バイドゥの人工知能(AI)ベーステクノロジー:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘い
著者Victor Liang(バイドゥグループ シニア・バイス・プレジデント兼相談役)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは公衆衛生に深刻な脅威をもたらし、世界中の国々に大きな経済的課題をもたらしています。
この進行中の医療危機において国が直面する最も重要な3つの課題は、次のとおりです。第一に、混雑した場所での交差感染を防ぐために、症状のある人々を効果的かつタイムリーにスクリーニングする方法。第二に、ウイルスの急速な蔓延の中で、限られた医療資源に向き合いながらも、患者が迅速かつ適切な治療を受けられるようにする方法。これに関連して、医学研究の速度を上げる方法と、高品質で正確な情報を一般に公開する方法に関する課題があります。第三に、ウイルスの被害が最も大きい地域での労働力不足を解決し、在宅勤務が指示されている間、社会が比較的安全に活動し続けることを保証する方法です。
これらの課題に対応するため、バイドゥは人工知能(AI)と関連する技術と製品に関する専門知識を迅速に適用し、パンデミックを予防および制御するための最前線の取り組みをサポートしてきました。現在の健康危機に迅速に対応するバイドゥの能力は、最先端の研究開発への長年にわたる投資によって実現されています。バイドゥの実質的なAIの特許ポートフォリオは、バイドゥの研究開発努力の質と範囲の広さを証明しています。以下の例に示されているように、バイドゥはこれらの特許取得済みのAIテクノロジーを使用して、今日の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いに関する社会の緊急ニーズに対応できることを誇りに思っています。
スクリーニングの課題を克服する
社会を安全に再開するには、正確で効率的なスクリーニングが不可欠です。スクリーニングを支援するために、バイドゥは、人間の体温を迅速かつ簡単に監視するAIベースの体温計測システムを開発し、導入してきました。このシステムは、鉄道駅や地下鉄駅などの交通ハブに迅速に配備され、効果的な感染の流行防止技術となっています。
バイドゥは、2016年以来、AI体温計測システムなどの技術に関するAIの特許ポートフォリオを構築してきました。当社は現在、この分野で100件を超える特許出願を行っています。バイドゥは、人工機能温度検出技術をさらに開発および最適化することにより、この分野で革新を続けています。例えば、バイドゥは他の技術の中でも特に、マスクを着用している人の赤外線体温計測のための新しいイノベーションを開発しています。
バイドゥのAI赤外線ビジョンテクノロジーは、交通量の多い密集した地域で多数の人々の体温をいかに迅速に検出するかという課題の解決に役立ちます。このシステムは人との接触を必要としないため、群衆を迅速にスクリーニングして、一般市民への混乱を最小限に抑えた状態で、検出効率と精度を向上させることができます。重要な点は、人々を安全な距離に保ちながら検温できるため、交差感染のリスクを減らせるということです。
2020年3月、ウイルスが世界中に拡散し始めたため、多くの国で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に取り組むためのテクノロジーの需要が日々増加し始めました。バイドゥがこの病気に取り組むための製品開発と展開を行い、中国での普及に成功したことはすぐに評価され、国際的に大きな注目を集めました。バイドゥのAIベースのテクノロジーの多くは現在海外に輸出されており、当社は世界的なパンデミックとの闘いにおいて重要な役割を果たすことができています。その結果、当社はより包括的な国際特許戦略を採用して、製品と技術のグローバル市場への移転を促進しています。
バイドゥはAIとそれに関連する技術と製品に関する専門知識を迅速に適用し、パンデミックを予防および制御するための最前線の取り組みをサポートしてきました。
迅速なアクセス治療の確保
バイドゥは、2018年以来「AI + Medical」に関連する特許ポートフォリオを構築しており、このイノベーション分野に引き続き注力しています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いにおいて、AI + Medicalは世界中のウイルスの予防と制御において積極的な役割を果たしてきました。
感染が発生して以来、オンラインでの相談に対する一般の方々からの需要が急増しています。中国の病院では、当社の“Smart Consulting Assistant”を使用して、医師がオンラインで迅速な診断と治療を開始できるよう支援しています。このように医療相談の効率が上がると、医療資源にかかる負担が大幅に軽減されます。
