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非代替性トークン (NFT) と著作権

2021年12月

著者: Andres Guadamuz氏、英国サセックス大学、知的財産法上級講師。2021年に最も注目された

テクノロジー関連の出来事は、非代替性トークン (NFT) に対する人気の高まりです。NFTは分散型台帳と暗号通貨の世界で、最近特に関心を集めています。この画期的な技術は、アートとテクノロジーの世界を席巻しました。

非代替性トークン (NFT) の購入により買い手が取得する権利については、大きな誤解があります。NFTの裏付けとなるアート作品とそれに伴うすべての権利を取得すると考えている人もいますが、実際に購入するのは、作品自体ではなく、作品に関連するメタデータに過ぎません。 (写真: sjscreens / Alamy Stock Photo)

Twitter社のCEOを務めるJack Dorsey氏は、自身が初めて投稿したツイートのNFTを250万米ドル相当で売却しました。NBAは、NBA Top Shot (NBA momentsと呼ばれるプレー動画の「唯一無二の」NFT) を販売していましたが、その価格が急騰しています。デジタル・アーティストBeepleによるコラージュ作品のNFTは、クリスティーズのオークションに出品され、7,000万米ドルという驚異的な金額で別の暗号資産起業家に落札されました。昔のミーム (主にインターネットで拡散している動画や画像など) もオークションで販売されています。胴体が「ポップタルト」というお菓子の形をしたカラフルな猫のアニメ、Nyan Catの有名なミームは、300 ETH (イーサリアム・プロトコルで発行される暗号通貨) で取引されており、これは本稿執筆時で100万米ドル超に相当します。ミュージシャンのGrimesも、600万米ドル超のデジタルアート作品を売却したとされています。

何が起きているのでしょうか。NFTとは何でしょうか。そして著作権はどう関係するのでしょうか。

In 2021, NFTs have taken the art and tech worlds by storm.

NFTの基本

まず、NFTとは何でしょうか。ブロックチェーン技術の活用事例として最も良く知られているのが、資産のトークン化です。ここでのトークンとは、ブログラム可能な価値のデジタル単位で、デジタル台帳に記録されます。トークンには様々な種類があり、商品からロイヤルティ・ポイント、株式、コインまで、どのようなものでも表章することができます。

トークンの規格には多くの種類がありますが、最も一般的な規格は、イーサリアムのインフラを利用するものです。イーサリアムは、ERC20規格を用いてトークンを発行しており、これが代替性トークンのルールを定めています。代替性のある物は定義上、売買する品目が何であっても交換可能です。銀、金、原油、穀物などの商品は、一般に代替性があります。逆に、代替性のない物は、カスタムメイドのシルバー・ネックレス、ゴールドの小像、絵画など、唯一無二のものです。代替性のない物には、ERC-721と呼ばれる別のトークン規格を使用します。

デジタル作品 (物理的な作品を含みます) は、写真、動画、スキャンなどデジタル形式で表現することができ、非代替性トークンに変えることができます。

イーサリアム環境のNFT規格が最初に利用されたのは、Cryptopunks (クリプトパンク) と呼ばれる一連のピクセル画像のキャラクターで、2017年6月に発表されました。 その後、ミーム、音楽アルバムデジタルアートなどの作品もNFTに変換されています。

Anything that can be digitized can be turned into an NFT.

様々なタイプのNFTがありますが、最も一般的なのはメタデータ・ファイルで、このファイルには、トークン化の対象作品のデジタル版でコード化された情報が含まれています。作品全体をブロックチェーンにアップロードするタイプのNFTもありますが、ブロックチェーンへの情報のアップロードはコストが高いため、それほど一般的ではありません。

最も一般的な種類のNFTは、ブロックチェーンに書き込まれるコードです。このコードは様々な情報で構成されています。NFTのERC-721規格は、必須の要素とオプションの要素を定めています。NFTの最も重要な要素はトークンIDと呼ばれる数字で、トークンの作成時に生成されます。次に重要な要素はコントラクト・アドレスで、これはブロックチェーン・スキャナーを利用して世界中で閲覧できるブロックチェーン・アドレスです。トークンに含まれる要素を組み合わせることで、そのトークンIDとコントラクト・アドレスの組み合わせで世界に1つしか存在しない唯一無二のトークンになります。NFTの中核となるのは、この2つの数字です。しかし、ほかにも重要な要素が契約の中にあります。その1つが、創作者のウォレット・アドレスで、これはNFTの創作者の特定に役に立ちます。ほとんどのNFTには、元の作品を見つけるためのリンクも含まれていることが一般的です。これは、NFTは作品そのものではなく、何らかの方法で元の作品にリンクされる唯一無二のデジタル署名であるためです (表1) 。

