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メタバースにおける商標

2022年3月

著者: Kathryn Park氏、Strategic Trademark Initiativesプリンシパル、コネティカット州、米国

メタバースとは何でしょうか。簡単に言うと、さまざまな方法でユーザーが相互に交流し、つながることができる、または将来できるようになる仮想空間です。例えばソファでくつろぎながらゲーム、コラボレーション、買い物、探索などができます。こうした機能の一部は、すでにゲーム用プラットフォームに存在しています。

メタバースはまだ発展途上にありますが、いくつかの分野では定着しつつあり、今後さらに拡大し、ユーザーにとってますます充実した環境になると予想されます。(写真: Diamond Dogs / iStock / Getty Images Plus)

メタバースで思い描かれているのは、消費者がバーチャルに人生を経験できる、洗練された仮想世界です。例えば、実際のアイテムに似たオンライン上のバーチャル製品を買ってアバターを装飾することや、コンサートやスポーツイベントにバーチャルVIPとして参加すること、1つしかない高価な美術品を買うこと、バーチャルな車やヨットを操縦すること、異国情緒あふれる特別な場所で旅行や食事をすることなどが可能です。メタバースは日々拡大しています。

こうした新しいバーチャル体験やバーチャル商品の多くは、非代替性のデジタル創作物であるNFT (知的財産とNFTに関する詳細はこちらをご覧ください) になることで魅力が高まります。この新しいバーチャルな拡張現実における消費者は、デジタル通貨とはいえ実際のお金を払って参加するため、想像上の価値と言い切れない多くの価値が生まれるでしょう。

メタバースはまだ発展途上にありますが、いくつかの分野では定着しつつあります。例えば、新しい空間の開発をリードしているゲームの世界では、ゲームプレーヤーはバーチャルなゲーム内通貨を使って、「スキン」などのデジタル・オブジェクトをゲーム内で購入することができます。

スポーツリーグも参加しており、NFTのトレーディングカードを購入したり、次世代のファンタジーリーグ・イベントに参加したりする機会があります。米国のラッパー、Travis Scottのコンサートなどのバーチャルな音楽イベントに参加することもできます。これは始まりにすぎません。メタバースは拡大し、ユーザー・コミュニティにとってより充実した環境になると予想されます。

FacebookのオーナーであるMark Zuckerberg氏が率いるメタ (Meta) は、メタバースの恩恵に浴そうと、開発に深く関与しています。しかし、マイクロソフトからNvidiaやRobloxなどのゲーム会社まで、他のテクノロジー企業も同じように、メタバース内で可能な限り地所を得ようとしています。

実際の世界と同じように、メタバースでも多くの法的な問題が生じるでしょう。プライバシー保護とデータ収集、独占禁止や反競争、言論の自由と名誉毀損に加え、著作権特許商標などの知的財産の問題が考えられます。ブランドオーナーにとって、メタバースで自身のブランドを守ることは極めて重要になり、新しい仮想環境での活動に備えて法的戦略が必要になるでしょう。

メタバースでの成長を目指すブランドオーナーは、適切な商標登録、確実な監視戦略、適切なライセンスおよび利用条件によって自身のバーチャル市場をどう構築するか、検討する必要があります。

メタバースにおけるブランド保護 ─ 商標登録など

もしあなたの会社が、メタバースでのバーチャルなブランド商品・サービスの販売を検討しているのであれば、できるだけ早く商標を出願したほうが良いでしょう。では例えば、デジタル・スニーカーのブランドを保護するには、どのように出願するのでしょうか。バーチャルなトートバッグはどうでしょう。商品・サービスの明細書はどのようなものが適切でしょうか。どのような分類が適しているでしょうか。

すでに広範な出願プログラムを実施している会社もあります。例えば、フットウェア最大手のナイキ (Nike) とコンバース (Converse) は最近、米国特許商標庁にいくつかの出願を行いました。もちろん、ファッションや化粧品、スポーツ、エンターテインメント業界でも、バーチャルな商品・サービスの提供に関連して使用する商標を出願しています。こうした出願はまだ詳細に分析されていませんが、バーチャル商品の商標登録を実現する方法のロードマップになるでしょう。

