水不足に取り組むトルクメン人発明者
R.A. Karliev(知的財産担当弁護士、トルクメニスタン アシガバード)
水は地球の表面の70%以上を覆っていますが、農業、工業、地方自治体のサービスを維持するために必要な淡水は、地球の水資源のほんの一部にすぎません。そのため、既存の淡水供給を使用する新しい方法を責任を持って開発し、新しい淡水源を探すことが不可欠です。
トルクメニスタンのような広大な乾燥地帯が広がる国では、土壌の塩分濃度の高さと深刻な淡水不足が農業開発を妨げています。ほとんどの作物は塩分を含んだ土壌に耐えることができません。塩分の高さは収穫量の低下や作物の不作に繋がります。また、淡水不足は農業生産のための新しい土壌を開発する取り組みの障害となります。トルクメニスタンでは、国土のわずか11.5%のみが農業開発に使用されています。水資源を最も効率的に使用してこそ、その領土の20%を耕作することが可能になります。
トルクメニスタンの灌漑地の最大80%は、地表から1〜2m下にある塩水地下水に近接しています。この深さになると、土壌は急速に塩水を含むようになります。水は土壌の毛細管現象により地表に上昇し、蒸発して土壌の内部および表面に塩分を残します。これが土壌の肥沃度の低下につながります。
トルクメニスタンでは、国土のわずか11.5%のみが農業開発に使用されています。
土壌の塩分はまた、湿気を好む雑草、昆虫、その他の害虫にとって好ましい環境を作り出します。トルクメニスタンでは、これらの課題は非常に頻発する地震によってますます解決が難しくなっています。これらの課題を克服するために、トルクメニスタンの発明者たちは、地下水位を下げ、土地を淡水化し、代替の淡水源を確保するためのさまざまな独創的な解決策を考案してきました。
土壌淡水化のための費用効果の高いツール
Gennady Galifanov氏やVictor Vavilov氏のような発明家は、住宅建設に使用された粘土レンガからの過剰な塩分が建物の外面を見苦しいものとし、風解として知られるプロセスが建物の壁の維持を困難にしていることに気づきました。これと同じ風解のプロセスが塩分を含んだ地下水源の上にある土地でも発生していました。
このプロセスに興味を持ったGennady Galifanov氏とVictor Vavilov氏は、この自然の塩化プロセスから脱塩を実現するためのツールの発見へと結びつけました。これにより彼らは土壌から塩を抽出すると同時に、凝縮のプロセスを通じて灌漑用の水を得るためのさまざまな技術装置を開発しました。約30年前の1988年から1989年に開発されたこの技術は、当時、特許と同じ法的効力を持っていたソ連の発明者証の第1547789号、第1634641号、第1638110号、第1654261号、第1761681号で保護されました。
発明者証について
発明者証はソビエト時代に存在していました。この証明書は、特許と同じ法的効力を持っていました。ただし、特許とは異なり、発明者証によって保護されている発明は国の所有物であり、発明者の許可なしに誰でも使用することができました。発明者または権利者は、発明によって生み出された年間収益のわずかな割合しか受け取ることができませんでした。
従来の土地の脱塩方法とは異なり、これらの装置は地表水から肥料や残留農薬を除去するための費用効果の高い解決手段を提供します。淡水化プロセスは従来の方法より80倍安く、灌漑用の水を採取する費用は従来の方法より5倍ほど安価になります。また、このプロセスでは1ヘクタールあたり最大13トンの乾燥塩と800㎥の淡水を採取することができます。
さまざまなパイロットプロジェクトを通じて、これらの発明が干拓に役立つ大きな可能性を秘めていることが実証されました。この技術は非常に単純です。地下水が地表から1.3〜2m下にある土地では、トレンチチェーン掘削機で10〜20mごとにスリット(幅20〜30 cm、深さ1〜1.7m)を入れます。そして、表面の水分の蒸発を減らすために各スリットの間の土地の帯をマルチで覆います。この技術により、水分は土壌の毛細管現象により垂直に移動した後、実質的に不純物を含まない塩鉱石が堆積する表面に到達して蒸発します。
私たちの地球と水について
知っていましたか?:
- 1㎦の雲には約2,000トンの水が含まれています。
- 毎年、52万㎦の水が地表から蒸発し、同じ量が降下します。これは黒海の体積(49万2,600km3の水)に匹敵します。
- 大気中の水分は、年に40回、平均して9日ごとに変化します。
- 大気中の全水分の70%は地表から3.5 km以内に留まり、全水蒸気の90%が地表から5km以内に留まります。
図1に示されている土壌の淡水化メカニズムは、淡水を抽出し、塩水から乾燥塩を収穫するさまざまな技術に影響を与えています。従来の淡水化プラントとは異なり、これらの技術は環境に有害な副産物を生成しません。この装置は太陽光発電で稼働しており、土地1 m2あたり年間約2,000リットルの淡水を生産することができます。これは、従来のプラントの2倍以上の生産量です。
農業植物の根の総量の99%は、60〜120cmの深さまで土壌にとどまり、そこから水分と栄養分を抽出して成長します。
製造費用も従来のオペレーションより大幅に安くなっています。この技術により、装置は固定プラントと移動ユニットの両方で使用でき、あらゆる塩濃度の水を処理して、化学工業向けの乾燥塩を生成します。残念ながら、発明者らはこれまでのところ、トルクメニスタン国内または国外で発明を商業化するために必要な投資の確保ができていません。