バイドゥは、オンライン健康相談プラットフォーム、公的疾患の予防と管理プラットフォーム、オンライン病院などへの無料のAPIインターフェースも提供しています。これらのプラットフォームを通じて、一般のプラットフォーム利用者との直接的なインターフェースを提供し、その方々の質問への回答、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する一般情報、コンサルティングを提供します。このツールを使用すると、1日あたり数万人の利用者にサービスを提供できるため、効率が指数関数的に向上します。
バイドゥはまた、コロナウイルス関連肺炎の診断で重要な役割を果たすCT画像の分野でその技術を活用しています。CT画像の従来の手動検査では、高度な訓練を受けた専門家による多大な作業が必要となります。コロナウイルスのために必要とされているCTスクリーニングの需要増加をサポートするために、PaddlePaddleというバイドゥのオープンソース深層学習プラットフォームを使用し、LinkingMed(北京に拠点を置く腫瘍学データプラットフォームおよび医療データ分析会社)と提携して肺炎CT画像解析用オープンソースAIモデルを開発しました。これは現在、中国の病院で使用されています。オープンソースプラットフォームは、医療分野全体における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の臨床研究や臨床製品の研究開発をサポートするためにも使用されています。
進行中の世界的な医療危機の深刻さを考慮して、バイドゥは最近公開されたOverseas Anti-Epidemic Philanthropic Programの専門プラットフォームの開発に高度な技術的能力、専門知識、リソースを十分に活用してきました。このプログラムは、4つの主要なサービスを提供します。オンライン医療相談、心理相談、専門家によるライブストリーミング、海外ユーザー向けの保護ツールです。これまでのところ、このプログラムは100か国以上の40万人を超える海外ユーザーにオンラインコンサルティングサービスを提供しています。「バイドゥが提供するテクノロジーとプラットフォームに感謝しています。バイドゥは、新型コロナウイルスとの闘いにおいて、高水準の専門家とのコミュニケーションを提供する強力な推進者になりました。」とCarlos Larrea在中国エクアドル大使は述べています。
バイドゥのテクノロジーは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療法の模索にも重要な貢献を果たしています。Baidu Researchが米国のオレゴン州立大学およびロチェスター大学と共同で開発したLinearDesignアルゴリズムは、mRNAワクチン会社が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの設計を加速し、最適化するために利用されています。バイドゥは、このアルゴリズムへの簡単かつ無料でのアクセスを提供するために、ウェブサービスであるLinearDesign Webserverも提供しています。このアルゴリズムは、野生型配列またはランダムに生成された設計と比較して、はるかに安定性の高いmRNA配列を設計するのに16分しかかかりません。
上記の例のように、バイドゥはAI + Medical関連の特許製品とサービスを公的機関が利用できるようにしており、疾患の検出、補助的な診断と治療、公的感染症の流行の予防と管理に貢献しています。
労働力不足の管理
人々の生活の中である種の正常性を維持しようとする動きの中で、自律型サービスの需要が高まっています。バイドゥのApollo低速自動運転車は、そのようなテクノロジーの典型的な例です。
当社は、完全な低速無人マイクロカーキットと自動運転クラウドサービスを備えたApolloオープンソース自動運転プラットフォームを、コロナウイルスと戦う最前線の企業に提供しました。Apolloプラットフォームにより、提携企業は消毒機能付きの車両を迅速に開発および普及できるようになるため、現場の労働者をサポートするのに役立ちます。
これらの製品とサービスは、バイドゥの特許取得済み自動運転発明のポートフォリオによって支えられていて、自律型物流車両とクラウドコンピューティング技術の分野における複数の中核となる特許が含まれます。バイドゥは、これらの特許技術とサービスを、Neolix、Idriverplus、Jinlong Bus、Qingdao Wuniu Technology、Zhongke Huiyanなどの多くのパートナーと自主的に共有しています。 そうすることで、その目的は、医療車両の消毒、食事の配達、コロナウイルスのリアルタイム監視など、人と接触しない自律的なサービスを提供することです。バイドゥはこれらのコラボレーションを通じて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延拡大との闘いへの貢献をさらに強化することができました。