企業等は、以下の商品区分 (商品およびサービスの国際分類に関する詳細はこちらをご覧ください) に関連して保護を申請していると見られます。ダウンロード可能なバーチャル商品、つまりコンピューター・プログラム (第9類) 、バーチャル商品を取り扱う小売店サービス (第35類) 、エンターテインメント・サービス (第41類) 、オンラインのダウンロード不可能なバーチャル商品とNFT (第42類) 、デジタル・トークンを含む金融サービス (第36類) 。これらの出願は各国の知財庁で審査されるので、商品・サービスの明細書と分類に関する問題は標準化が進み、そうしたガイドラインは後の出願人の役に立つでしょう。

ほとんどの法域で、最初に出願した人に商標権が認められます。商取引における実際の使用が先の出願日より優先される米国でも、使用の意思 (intent to use) ベースで早く出願することが重要です。これは、商取引における実際の使用が後になるとしても、出願日によって最先使用日が決まるためです。

驚くには当たりませんが、悪意のある者が先取り出願によってメタバースにおける貴重な商標権を奪おうとしています。メタバースの商標で悪意のある出願は珍しくありません。例えば米国では、メタバース標章の悪意の出願が最近、プラダやグッチなどのファッション・ブランドで確認されています。悪意の出願人に対抗することは代償を伴い、場合によっては莫大な訴訟費用がかかり、企業の財源を枯渇させる可能性があるため、こうした悪質な出願は商標の所有者にとって重大な問題です。

NFTの所有に関しては特別な検討が必要ですNFTには極めて高額な価格が付けられており、何かがうまくいかなくなれば、激しい論争の的となる法的問題に発展することは間違いないでしょう。(写真: blackdovfx / iStock / Getty Images Plus)

メタバースでのブランド使用にそれほど熱心でない企業もあります。例えばエルメスのブランドは、その顧客が高く評価する美しい手製の革やシルク、その他の商品と密接につながったものです。同社にとって、バーチャルなエルメス製品を提供することは、エルメス製品の本質に相反することと考えられています。しかしながら、このことがメタバースの海賊行為者によるバーチャルなエルメス製品の販売を抑止できるわけではありませんでした。

2021年後半に、エルメスはバーチャルNFT「メタ・バーキン (MetaBirkin)」の販売に抗議しました。メタ・バーキンは、アーティストのMason Rothschild氏が創作しOpenSeaで販売されているバーチャルNFTで、誰もが知っている憧れのエルメスのバーキン・バッグとほぼ同じに見えます。エルメスのバーキン・バッグは数千ドルで販売されています。メタ・バーキンNFTも高額で、OpenSeaで100万米ドル近くになると報告されています。エルメスはこれに抗議し、訴訟を起こしました。

企業がメタバースで自社ブランドを提供しない場合に、その商標が有名であることを立証してメタバースでの他者による使用を防ぐことができるでしょうか。例えばエルメスであれば、メタバースにおけるその商標の不正使用により、エルメスというユニークなブランドが毀損されると主張できるでしょう。しかし、エルメスほど有名でないブランドの場合、法的問題を解決するのはそれほど簡単なことではないかもしれません。うしたブランドが商標侵害を主張する場合、混同可能性を根拠とし、その分析に依拠せざるを得ないでしょう。この状況では、商標の所有者は不利な決定に直面する可能性があります。商標庁がバーチャル製品の出願に対する異議申立てを審理する場合と同様に、裁判でも、バーチャルとリアルの各商品・サービスが類似しているかどうか、あるいは取引経路がまったく異なることのみが注目される可能性があります。商標の所有者とその弁護士は、虚偽の広告に対する請求や、不正流用や詐称通用などのコモンローでの請求も行うべきかどうか、判断が必要となるかもしれません。

メタバースにおけるブランド使用に関する取り締まりはますます困難になる可能性があります。NFT市場はすでに詐欺行為が横行しており、ユーザーは苛立ちを募らせています。NFTマーケットプレイス最大手のOpenSeaを初めとするNFT市場に対して、取り締まりを強化するよう要求しています。開拓期にあるメタバースでの商標リスクは高まっています。まず、メタ・バーキンの例が示すように、ブランドオーナー以外の誰かがブランドののれんを利用した販売を行い、利益を得る可能性があります。第2に、不正なNFTを購入した顧客は、高額のアイテムが正式なブランド品でないことをいずれ知り、NFTに投資した価値を失い不満を抱く可能性があります。

