WIPO初ユース・アンバサダーの紹介:Santiago Mena López
Natalie Humsi, WIPO Academy
受賞作家であるSantiago Mena López氏は、WIPO初の知的財産ユースアンバサダーです。ペルーの最年少作家として認められた彼は、14歳で第一作「Encogidos(The Shrunken)」を出版しました。Mena López氏は知的財産ユース・アンバサダーとしてWIPOアカデミーのIP4Youth&Teachersプロジェクトのもと、中南米およびカリブ海地域の若者の知的所有権教育の促進をサポートします。若い作家である彼が、自身の小説、そして、クリエイターにとっての知的財産の重要性と若者の間で知的財産に対する認識を高める必要性についての見解を紹介します。
小説を書き始めたきっかけは何ですか?
頭の中で展開しているアイデアやストーリーを通して、自分の世界観を共有したいという強い思いから書き始めました。また、私のような若い人たちにももっと読んでもらいたいと思っています。
創造的なアイデアはどこから得ていますか?
日常生活で見たり、経験したりすることが私にインスピレーションを与えます。ニュース、人々の話、家族や友人との会話から創造的なアイデアを得ています。私の物語には常にメッセージがあります。そのメッセージを中心にストーリーラインを構築する場合と、ストーリーラインからメッセージが出来上がる場合があります。
「Encogidos」について教えてください。この物語を書くようになったきっかけは何ですか?
私の最初の小説「Encogidos」を書くにあたっては、読んだ小説やテレビシリーズ、映画のストーリーからインスピレーションを得ていました。そのようにして、SF的な中編小説を書きたいというアイデアが形になっていきました。さまざまな独特なキャラクターが固定観念を打ち破り、それぞれの個性を豊かにする物語を作りたいと思っていました。
文学は時間の金庫です。本、短編小説、中編小説、詩は、私たちが貴重で保存に値すると考える経験や考えを保存する場所です。」
「Encogidos」は、人付き合いが苦手なオタクな少年であり、学校で仲間のグループにいじめられている、ルーカスという名の少年の物語です。ルーカスは、いじめっ子に立ち向かおうとして自分自身を仲間よりも大きく、強くするための化学式の作成に取り掛かります。しかし、彼の実験は失敗し、彼はいじめっ子と自分自身の両方を小さくしてしまいます。この物語は、身長がわずか2ミリとなった彼らの人生経験、そして、彼らがどのようにお互いの違いを克服し、知恵を合わせて通常のサイズに戻る方法を見つけるかを描いています。
本はあなたにとって何を表していますか?
文学は時間の金庫です。本、短編小説、中編小説、詩は、私たちが貴重で保存に値すると考える経験や考えを保存する場所です。考えや経験を書き留めることで、作品や作品を表現するために使用される美しい言葉に魅了されたいと願うすべての人々のための知識の源となります。本は、著者の心への入り口、別の時代への架け橋を提供します。読書は、知識を習得し、収集するために何年もかかった経験を数時間で探索することができる素晴らしい手段です。諺にもこう表現されています。「読書家は死ぬ前に千人の人生を生きている…本を全く読まない人は一人の人生しか生きられない。」
あなたにとって創造性とは何を意味し、なぜそれが重要だと思いますか?
私にとって、創造性とは、人類が過去の知識を取り出し、全く新しい方法でその知識と向き合うことです。私たちが過去から学んだことに基づいて新しいアイデアを構築する能力です。創造性は人間性の本質と結びついています。より深刻な問題に関する批判的思考や考察は、創造性なしには不可能です。創造性は人類の進歩にとって極めて重要なものなのです。
IP4Youth&Teachersプログラムについて
IP4Youth&Teachersは、WIPO Academyが2018年に開始した教育プログラムです。このプログラムは、特許、著作権、商標などのトピックを対象としており、インタラクティブで遊びながら学ぶことのできるゲームを通じて、学生と教師が知的財産について学ぶことをサポートします。このソリューション指向のプログラムは、学生の才能とグループワークの構築に重点を置いており、創造性、創意工夫、起業家精神を育むという観点から知的財産教育に取り組んでいます。
IP4Youthオンラインコースは、4歳から17歳までの子供を対象としています。IP4Teachersトレーニングコースと教育ガイドは、教育カリキュラムの開発と教育政策の実施を担当する教育省の教育者と政策立案者の作業をサポートするように設計されています。IP4Teachersには、教育者、教育の分野で働く政策立案者、および知財庁間の対話を構築するための年に1回の対面トレーニングコースも含まれています。
好きな本や作家について教えてください。
現在、私のお気に入りの本は、Matt Haig著の「The Humans」です。美しい物語です。著者は、さまざまなサイエンスフィクションの手法を使用して、部外者の視点から人間と社会の生活を分析し、その矛盾や欠陥について概説していますが、とりわけ、その成功と美しさを強調しています。主人公と同じように、読者は人間性に恋をするでしょう。
これまでで一番好きな本を選ぶことはできませんが、私の好きな作家はJulio Ramón RibeyroとGabriel García Márquezです。Julio Ramón Ribeyroは、短編小説の執筆に関して、他に類を見ないスキルを持っています。彼の作品は生々しく没入感があり、皮肉や隠された意味、象徴性に満ちています。彼はまた、ペルー社会が直面している現実の問題にも取り組んでいます。Gabriel García Márquezは、魔法と伝統主義に満ちた魅力的な物語と、読者を挑発し、刺激する不連続な物語であるところに魅了されています。彼の作品は、ラテンアメリカ社会の厳しいテーマを探求しており、信じられないほどの説得力があります。
若い作家であるあなたにとって著作権が重要なのはなぜですか?
