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WIPO PROOFの紹介:フランシス・ガリ事務局長へのインタビュー

2020年6月

(写真:WIPO)
「WIPO PROOFは、知的財産保護をデジタルの世界
へとさらに前進させるものであり、重要な進展です。」
とフランシス・ガリWIPO事務局長は述べています。

2020年5月、WIPOは革新的かつ創造的資産の管理に関して事業を支援するため、当機関による一連のサービスの最新版となるWIPO PROOFの提供を開始しました。フランシス・ガリWIPO事務局長が、新しいサービスについて紹介し、デジタル経済において、同サービスがイノベーターやクリエーターをどのように支援するかについて説明します。また、事務局長は、データガバナンスに関する広範な課題、そして、現在の経済的課題および健康面の課題への取り組みにおけるイノベーションと創造性の重要性について考察します。

WIPO PROOFとは?

実際のところ、WIPO PROOFはデジタル公証人のようなものです。これは、特定の時点におけるデジタルファイルの存在という反論の余地のない証拠を提供します。デジタルビジネス環境では、データを保護する必要があり、WIPO PROOFがそれを支援します。デジタルビジネスは、情報やデータの紛失や盗難などに対して脆弱です。WIPO PROOFは、特定の時点にデジタルファイルが存在するという、信頼性のある改ざん防止の証拠を提供することにより、この脆弱性に対処します。WIPO PROOFは、ファイルのデジタル指紋を作成し、その記録にタイムスタンプを追加します。データファイルがこのように正式に文書化されると、第三者がデータファイルを盗んだり、後でそれらの所有権を主張したりすることが困難になります。また、この証明はライセンス契約の確保や資本調達においても重要になります。

WIPO PROOFにより、作品、製品、研究プロジェクトなどの開発に貢献した人々は自らが参加したことを証明することもできるようになります。デジタルの世界には、多くのコラボレーションや無数のデータファイルの共有を伴う数え切れないほどの創造的、技術的、科学的なベンチャーがあります。例えば、多くのミュージシャンは、世界各地のアーティストとコラボレーションして、音楽を録音しています。1人はボーカルを録音し、楽器のパートを追加する別の人にデジタルファイルを送信するなど、様々なコラボレーションが行われています。WIPO PROOFを使用することで、アーティストはその音楽に対する自身の貢献を証明することができます。そのような証拠により、デジタルファイルが所有者であると主張する人物によって創出されたものであることを示すことが可能となります。これはイノベーションと創造性に携わる多くの個人、企業、組織にとって非常に重要なものです。

ビデオ:WIPO PROOFの紹介

なぜWIPO PROOF がデジタルの世界にとって重要なのですか?

WIPO PROOFは、知的財産保護をデジタルの世界へとさらに前進させるものであり、重要な進展です。現在、経済は工業化からデジタル化への大きな転換期を迎えています。ほとんどの知的財産権は工業時代のために開発されました。統計が示すように、例えば、デジタル通信や情報技術などに関連する特許出願が多数行われていますが、従来の知的財産権は、必ずしも全ての種類の知的財産、特にデータの保護に関してはカバーしているわけではありません。そのため、WIPO PROOFは、デジタル経済のニーズに合わせた知的財産サービスを提供する上で、小さな、しかし重要な一歩となることを意味しています。

実際のところ、WIPO PROOFはデジタル公証人のようなものです。これは、特定の時点におけるデジタルファイルの存在という反論の余地のない証拠を証明します。

フランシス・ガリ WIPO事務局長

同様のサービスは既に利用可能ですか?

はい、可能です。特定の国では、同様のサービスは国内レベルで存在しますが、当機関の市場調査では、信頼できる公平な国際機関によるそのようなサービスの提供が必要とされていることが明らかになっています。世界各地で知的財産を取り巻く競争が激化していることは、この必要性を強調しています。そのため、WIPOはWIPO PROOFの開発を進めました。例えば、貿易または技術の分野で緊張状態にある2つの異なる国の2つの企業が法廷闘争に臨んでいるシナリオを想像してみてください。A国の企業が、自国で取得した日付の付いた指紋のあるデジタルファイルの形式で証拠をB国の裁判所に提出した場合、それは公正な国際機関によって提供されたものと同じ効力を持つ証拠として見なされない可能性があります。

WIPO PROOFは他にはどのような方法でイノベーターやクリエイターをサポートしますか?

