オンライン・ブランドの構築と保護: 新しい起業家のためのヒント
著者: Kathryn Park氏、Strategic Trademark Initiativesプリンシパル、コネティカット州、米国
あなたはオンライン・ストアを設立してYouTubeチャンネルを開設し、アプリを開発しました。投資家も確保し、素晴らしいコンテンツと商品を開発しました。そして、これまでの懸命の努力を早く収益化するために、カッコいいブランド・アイデンティティを作り上げようとしています。商標保護は、長期的にあなたのブランドに関して保護可能な権利を確立する上で極めて重要です。ブランド・アイデンティティは、ブランド名、商標、ロゴ、スローガンの他、配色などのブランドの特徴 (総称してブランド) で構成されています。各国・法域において、この大半は商標法で保護することができます。
記述的表現のみに頼らない
多くの場合、新しい事業のネーミングとブランディングは、ビジネスを設立する際の楽しい部分とされています。あなた、またはあなたの友人は、気の利いた名前とロゴを考えます。あるいは、ブランディング・コンサルタントを雇って、持久力のあるブランド (商標) の選択を支援してもらいます。そのプロセスでの重要なヒントをご紹介します。
記述的表現のみに頼らないようにしましょう。あなたの技術は「スマート」な選択の中で最もスマートかもしれませんが、その表現を使っても権利は保護できません。商品またはサービスの種類を記述する一般的な用語は保護されないため、ミニマリストになって自分の香水をシンプルに「香水」と呼んでも保護される権利は得られないでしょう。また、賞賛の表現も多くの場合保護されません。ですから、ブランドに「最高」と名付けても保護される権利はあまりないでしょう。
第三者にブランド構築を支援してもらう場合には、それがあなたの親友であれ、マーケティングやブランディングのコンサルタントであれ、そうしたすべての権利をあなた、またはブランドを所有し運営する会社に譲渡する適切な契約を関係者全員と締結してください。そうでなければ、あなたの新しいブランドの保護を申請する必要が生じた時に、法的所有者がはっきりせず、頭を抱えることになるでしょう。
こうしたよくある過ちを回避したとしましょう。次に必要なことは、あなたの新しいアイデンティティに関して、不注意により他者のブランドを模倣して訴訟に発展することを回避し、法的に保護可能な権利を確立できるようにすることです。
わずかな時間と資金、適切な法的助言があれば、あなたのブランドは完成です!
商標調査を実施する
ほとんどの国の商標法は、特定の商品またはサービスに関連して使用される商標に排他的権利を与えます。ただし、その商標、または同一でないにしてもその商標に酷似しているものが、同一または類似の商品またはサービスに関して第三者によって使用されていないことが条件となります。
最初のステップは、商標のクリアランス調査を実施して、競合する使用を特定することです。競合する使用があれば、あなたの使用が困難になる可能性があります。この最初のステップを行わずに商標の登録を出願すれば、手痛いミスとなりかねません。出願料は返金されない上、あなたのブランドを守るために、訴訟であれ商標庁への異議申し立てであれ、法外な費用がかかる可能性があるためです。
新しい商標のクリアランス調査の方法
まず、あなたが特に重点を置く地域を検討します。中国とインドネシアで新規顧客をターゲットにしますか? あなたの市場は米国やEUですか? 壮大な計画を立て、グローバル企業を目指しているとしても、全世界の類似ブランドを調査することは、巨大企業でも不可能です。そこでまず事業を開始する地域を決めます。
次に、クリアランス調査を行う際の選択肢を検討します。すべての商標庁は登録商標と係属中の出願のデータベースを持っていて、無料でオンライン検索することができます。初めてのブランドオーナーの多くは、そうした検索に基づいて商標の使用が可能であると判断しようとするでしょう。そうした努力は賞賛に値し、適切な最初のステップと考えられますが、あなたが望んでいる商標の使用を可能にするには不十分です。
似たような商標を発見した場合、あるいは良く似た商標が無数の商品・サービスをカバーしている場合、どう解釈すればよいでしょうか。
商標のクリアランスまたは調査会社は、提案されている商標について包括的な調査を行うことができます。こうした報告書は詳細にわたることが多く、検討して解釈することが困難な場合があります。調査会社は、商標の専門家以外でも利用しやすいように、常に商品を改善していますが、それでもダッシュボードやリスク評価ツールは、あなたのブランドが競合しようとする市場を正確に反映していない可能性があります。さらに重要なことは、調査会社は通常、標章の利用可能性について、法律上の見解を提供しないことです。法律上の見解は、あなたの権利が異議を申し立てられるようなことがあれば、極めて重要になります。
ほとんどの商標庁は、所有者がオンラインで直接出願することを認めていますが、法律専門家の利用を検討したほうが良い理由があります。
法的助言を求める
最良の方法は、予算を確保して法的助言を求めることです。優れた商標専門家は、あなたのニーズに合ったクリアランス調査をオーダーし、商標法の知識を使ってそれを吟味し、助言を行うことができ、潜在的な落とし穴を指摘し、おそらくそれを積極的に管理するための戦略を立ててくれるでしょう。
法律事務所は高額の費用がかかる可能性がありますが、多くは一律の料金で商標選択を実施し、助言を行っています。小規模のスタートアップ企業や非営利組織であれば、一部の会社や法律事務所が無償で支援を行っています。法科大学院がそうした問題に対する相談に応じている場合もあります。
商標登録の出願を行う
