JSC Laser Systems社はレーザーおよび光電子機器を製造するロシアの大手メーカーで、同社の製品は、気象学、航空機産業、環境安全、宇宙研究、最新の積層造形など、様々な産業分野で利用されています。
1998年に設立されたJSC Laser Systems社は、180名の従業員を擁し、20年にわたりイノベーションと最新技術を生み出してきた経験豊富な専門家が揃っています。また、ISO 9001認証を取得しており、品質保証の取り組みには定評があります。
同社が提供するハイテク製品には、気象条件 (風速、乱気流、雲量など) やその他の環境現象を監視、測定、追跡、予測するライダーシステムなどがあります。
2012年には、ALCOFRAME (ロシア語でAlkoramka) が製品ラインに加わりました。ALCOFRAMEは、非接触技術を利用して危険施設 (採掘現場や化学プラント、発電所など) で働く従業員のアルコール濃度を素早くチェックします。こうした施設では、酩酊状態の従業員が人々の安全と生産システム全体を危険に晒します。
2019年にアップグレードされたALCOFRAMEは、迅速にテスト結果を表示し、現在はベラルーシ、カザフスタン、ロシア連邦の1,000を超える企業で使用されています。「当社の新しい機器は利便性が向上しています。このアルコール検知器に向かって息を吐くだけで、数秒以内にその従業員の呼気を分析し、結果を色で表示します」とJSC Laser Systems社の最高責任者Alexey Morozov氏は説明します。「これまでより衛生的で感度が高く、必要とされるメンテナンスはごくわずかです。センサーの較正や交換が不要で、自己診断システムが搭載されています」とMorozov氏は言います。
JSC Laser Systems社は、積層技術の開発と、金属部品を溶解・融合する革新的な3Dプリンタの開発に重点を置いています。いずれも、製造プロセスを改良するもので、現在多くの産業で需要があります。また、工場で働く従業員の高度な安全性を確保するために、ALCOFRAME製品ラインのさらなる改善と拡充にも取り組んでいます。
2021年に、当社のレーザー機器はロシアのレーザー協会から複数の賞を受賞しました。当社は100種類以上の特許と認証を取得しており、当社の技術と機器の独自性が認められています。
「知的財産 (知財) の保護は、以前から当社の事業戦略に欠かせないものでした。なぜなら、当社の開発とソリューションの多くは独自性があり、類似品は世界に存在しないからです。この点は競合他社に対する重要な戦略的優位性です」とMorozov氏は言います。
革新的な多くのハイテク中小企業と同様に、JSC Laser Systems社は設立以来20年間、資金と国の支援を得ることに苦労してきました。研究開発を重視する革新的な企業は一般に、事業の拡大に必要な資金を調達する際に担保として利用できる有形資産がほとんどありません。
しかし、2019年に、知識集約型企業の事業成長のために、政府による資金提供の新しい仕組みが導入され、当社の運命を変えました。ロシア経済開発省が立ち上げた政府プロジェクト「中小企業向け資金援助の利用拡大 (優先的資金調達を含む) 」の一環として、JSC Laser Systems社などの企業は、自社の知財権を資金調達の担保として利用できるようになりました。
JSC Laser Systems社は、100を超える特許を含む強固な知財ポートフォリオのおかげで、このスキームに基づいて融資を受ける最初の企業となりました。
「過去20年間にわたり知財ポートフォリオを構築してきた当社の取り組みは、ロシア経済開発省が融資スキームを開始した2019年に実を結びました。知財ポートフォリオで融資を受けることができたため、新型コロナウイルスのパンデミックによる多くの困難にもかかわらず、2つの新製品を開発し、1年以内に市場に出すことができました」とMorozov氏は述べています。
「その過程で得た経験とスキルを活かして、新しい製品ラインの商業契約も締結し、年内の発売を予定しています」とMorozov氏は言います。JSC Laser Systems社は現在、様々な経済団体やフォーラムへの参加を通じて、他の起業家に知財資産を利用した資金借入についてアドバイスをしています。
このプログラムによりJSC Laser Systems社のような中小企業が、知財資産を担保に必要な資金を調達できるようになったため、ロシアの知識集約型産業の発展が新たに勢いづいています。また、新技術や改良技術を継続的に市場に投入することにも役立っています。
知的財産は、研究開発を重視する多くの中小企業にとって基礎となるものです。知的財産は資金調達の担保として利用できる資産であるという認識の高まりは、革新的な技術の開発を支える大きな前進です。
「当社の経験が示すように、知財分野では政府によるターゲットを絞った支援が不可欠です。市場はそうした支援を長い間待ち望んでいました。このスキームは前向きな第一歩ですが、ロシアで当社のようなハイテク企業の発展と成長を支援するためには、まだやるべきことが多くあります。当社は今後も事業の成長に知財を活かしたいと考えています」とMorozov氏は話しています。