淡水の最適管理のための技術
農業植物の根の総量の99%は、60〜120cmの深さまで土壌にとどまり、そこから水分と栄養分を抽出して成長します。したがって、植物が育つためには、灌漑システムからの水がこの深さまで土壌に浸透する必要があります。しかし、この深さを超えて水を浸透させると、栄養素の土壌への浸出と淡水の浪費をもたらす可能性があります。
この問題に対処するために、Gennady Galifanov氏とVictor Vavlilov氏は、灌漑システムが水の損失を最小限に抑えながら植物の成長を最適化することを保証するさまざまな灌漑信号装置を開発しました。根の層が十分に湿っている場合、この装置はオペレーターに水やりを停止するように指示します。土壌の水分が限界まで低下すると、装置は水やりを再開する必要があることを通知します。このプロセスは、作物が成長する間、定期的に繰り返されます。この独創的な装置は、根域を超えた水と栄養素の損失を排除し、工学的な排水の負荷を軽減します。
過剰な水は、閉鎖型の排水システムを形成するために地下2〜2.5mにあるパイプシステムを介して灌漑エリアの外に流されます。あるいは、深さ3〜4mの掘削された排水路からなる開放型の排水システムを使用することもできます。閉鎖型の排水システムを介して根層から浸透する水は、開放的な排水路のネットワークに排出され、次に、より大きな排水路(集水路)のネットワークを介して自然または人工の貯水池(または窪地)に排出されます。このような排水ソリューションは、浸水と灌漑地の塩害を防ぐ限り、淡水資源のより優れた管理を可能にし、肥料や農薬のより効率的な使用を通して農業の生産性を高めることができます。
これらの装置は、トルクメニスタンの綿花畑での試験に成功しており、以下のような発明者証と特許を通じてこの地域のさまざまな国で保護されています。
発明者証:第1680019号、第1681772号、第1743480号、第1757533号、第1787373号、第1804751号
ロシア連邦特許:第2050117号
ユーラシア特許:第027647号
深層ろ過灌漑チャネルの最適化
淡水の最大35%は、砂質土壌でコンクリートスラブが敷き詰められた深層ろ過灌漑水路で失われます。コンクリートスラブの接合部がこのシステムの弱点です。気温の変化はしばしば接着部を損なったり破損したりして、水路のろ過能力を大幅に低下させます。
この問題を克服するために、Gennady Galifanov氏、Shabanova Larisa氏、Ata Annaniyazov氏、そしてその他のスタッフは、熱的および生物学的腐敗に耐えることができる接合部を開発しました。繰り返しになりますが、発明者は、以下のような発明者証と特許の形で知的財産権を使用して革新的なソリューションの保護を試みています。
発明者証:第1541339号、第1708933号、第1715941号、第1715942号、第1723236号、第1728339号、 第1730340号、第1788130号
ロシア連邦特許:第2012707号、第2029821号、第2031194号
ユーラシア特許番号 第027647号を除いて、前述の知的財産権はすべてパブリックドメインとなっています。これらの技術の詳細な説明は、オンラインで入手できます。また、発明者は発明者証と特許文献のコピーを依頼に応じて提供します。
淡水の最大35%は、砂質土壌でコンクリートスラブが敷き詰められた深層ろ過灌漑チャネルで失われます。
発明者らは、彼らの技術が社会の利益のために使用されることを望んでいます。彼らは、人々が彼らの成果の価値を認識し、それらに基づいて、中東欧およびそれ以外の地域で淡水資源管理の費用対効果と効率をさらに改善できる新しい特許性のある技術を開発することを望んでいます。
残念ながら、これらの技術の発明者らは実験の成功の後も不可抗力により、費用対効果が高く環境に優しいソリューションを実践することができずにおり、現在も商業的パートナーシップを結ぶ機会を模索しています。彼らは、乾燥地帯における灌漑地の生態学的状態を改善することを希望しており、環境に優しい節水技術の実践に関する知識、経験、アドバイスを共有する準備ができています。
アイルランドの劇作家George Bernard Shaw氏はかつて、次のように述べました。「あなたがリンゴを一つ持っており、私もリンゴを一つ持っているとします。そして、これらのリンゴを交換すると、私たちはそれぞれ一つのリンゴを手にします。しかし、あなたがアイデアを持っていて、私もアイデアを持っていて、私たちが互いにアイデアを交換した場合、私たちはそれぞれ2つのアイデアを手にするでしょう。」これこそがアイデアの価値であり、だからこそ、科学者、発明家、政策立案者がアイデアを交換して新しい技術の進歩への道を開く機会を奨励するべきです。
大気から水分を抽出する技術はまだ初期段階にあります。しかし、発明者や科学者の創意工夫、それらをサポートする政策環境、そして、その成果物の商業化により、水不足を緩和し解消するための効率的で安価な方法を開発し、広大な自然の資源を活用するための環境に優しい方法を他にも見つけることができるようになるでしょう。
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