表1

NFTのメタデータ

メタデータの項目
コントラクト・アドレス トークンのメタデータ
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“86193240282618763854367501608353605316760331 “resellable”: true, “original_creator”: “0xBe8Fa52a0A28AFE9507186A817813eDC1
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A beautiful bovine in the summer sun “auctionLength”: 43200, “title”: “The Clearest Light is the Most Blinding”,
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“https://metadata.mintable.app/mintable_gasless/86193
240

“file_key”:””,
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トークンID
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084608326762837402898
トークン名
The Clearest Light is the Most Blinding
元の画像
https://d1iczm3wxxz9zd.cloudfront.net/6 13b908d-19ad-41b1-8bfa0e0016820739c/ 0000000000000000/861932402 8261887638543675016083536053 1676033165180834570008460832676 2837402898/ITEM_PREVIEW1.jpg
元の創作者
0xBe8Fa52a0A28AFE9507186A817813eD C14 54E004

画像: Moringiello, Juliet M. and Odinet, Christopher K., The Property Law of Tokens (2021年11月1日)U Iowa Legal Studies Research Paper No. 2021-44. 許可を得て使用しています。

著作権の問題

NFTに関するこれまでの説明を聞くと、著作権のことを全く考えないとしても無理はありません。非代替性トークンのほとんどは、ある作品を使用してコード化されたメタデータ・ファイルであり、その作品は、著作権保護の対象となる場合もならない場合もあり (原理上は、商標のNFTを作成することは可能です)、パブリックドメインの作品である可能性もあります。デジタル化できるものはすべてNFTに変えることができ、元の作品が必要とされるのは、トークンIDとコントラクト・アドレスの固有の組み合わせを作成する、プロセスの最初の段階のみです。ですから、原則としてNFTは著作権とほとんど関係がありません。

しかし、著作権保護の観点から、NFTへの関心が高まっています。その理由の1つは、NFTとして取引されている多くの作品 (アート作品など) が著作権で保護されているためですが、NFTの購入によって何を手に入れるかが明確でない、という理由もあります。

誤解の広がり

重要な問題の1つは、NFTの買い手が取得する権利に関して、しばしば大きな誤解があることです。NFTの裏付けとなるアート作品とそれに伴うすべての権利を取得すると考えている人もいます。しかし、実際には、作品自体ではなく、作品に関連するメタデータを購入しているに過ぎません。

誤解の原因は、トークンに支払われる金額にもあると考えられます。ピクセルアートが100万米ドルを超える金額で売却されれば、購入者が取得するのはコードだけではないと考えがちです。

また、NFTの売却を報道する主要メディアの間でも誤解が増えています。レポーターは多くの場合、売却されたのは作品自体だと思い込んでいますが、そうではありません。確かに、NFTの買い手がメタデータ・ファイルと、曖昧な芸術的価値を示す短い数字と文字の列に大金を払うことは理解しがたいことですが、大半のNFTはそういうものです。

にもかかわらず、一部のNFTに関しては著作権が問題となる可能性があります。例えば、何らかのデジタル著作権管理制度の下でNFTを利用することが考えられます。大半のNFTは権利の移転を伴いませんが、NFTの売り手が元の作品の著作権を実際に移転することを申し出る事例もあります。しかし、これが著作権の移転に必要な法律上の手続きを順守しているかどうかの判断は、容易ではありません。例えば英国では、1988年著作権、意匠および特許法 (CDPA) に基づく著作権の移転では、「譲渡人自らまたは第三者を通じて書面で」著作権を譲渡することが要求されています。NFTがそうした要件を満たすことができるかどうかは不明です。

他のデジタル著作権管理の下でNFTを使用することは可能でしょうか。ブロックチェーンが所有権の主張を変更不能な形で記録し、真正性を検証または判断する手段としての役割を果たす限り、すべてのNFTは登録の1形態と捉えることもできるでしょう。しかし、この考え方はすぐに現実的な問題にぶつかります。特に重要な点は、テクノロジーに関する十分な知識と適切なツールがあれば誰でも自分のトークンを作成することができ、このトークンには著作者が入力するいかなる情報でも含めることができる、ということです。つまり、誰でも誤った所有権を主張し、それをブロックチェーンに書き込む可能性があります