緊急の社会的ニーズへの対応
バイドゥの主要なAI関連技術の進歩と特許取得済みの技術、そして、これらの技術を共有および展開して提携企業と協力するという取り組みにより、当社はパンデミック時に社会の緊急ニーズの一部に対処するのに役立つことができました。
数百の特許技術と新しい画期的な技術の特許出願が、このパンデミックとの闘いに一役買っています。また、AI分野における技術イノベーションと社会におけるAIベースのテクノロジーの導入と展開もサポートしています。
バイドゥの「イノベーション遺伝子」
バイドゥの遺伝子にはイノベーションが備わっています。中国で最も有名なインターネット企業であり、AI研究の先駆者です。そのため、バイドゥは、AI技術を開発する際に知的財産を常に重視してきました。バイドゥは、独自の特許ポートフォリオを持ち、提携企業とのライセンス契約により、繁栄しているAIイノベーションエコシステムを構築しています。
積極的な特許分析と将来を見据えた特許ポートフォリオ管理を通じて、バイドゥはAIの分野における専門知識と競争上の優位性を実証しました。2010年のAI分野への最初の進出から2013年の深層学習研究所の設立に至るまで、バイドゥは保有するAI関連特許の数とその出願数において、中国の主要企業の1つになりました。
昨年、AIに関するWIPOテクノロジートレンド2019年のレポート(WIPO Technology Trends 2019 – Artificial Intelligence)では、深層学習の分野における特許出願の数で、バイドゥは世界第2位にランクされました。また、2019年12月に中国国家産業情報セキュリティ開発研究センターによって発表されたAI中国特許技術分析レポートでは、バイドゥは5,712件の国内特許出願で、中国で第1位にランクされました。
バイドゥは、特許ポートフォリオの蓄積と拡大に注力することに加えて、特許の質の向上にも細心の注意を払ってきました。バイドゥでドラフトした特許は全て、会社にとって高い価値をもたらすほどの技術的な深さを持つものであるか否かを慎重に評価しています。2019年12月、バイドゥは、中国知的財産出版が発行した中国AI特許の価値および競争力レポートで第1位にランクされました。このレポートでは、特許出願の数と、会社の特許の価値と競争上の優位性が測定されました。バイドゥが量と質の両方を重視していることは、現在広く認識されています。
知的財産に支えられたパートナーシップの拡大するネットワーク
バイドゥの拡大するビジネスコラボレーションのネットワークは、当社のAI関連の広範な特許ポートフォリオによっても支えられています。特許ライセンスに関して、バイドゥは常に、生態学的に健全で繁栄した持続可能な社会を構築するという精神のもと、国内外の提携企業と協力するというオープンな姿勢を維持してきました。AIテクノロジーを業界全体で統合することで、革新的なAIアルゴリズムやAIテクノロジーの応用など、特許保護のための新しい多様な分野が生まれました。バイドゥは、高品質の特許を多数取得した経験に基づいて、AI特許を使用して、提携企業がAIテクノロジーを迅速に実装し、産業界全体でその使用を促進する支援ができるようになりました。
2015年、バイドゥは20社以上の主要企業を集め、特許ライセンスを通じて提携企業に力を与えるために、AIをベースとした音声に関する知的財産産業アライアンスを結成しました。2019年には、バイドゥとHaierは、知的財産協力協定を結び、AIとモノのインターネット(IoT)の分野で国境を越えた協力を実施し、相互の特許ライセンスを通じて双方の優位性を共有し、「AI + IoT」スマートホームの導入の追求を進めています。バイドゥは、近い将来に繁栄するAIエコシステムの開発をサポートするために、このようなコラボレーションをさらに模索します。
このパンデミックの過程で、バイドゥは会社の社会的責任(CSR)を果たし、そのノウハウと技術リソースを公共の福祉に充ててきました。当社はその強みを利用してコロナウイルスとの闘いを支援し、行動を通じて企業市民としての責任と説明責任を果してきました。科学研究機関や医療機関などの公的機関に特許関連の製品やサービスを提供しています。そして、連帯の精神で、バイドゥは社会全体と協力し、感染を防ぎ、最終的に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を阻止するためにパートナーと協力しています。
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