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ムートラル:牛に着目して気候を守る

モ~ブメントに参加しよう。牛に着目して気候を守る取り組みにご協力を。

スイスに拠点を構える農業技術のスタートアップ企業「Mootral」は、羊や牛など、一度飲み込んだ食物を再び口の中に戻しながら食べる、いわるゆ反芻動物が放出するメタンガスの量を大幅に削減する天然の飼料サプリメントを製造しました。Mootralの牛に着目した画期的な技術は、気候変動問題の解決に貢献しています。

気候変動は現代を象徴する大きな問題です。世界の権威ある科学者たちは、壊滅的な気候変動を回避するのに私たちに与えられた時間はわずか12年しかないと言います。1

(写真提供:Mootralより許諾を得て転載)

食品及び農畜部門からの排出

今日、食品産業と農畜産業から排出される地球温室効果ガス(GHG)の割合は以下のとおりです。

  • 食品産業2 – 26%;
  • 農業(土地利用含む)3 – 24%
  • 家畜牛4 – 9%

2050年には、地球上の人口は98億人5 、家畜牛の数は25億頭6. になっていることが予想されます。牛肉7 および乳製品8需要は現在と比較し、それぞれ73%と58%増加するでしょう。

平均的な牛は1頭あたり約500リットルのメタンガスを毎日放出します。Mootralの画期的な技術である天然の飼料サプリメントは牛に着目し、気候変動問題の解決に貢献しています。(写真提供:Mootralより許諾を得て転載)
ムートラルは反芻動物の腸内発酵で生成・放出される
メタンガスの量を大幅に削減する天然の飼料サプリメ
ントです。(写真提供:Mootralより許諾を得て転載)

その何が問題なのでしょう?過去5年でメタンガス排出量は50%も増加しました。20年間9というスパンでは、メタンガスの温室効果は二酸化炭素(CO2)の84倍となります。 反芻動物である牛は平均で1頭あたり500リットルのメタンガスを毎日放出します。つまり、家畜はわらや牧草から牛乳やチーズなどの価値の高い食品を生み出し、人間の健康的な食生活と世界の食料不足に大切な貢献をする一方で、家畜が放出するメタンガスの量を減らす方法を見つけることが極めて重要です。

この技術について

長期に渡る研究開発の賜物であるムートラルは、反芻動物の腸内発酵で生成・放出されるメタンガスの量を大幅に削減する天然の飼料サプリメントで、ニンニク由来の活性化合物と柑橘類の果実から抽出されたバイオフラボノイドを独自に配合しています。同社が研究室で行った試験管を用いた実験では、メタンガスの放出がほぼ完全に制止できることが実証されていますが、実際の農場で使用される場合、家畜の種類、年齢、農場の状況、給餌法により、最大38%の削減が可能と結論づけています。Mootraは様々な農法のニーズに合わせてフィードチェーンに簡単に組み入れることができます。


地球上の15億頭の牛にムートラルを与えることにより、年間1.5ギガトン(=1500000000メートルトン)のCO2を削減*できる可能性があります。

地球上の15億頭の牛にムートラルを与えることにより、年間1.5ギガトンのCO2を削減**できる可能性があります。(写真提供:Mootralより許諾を得て転載)

ムートラルの開発過程はこちらでご覧いただけます:https://www.blog.mootral.com/mootral-and-the-eureka-moment/

ムートラルの知的財産権の取得状況

ムートラルは複数の特許を取得しています。特許はこのイノベーションを守り、他社が同じ製品を作り販売することを許しません。現在、Mootralはこのイノベーションを使い反芻動物が放出するメタンガスの量を削減することにフォーカスする一方で、WIPOの特許協力条約に基づきこの技術を海外でも守ろうとしています。

知的財産を保護することは、大企業と同程度のマーケティング力のない、Mootralのようなスタートアップ企業にとってはとりわけ重要です。スタートアップ企業はそのイノベーションを保護してはじめて、技術開発を継続し、新たなソリューションを開発し続ける意味があります。

特許技術は関心を引く商品で、特許があることにより企業はイノベーションをより効果的に販売することができます。特許により与えられる20年間の独占的排他権は、Mootralのような企業が研究を進め、新たな特許に結びつきうる技術を発明することを可能にします。このようなイノベーションは、現在及び未来の問題を解決するための既存のプラットフォーム技術を洗練していくでしょう。