メタバースは利用者が増え、ますます拡大すると予想されます。間違いなく、メタバースでの商標の不正使用を監視する特別なサービスが発達するでしょう。ブランドが不正使用を発見するための方法として顧客との関わりを通じたものも考えられます。また少なくとも当面は、権利行使は停止通告書や訴訟など、従来のやり方で行われるでしょう。

ブランドオーナーにとって、メタバースにおいて自身のブランドを守ることは極めて重要になり、新しい仮想環境での活動に備えて法的戦略が必要になるでしょう。

権利消尽はバーチャルなブランド品の販売に適用されるでしょうか。

個人が有形の商品を購入した場合、それが衣料品であれ家電製品や車であれ、購入者にはその商品を好きなように扱う権利があります。商品の外見や機能を変更することもできますし、譲渡したり、中古市場で売却したり、破壊することもできます。商標の所有者は、商品を売却した後は、権利消尽の原則によって、その商品を市場でコントロールする継続的な権利を有しません。しかし、その商品が有形の財産ではなくバーチャルなアイテムの場合はどうなるでしょう。現時点では、答えよりも疑問のほうが多くなっています。例えば、バーチャルなアイテムの購入者は、購入したアイテムに対してどのような権利があるでしょうか。おそらくより重要なことは、どのような権利があると購入者が考えているか、ということでしょう。商標の所有者の権利は販売時点で消尽するのでしょうか。それとも移転したアイテムに対する知的財産権を持ち続けるのでしょうか。商標の所有者は購入者に対して、またはその後の譲受人に対して、継続的に義務を負うのでしょうか。

フォートナイトなどのビデオゲームはメタバースの先駆者で、プレーヤーがオンラインのアバターで使用できるバーチャルな装具、スキン、コスメティックスを以前から販売しています。ですから、このモデルはメタバースにとって参考になるかもしれません。こうしたスキンには有効期限がありません。プレーヤーは、彼らがフォートナイトの新しいシリーズに参加し続けることが条件として、それを「所有」するとされます。継続的なライセンス料の支払いによる参加を条件とするこのような財産の所有権は、実世界で行われている商品の実際の移転というよりは、ライセンスに近いものに見えます。もし現在のインターネットの「ウォールドガーデン」が消滅したらどうなるでしょう。これらのスキンは購入者の所有物となって、特定のプラットフォームではなくメタバース全体で使用することができるのでしょうか。ナイキのバーチャルシューズを履いている人や、グッチのバーチャルバッグを持っている人は何を期待できるのでしょうか。

NFTは所有という点で特別な考慮が必要です。唯一無二のバーチャル・アイテムとして、NFTは文字通り数百万ドルで販売することができます。アーティストBeepleのNFTは、クリスティーズのオークションにて6,900万米ドルでメタ・コレクターに売却されました。このようなバーチャルな財産には極めて高額な価格が付けられており、何かがうまくいかなくなれば、激しい論争の的となる法的問題に発展することは間違いないでしょう。

メタバースでの成長を目指すブランドオーナーは、適切な商標登録、確実な監視戦略、適切なライセンスおよび利用条件によって (ユーザーに敬遠されないよう、難解な法律用語を避けるよう気を配りつつ) 自身のバーチャル市場をどう構築するか、検討する必要があります。こうした商標に関する問題に慎重に対処しなかった場合、メタバースにおけるバーチャルなブランド商品の展開や販売方法に消費者が幻滅し、結果としてのれんの毀損につながるリスクがあります。ソーシャルメディア戦略での失策と同様に、メタバースにおける失策は、ブランドに直ちにマイナスの結果をもたらす可能性が高いと言えます。

ニース分類について

個人または企業が商標を登録する際、ニース分類として知られる国際分類に記載されている商品またはサービスを特定する必要があります。ニース分類は定期的にアップデートされています。ニース分類には45のカテゴリーがあり、そのうち商品に関するものが34、サービスに関するものが11あります。ニース分類は1957年6月に締結された「標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定」に基づいて定められました。

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