商標のクリアランスが終わり、使用を開始したいとします。他に必要なことはあるでしょうか。簡単に言うと、その答えはイエスです。ブランドの使用をこれ以上待つ必要はありませんが、あなたが販売または提供する商品・サービスについて、ブランドの商標、スローガン、ロゴを保護するために、直ちにそれらを登録する商標出願を行うほうが良いでしょう。
米国を除くほとんどの国で、商標を最初に出願した人がその商標に対する排他的権利を有するとみなされます。商標のクリアランスが終わったら、できるだけ早く出願することが重要です。米国では、登録するには実際の使用が求められますが、使用の意思ベースで迅速に出願することで、もし他者が使用を開始していたとしても、あなたの商標をその後の出願人から保護することができるでしょう。ただし、あなたが割り当てられた期間内に使用を確立したことを示す書面を提出する必要があります。
出願先はどこでしょうか。すべての国と法域であなたの新しい商標を出願することはコスト効率が良いとは言えません。まず、その商標の使用、またはその商標で特定される製品の製造を予定している法域で出願します。
ほとんどの商標庁は、所有者がオンラインで直接出願することを認めていますが、法律専門家の利用を検討したほうが良い理由があります。出願には、商標が使用される際の関連する商品・サービス分類の指定、ブランドの商品またはサービスの記述部分では潜在的権利不要求の他、提供する商品・サービスの識別情報を正しい専門用語で記載することなどが必要です。
商標庁の公式ポータルサイトの多くは、指導サービスを提供していますが、出願を自ら (自分自身のために) 行うことで、将来困難な状況に直面する可能性があります。さらに問題となりかねないのが、法律事務所以外の、出願に関する簡単なサポートを行う無数の法的サービスのいずれかを利用することです。こうした会社の多くは、書式の提出に必要な情報をあなたに質問するにとどまり、記述性、普通名称、登録不能性などの理由で標章に潜在的な問題があったとしても、指摘しません。一部の法的助言は追加料金を支払うことで利用できる場合がありますが、こうした会社は複雑な異議や商標庁からの照会に対応する体制が整っていません。
コスト効率の良い解決策は、やはり経験豊富な法律専門家のサポートを受けることです。多くの会社は一律の料金体系があり、無償で支援を受けられる場合もあります。あなたの法律顧問は、複数の法域で標章を出願すべきか否かの判断を支援することもでき、その場合、あなたのブランドを保護するための包括的な出願戦略の策定を手伝ってくれます。
出願を行うと、商標庁は出願内容を精査し、庁の拒絶通知書という形で質問や異議を提起することがあります。弁護士であればあなたに助言を行い、回答案を作成して、そうした質問や異議に対応してくれるはずです。
話を数カ月先に進めます。あなたの商標が登録されました! あなたの新しい商標は指定した商品カテゴリーにおいて排他的権利を有します。今後のステップという点からすると、これはどういう意味を持つでしょうか。
商標権を取得するための最初のステップは、商標のクリアランス調査を実施して、競合する使用を特定することです。競合する使用があれば、あなたの使用が困難になる可能性があります。これを行わなければ高額の費用がかかる可能性があります。
ブランドの認知度を高める
まず、あなたのブランドを継続的に使用して、顧客の認知度を高めます。コカ・コーラのようなブランドは広く知られていますが、その理由の1つは、同じ配色、フォント、ロゴが継続的に使用されていることです。ブランドが色を頻繁に変更することを意図していたり、ブランド名のフォントを意図的に変えたりし、顧客がそれらをブランドの属性と認識する場合を除き、継続的に使用します。ロゴまたは名称を識別力のある書体で登録することを出願した場合、その標章は出願した通りに使用します。これを逸脱すれば、あなたの権利を行使する必要があっても、あなたの登録に依拠できない可能性があります。
次に、ブランドをドメイン名として登録出願することによってブランドを保護し、TwitterやInstagramなどのソーシャルメディア・プラットフォームであなたのブランドを保護します。
オンラインでブランドを監視する
ブランドをオンラインで監視し、悪用または不正使用されないようにする必要があります。そうしたことが発生すれば、多くの場合、あなたの顧客が最初に教えてくれるでしょう。不正使用があった場合、その使用がある水準に達しているかどうかの判断が必要になります。その場合、何らかの措置を講じることになるでしょう。
模倣は最大の賛辞と言いますが、あなたが努力して開発し、保護してきた法的権利を危険にさらす可能性があります。多くの場合、直ちに使用を中止するよう求める警告書が最初の方法となりますが、ここでも、この種の要請は法律顧問に行ってもらうのが最適です。不正使用が、侵害するドメイン名の使用であれば、かかる使用に異議を申し立てる手続きもあります。これは法律顧問が比較的迅速かつ手頃な料金でサポートしてくれるでしょう。
権利侵害使用が実際の偽造である、つまりコピー商品があたかもあなたの商品のように市場に出回っている場合、裁判所による救済措置や法執行機関の支援を求めるなど、より強硬な法的手段を講じる必要があるでしょう。この種の権利行使問題が直ちに発生することは少なく、一般的に、あるブランドがターゲット地域の顧客層に浸透した後に生じます。経験豊富な商標弁理士と良好な関係を構築していれば、すぐに支援を求められるリソースを持つことになります。あなたの弁護士は、さまざまな税関に登録証明書の写しを提出し、国境で模造品を押収できるようにするなど、先を見越した対策を取るべきか否かの判断を行う際にも助けとなるでしょう。
わずかな時間と資金、適切な法的助言があれば、あなたのブランドは完成です!
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