄な時間を費やす余裕がないことを示しています。世界的に私たちの行動を変える必要があります。私たちは全ての廃棄物に関して資源を再利用する機会を逃したものとして見なす必要があります。

エレンマッカーサー財団の創設者であり世界的な船員であるDame Ellen MacArthur 氏 は次のように述べています。「私たちはこれまで懸命に前進してきましたが、これからはもっと懸命に前に進む努力をしなければなりません。なぜなら、循環経済のチャンスがそこにあり、実際に実現するのを待っているからです。それを実現するかどうかは私たち次第です。」

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