WIPO PROOFは、知的財産権が正式な権利化前の期間におけるイノベーターやクリエイターのニーズにも対応しており、最終的に正式な知的財産権になるかどうかに関わらず、コンセプトから商品化までのあらゆる段階で知的資産を保護するのに役立ちます。特許性のある発明または創造的作品を成熟させるには多くの作業を先行させる必要がありますが、その開発段階ではイノベーターやクリエイター、そして、実際にスタートアップ企業は全く保護されません。この段階で、多くの企業がベンチャーキャピタリストや大企業などの様々な関係者にアイデアを売り込み、製品を市場に投入するために必要な財政的支援を確保しようと試みます。そのような活動は、多くの場合、機密保持契約によって管理されていますが、多くの中小企業、新興企業、個人には、そのような契約を効果的に締結するための法的助言がありません。しかし、WIPO PROOFを使用すると、彼らは知的資産の存在を文書化することができ、それによって、彼らが特定の時点で自分のアイデアやコンセプトを管理した、または作品の開発に貢献したという、動かぬ証拠を確保できます。

WIPO PROOFは、データが価値を持ち、広く共有されているデジタル化された世界において、デジタルファイル形式でデータが存在することを証明することが非常に重要になる可能性があることを認めています。

フランシス・ガリ WIPO事務局長

このサービスを運営する上で、WIPOの役割とは何ですか?

WIPOは信頼できる機関として機能し、運営費用を賄うために手頃な料金でユーザーフレンドリーなサービスを提供します。最小限の費用で、世界のどこにいても、個々のイノベーター、クリエイター、スタートアップ企業は、特定の時点における作業記録を確立できます。 WIPO PROOF website を介してサービスにアクセスし、数回クリックするだけで、ファイルのWIPO PROOFトークン(タイムスタンプ付きのデジタル指紋)を作成でき、必要に応じて、所定の時間における作品の存在を証明することができます。この方法で発行されたWIPO PROOFトークンは無期限に有効です。

このサービスは、業界標準の強固な公開鍵インフラと暗号化テクノロジーを使用して、最高の国際基準に基づいて構築されており、世界中の小規模なプレーヤーを支持するビジネスモデルと、世界的な知的財産サービスの信頼できるプロバイダーとしてのWIPOの信頼性に支えられています。

WIPO PROOFは、データセットを含むデジタルファイルをあらゆる形式とサイズで取り扱います。WIPOは元のファイルをコピーしたり、保存したりしません。元のファイルは、サービスのユーザーが自分のデバイスで保管します。WIPOは単に、ファイルがある形式で存在し、ユーザーが特定の時間にそのファイルを所有していたことを証明するだけです。

WIPO PROOFの仕組みpdf.

なぜ今サービスを開始したのですか?

私たちは長年、正式に知的財産権となる前段階で行われる膨大な量の活動に対して、また、実際には非常に貴重なビジネス資産でありながら、登録された権利の形で知的財産保護を受けていない企業秘密に対して、より良い保護を提供する必要性について考えてきました。WIPO PROOFはそれを可能にします。イノベーションと経済パフォーマンスの推進において非常に重要な役割を果たす中小企業やスタートアップ企業ですが、彼らにとって、正式に知的財産権となる前段階にある資産と企業秘密は特に脆弱な領域です。商取引と経済活動のデジタル化が進むにつれて、WIPO PROOFは革新的かつ創造的な個人や企業に、知的資産を管理および保護するための追加的ツールを提供します。

これまでの反応はいかがですか?

全ての証拠は、WIPO PROOFを立ち上げたことが正しかったことを示しています。わずか2週間で、世界中の様々な国のユーザーがこのサービスを利用しました。これは、WIPO PROOFが満たされていなかったニーズを満たし、人々が適切な状況で利用できる有用なサービスを提供していることを示しています。非常に良く受け入れられると思います。

WIPO PROOFは革新的かつ創造的な個人や企業に、知的資産を管理および保護するための追加的ツールを提供します。

フランシス・ガリ WIPO事務局長

WIPO PROOFは、イノベーションと創造性の世界的な展望にどのような影響を与えるでしょうか?

WIPO PROOFは、データが価値を持ち、広く共有されているデジタル化された世界において、デジタルファイル形式でデータが存在することを証明することが非常に重要になる可能性があることを認めています。WIPO PROOFは、デジタル化された世界でイノベーションと創造性を育むために、産業時代に構築された既存のインセンティブ構造を適応させるプロセスに、小さいながらも重要な貢献をします。もちろん、古典的なメカニズムの多くはまだ今でも適用されていますが、ギャップがあります。データの保護はそのようなギャップの1つであり、WIPO PROOFがそのギャップに対応しています。

4月の「Road to Bern Second Dialogue: on Data Protection」では、データ保護のための包括的で首尾一貫した枠組みの必要性について話されていました。WIPO PROOFはそのような枠組みを作成するためのステップですか?

包括的なデータガバナンスの枠組みの必要性は、グローバル化と相互接続によって築かれた現在のガバナンスアーキテクチャの圧倒的な複雑さを示しています。一人の当事者が共同作業なしに複雑な問題を調整することはできません。経済および社会システム全体に不可欠なデータ保護についても同様です。データは多面的であり、社会的および経済的に非常に重要で価値のあるものもあれば、個人的に非常に重要で価値が高いものもあります。また、データの効果的な保護には、多くの異なる主体と政策アプローチの間の調整が必要です。そのような巨大な世界で、WIPO PROOFは、データのセキュリティと機密性の確保を支援するために、小さいながらも意味のある貢献をします。

WIPO PROOFはWIPOの世界的な知的財産制度とサービスをどのように補完しますか?