ライセンスについてはどうでしょうか。理論上は、どのような種類の取り決めも、コード化してスマート契約にすることが可能です。スマート契約は、コードで書かれた当事者間の合意で、ブロックチェーン上に保存され、変更することができません。ライセンスは著作権により制限されていない行動をユーザーに許可する法的文書である、と考えるのであれば、これもNFTで実現するができます。ただし、本稿の執筆時点で、主要なNFTプラットフォームを調査したところ、暗号化技術を用いたスマート契約ライセンスはNFTの形で発行されていませんでした。かなりの数のプラットフォームとデータ収集対象プロジェクトが、いかなる種類のライセンスも提供しておらず、ライセンスを提供していても、その多くは条件に矛盾があります

また、著作権侵害の問題も考えられます。自分に帰属しないNFTを作成することはできるでしょうか。これは根拠のない憶測ではありません。すでに、著作権侵害の発生が疑われる事例はいくつか見られます。NFTのマーケットプレイスをざっと見るだけでも、著作権を侵害している出品が数多くあります。アーティストの中には、自分の作品から無許可でNFTが発行されているとソーシャルメディアで訴える人もいます。アムステルダム国立美術館のパブリックドメインの作品でさえ、NFT化されています。著作権侵害が疑われるほとんどの事例は、裁判所以外で解決され、通常はオークションのプラットフォームからトークンが削除されます。しかし、いずれこうした事例の1つが訴訟に持ち込まれ、NFTは著作権者の権利を実際に侵害しているか否かという問題が生じるでしょう。

著作権保護の観点から、NFTへの関心が高まっています。その理由の1つは、NFTとして取引されている多くの作品 (アート作品など) が著作権で保護されているためですが、NFTの購入によって何を手に入れるかが明確でない、という理由もあります。 (写真: UPI / Alamy Stock Photo)

この問題は当初考えられていたより厄介で、その主な理由はNFTの性質にあります。上述したように、ほとんどのトークンは作品自体ではなく、作品のメタデータであり、そのようなトークンを作成しても著作権を侵害することはないでしょう。すでに説明しましたが、非代替性トークンとは専門的に言うと何か、ということを明確かつ正確に理解することが重要になります。

ほとんどの場合、著作者は、自身の元の作品に関連するNFTを発行するプラットフォームに対して賠償請求を行うことによって、無許可の使用に対して法的措置を講じることができますが、著作者がそうした措置を講じる排他的権利を実際に持っているかどうかは不明です。

著作権の観点からすると、NFTの発行は無許可であったとしても著作権侵害になるとは考えにくいでしょう。NFTは作品そのものではなく、作品に関連して生成された一連の数字であるため、結果として生成されるファイルが、その作品の複製または翻案とみなされることはないでしょう。

一般に、権利侵害が発生するためには、3つの要件を満たす必要があります。まず、侵害者が著作者の許可なく排他的権利のいずれかを利用することです。第2に、NFTと元のアート作品の間に因果関係がある、つまり、権利侵害の可能性がある作品が、元の作品から直接制作されている、ということです。第3に、作品の全体、あるいはその大部分が模倣されていることです。NFTがこの3つの要件を満たすことは考えにくいですが、今後の争点になることは間違いないでしょう。すでに、著作権侵害の申し立てに基づく訴訟が発生しています。例えば、映画製作会社のミラマックスは、映画「パルプ・フィクション」に基づくNFTを販売しようとした映画監督のQuentin Tarantino氏を、商標侵害、著作権侵害、契約違反で提訴しました。

ある作品の著作者が享受する排他的権利には、作品の複製、発行、貸出、貸与、実演、翻案、公衆への伝達、およびそのいずれかを行う許可が含まれます。公衆伝達権のみが、NFTにあるリンクを通じて侵害される可能性があり、そのような場合にはトークンと作品の間に因果関係があります。しかし、NFTは単にコードであり、作品の実質的な複製ではないことから、こうした権利の侵害にはあたらないでしょう。

ほとんどの場合、著作者は、自身の元の作品に関連するNFTを発行するプラットフォームに対して賠償請求を行うことによって、無許可の使用に対して法的措置を講じることができますが、著作者がそうした措置を講じる排他的権利を実際に持っているかどうかは不明です。

まとめ

NFTと著作権が互いに影響し合うことは避けられないでしょうが、紛争の大半はプラットフォーム・レベルで処理されると思われます。市場はすでにゲートキーパーとしての役割を果たしており、創作者が生成したトークンを提供できる場の存在を奨励することによって、著作権侵害の可能性を取り除いています。それでも、この市場の性質と多額の利益というインセンティブにより、NFT取引には著作権に関する紛争が数多く生じる可能性があります。破壊的創造をもたらすテクノロジーはまだ始まったばかりで、今後の紛争と所有権の主張の展開が注目されます。

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