著作権は、創造した作品を保護し、認識する方法です。若い作家にとって、多くの労力を費やした創造活動の結果としての自身の作品に価値を付加し、守ることを可能にするために不可欠なツールです。著作権は、新しい作品を作成する際の重要な要素です。著作権により、著者の努力が認められ、著者に報酬が与えられます。また、興味のある人なら誰でも彼らの作品を読めるようになることが保証されます。
小説を出版した経験から、知的財産について何を学びましたか?
私は著作権の多大な重要性とそれに伴うあらゆることを学びました。私のような作家にとって、作品が認められ、評価され、新しい作品の創作に時間とエネルギーを費やし続けることができるようにすることは非常に重要です。
若者たちは知的財産とその潜在的な利点について十分に知っていると思いますか?
いいえ、残念ながら、知的財産を扱う若者向けの教育プログラムはほとんどありません。そして、これが意味するのは、文化的景観を豊かにする新しい物語や知識を生み出す能力や、そうすることで生計を立てる若者の能力を鍛えるための多くの貴重な機会を失っているということです。
若者たちに知的財産についてさらに知ってもらうためには、何をする必要があると思いますか?
若者たちが自分の作品を公開し、宣伝し、自分の仕事を認めてもらうために、もっと多くのスペースを作る必要があります。そして、知的財産は学校のカリキュラムの重要な柱と見なされるべきです。知的財産の重要性と価値について概要を説明する授業を学校で行うことが、若者たちの間で知的財産という主題に対する真の関心を育み、彼らがそれを最大限に活用できるようにする唯一の方法です。
創造性は人間性の本質と結びついています。より深刻な問題に関する批判的思考や考察は、創造性なしには不可能です。創造性は人類の進歩にとって極めて重要なものなのです。
小説の執筆や出版を始める前に、何を知っていたらよかったと思いますか?
私は間違いなく、著作権と知的財産全般についてもっと知識を持っていればよかったと思います。もっと知識があれば、自分の創造的な作品の価値をより高めることができ、さらに、その価値を保護して最大限に活用することが容易にできただろうと思います。
あなたの好きな教科は何ですか?それはあなたが作家になる上で役立ちましたか?
私の好きな教科は歴史ですが、必ずしも私が作家になるのに役立ったわけではありません。私が作家になるのに役立ったのは、スペイン語とスペイン文学の研究でした。執筆過程のある時点で多くの先生方から受けたサポートは不可欠であり、先生方にはずっと感謝しています。
あなたのような若い創造的な人達を励ますために、教師たちは何ができるでしょうか?
教師が生徒に創造的になるための基礎や創造性を発揮するためのスペースを与えることが非常に重要だと思います。教師は、生徒の興味を育み、学習を支援する上で重要な役割を果たすことができます。言葉にするのは簡単ですが、教師が実行できるようにサポートするためのガイドラインがなければ、こうしたことを達成するのは非常に困難です。生徒の創造性を高めることに成功した教師は間違いなく最高の教師であり、非常に貴重です。そのような教師と素晴らしい絆を築くことで、生徒は教師のことを一生忘れないでしょう。生徒や彼らの学業を真剣に受け止めている教師ほど価値のあるものはありません。
知的財産の重要性と価値について概要を説明する授業を学校で行うことが、若者たちの間で知的財産という主題に対する真の関心を育み、彼らがそれを最大限に活用できるようにする唯一の方法です。
次のプロジェクトは何ですか?
短編小説や詩を書き続け、新しい本を書き始めるつもりです。
あなたのような創造的な若者に、アドバイスはありますか?
まず、自分を信じてください。アイデア、芸術作品、物語、歌、詩、ダンスなど、表現が必要なものが頭の中にある場合は、それを表現し、それがどれほど価値のあるものか、それに関してあなたに何ができるかを認識する機会を自身に与えましょう。第二に、支援を求めてください。全て自分でやる必要はありません。あなたの可能性を発見し、あなたを改善し、成長させ、そして、あなたの目標達成をサポートするために、あなたを気にかけてくれる誰かが常にどこかにいます。そして第三に、あきらめないでください。過程に困難はつきものです。あなた自身とあなたが表現したいものの価値を信じてください。
あなたや他の若い作家をサポートするために、読者は何ができるでしょうか?
私たちの作品を読んでそれを共有し、私たちの知的財産権を尊重してください。それだけでも非常に大きなサポートになります。
今年の世界知的所有権の日キャンペーンはより環境に優しい未来のためのイノベーションをサポートする必要性を強調しました。若者は環境に優しい未来の構築にどのように貢献できると思いますか?
私たちの世代が救う未来を信じたいと思っています。若者が創造し、革新し、考え、決断するためのスペースが開かれることで、環境意識が浸透し、生命と地球の豊かさを守ることができるようになる未来を実現するには、イノベーション、創造性、知的財産が絶対に不可欠です。
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