WIPOの目的は、イノベーションと文化的創造性のための完全なビジネスサービス一式を提供することです。特許(特許協力条約)、商標(マドリッド制度)、意匠(ハーグ制度)、地理的表示(リスボン制度)の国際出願および登録制度は、このサービスのうち、従来から存在している中心要素です。過去10年間、これらのサービスの世界的な利用が増加しており(図1を参照)、その需要は世界の経済成長率を上回っています。これはイノベーション産業およびクリエイティブ産業の商業的成功を示す指標です。

図1:過去10年間のWIPOの知的財産サービスの成長

サービス 2009 2019 10年間の成長率
PCT (特許) 155,408 265,800 71.0%
マドリッド制度 (商標) 36,094 64,400 78.4%
ハーグ制度 (意匠) 8,166 21,807 167.0%

出典:WIPOプレスリリース、PR/2020/848

1994年には、紛争解決サービスをWIPOのサービスに追加しました。市場で事業を展開している革新的な企業の場合、最初に保護が必要ですが、次に、知的財産権の悪用に起因する紛争を公平かつ信頼できる方法で解決できるようにする必要があります。近年、仲裁および調停サービスの利用が大幅に増加しています(図2を参照)。そして、現在、進行中のデジタル変革への対応として、WIPOはWIPO PROOFを使用して、デジタルビジネスやその他の関係者がデジタル環境で知的資産を保護するのに役立つ新しいサービスを提供しています。

図2:WIPOドメイン名事件およびドメイン名の数

事件数 ドメイン名数
2000 1,857 3,760
2001 1,557 2,465
2002 1,207 2,042
2003 1,100 1,774
2004 1,176 2,599
2005 1,456 3,312
2006 1,824 2,806
2007 2,156 3,545
2008 2,329 3,958
2009 2,107 4,685
2010 2,696 4,367
2011 2,764 4,780
2012 1,207 5,080
2013 2,585 6,191
2014 2,634 5,603
2015 2,754 4,364
2016 3,036 5,354
2017 3,074 6,371
2018 3,447 5,655
2019 3,693 6,298

出典:WIPO プレスリリース、PR/2020/848(別紙9)

世界が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に取り組み続け、経済不況に直面しているとき、政府や企業がイノベーションへの投資を続けることがなぜ重要なのでしょうか?

大まかに言えば、この危機から脱出し、新しく効果的なワクチンと治療法を手に入れたいのであれば、イノベーションが必要となります。イノベーションは、危機の科学的、技術的、そして健康面における管理の基本です。また、イノベーションはパンデミックを抑制するために政府が取ってきた必要な措置によって引き起こされた景気後退から回復するための基盤となります。

しかし、そのようなイノベーションはどのようにして生まれるのでしょうか?

これは、教育者や教育システム全体からベンチャーキャピタリストや金融業者まで、多数の機関や当事者が関与する非常に複雑なプロセスです。また、国際的な側面もあります。ユネスコは、世界の研究開発の約70%が民間部門によって、30%が公的部門によって資金提供および実施されていると推定しています。知的財産制度は、イノベーション環境全体で様々なプレーヤーを結びつける接着剤であり、知的生産、イノベーション、創造性に安全に投資できる自信と、市場でのポジションを悪用または不正流用から保護されるという安心を提供します。そして現在の危機では、考慮すべき追加的側面があります。すなわち、医療技術によって提起される基本的な人道的配慮です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような国際的な緊急事態に対処する場合、適切な状況かつ無理のない条件で必要な医療技術にアクセスできるようにする枠組みがすでに国際レベルおよび国内レベルで存在しています。現在、ワクチン、治療薬、接触追跡アプリケーションなどの開発に対する官民の両部門による莫大な投資が見られます。したがって、必要なイノベーションを促進することは、人類が直面するグローバルな経済的および健康面での課題に対する解決策を開発するために、全体としてのイノベーション環境の複雑さに取り組み、官民の全てのプレーヤーと関わることを意味します。単純化したアプローチは脆く、機能しません。

WIPO Magazineは知的財産権およびWIPOの活動への一般の理解を広めることを意図しているもので、WIPOの公的文書ではありません。本書で用いられている表記および記述は、国・領土・地域もしくは当局の法的地位、または国・地域の境界に関してWIPOの見解を示すものではありません。本書は、WIPO加盟国またはWIPO事務局の見解を反映するものではありません。特定の企業またはメーカーの製品に関する記述は、記述されていない類似企業または製品に優先して、WIPOがそれらを推奨していることを意図するものではありません。