環境に優しい未来の創造にイノベーションは欠かせません

Mootralの技術者は、環境に優しい未来を創るのにイノベーションが不可欠であると考えています。

イノベーションとは、新しい技術や考え方を使って、(現在ある)アイデアやプロダクトに価値を付加し、社会に大きな利益をもたらすことです。

魔法のようなことができるものがあるとすれば、それはイノベーションです

気候変動は現代を象徴する大きな問題です。温室効果ガス排出量の削減で実質的な進展がない限り、地球の温度は大幅に上昇する運命をたどることになるでしょう。

それを回避するためには、汚染物質を排出している全部門でイノベーションが求められています。今世紀、私たちは全ての部門で排出量を減らすソリューションを大規模に展開していく必要があります。

イノベーションにはこれら全てを解決する力があります。魔法のようなことができるものがあるとすれば、それはイノベーションです。

ムートラルの開発に際して直面した困難

ムートラルを開発するにあたり、Mootralはいくつもの問題に直面しました。科学技術の観点での最大の問題は、まだ開発段階にあったムートラルを応用するにあたって、動物の健康と生産性を維持しながらメタンガスを最大限に減らすために微調整することでした。

商業的な観点での最大の問題は、条件が異なる営利農場でもムートラルの有効性を一貫して示すことと、

先見の明があるだけではなく、自身が運営している農場の生態系を超えてイノベーションを率いていく覚悟のあるパートナーを見つけることでした。

また、政府レベルで支援を得るには権威ある国立研究所による、地域の通常条件下での長期的な初期研究結果が必要となります。政府にとっては、農業に起因する国家レベルでの排出量がまだよくわかっていないという事実が問題となります。特に、あまり取り上げられることのない腸内発酵により生成されるメタンガスの排出量となればなおさらです。そのため、これらの排出量に上限を設けたり、腸内発酵によるメタンの削減量を国家の温室効果ガス排出量削減対象に入れることはとても困難です。

政府は環境に優しい未来のためのイノベーションをどのように支援できるか

他の全ての主要プレイヤー同様、政府も家畜が放出するメタンガスに着目した「モ~ブメント」に貢献できます。  Mootralは政府が政策や法律、国家目標、インセンティブやペナルティを整備し、上限を設けることにより変化を促していく役割を果たすことを期待しています。Mootralは現在、国家レベルでの排出量削減のためのイニシアチブ策定に向け、複数の国の政府機関と協力しています。これらのイニシアチブにおいて、政府は自国領域内での気候変動問題に対処するという姿勢を表明することができます。

2020年世界知的所有権の日。Mootralは行動を呼びかけました

モ~ブメントに参加しよう。牛に着目して気候を守る取り組みにご協力を。

(写真提供:Mootralより許諾を得て転載)
Mootralの牛肉産業および酪農業へのメッセージは次のとおりです。
  • 内側から改革しよう。自身のサプライチェーンに起因するカーボンフットプリントの信頼性と透明性を改善しましょう。
Mootralの農家へのメッセージは次のとおりです。
  • 生産性を高めて収入を増やしながら、メタンガス排出量を削減し、自発的なカーボンクレジット(カウクレジット)などを利用して業界や市民からの新たな収入源を確保しよう。
Mootralの消費者へのメッセージは次のとおりです。
  • 気候への負荷が低い商品を購入することで温暖化防止に貢献しながら本物の牛肉や乳製品をこれからも味わっていきましょう。
Mootralの政府へのメッセージは次のとおりです。
  • 地域の農家を守り、支援しながら、気候変動を抑え、炭素排出量削減目標を達成しましょう。

ムートラルは単なる商品ではありません。これは、温暖化防止に貢献する家畜牛により農家、企業、政府、消費者がカーボンフットプリントを減らすのを助ける1つのソリューションなのです。ムートラルは家畜の健康、人々の健康、そして何よりも地球の健康への投資といえるでしょう

トーマス・ヘフナー

ムートラルの潜在的なインパクト

当農場ではイギリスで人気のコーヒーショップ向けにバリスタコーヒー用ミルクを生産しています。コーヒーを愛するお客様の気風および価値観は環境への負荷が小さいことを求める傾向にあり、環境にインパクトを与えることをかなり気にかけています。そのため、乳製品を使用しない商品に人気が集まっています。このような商品を販売する企業には資金が多く集まり、また、企業側でも牛乳生産者よりも環境に優しい会社であることを宣伝しています。

私どもとしてはこの風潮を押し戻し、畜産業こそが環境に対して責任ある態度で臨んでいることを示したいと思っています。酪農業が温室効果ガスの排出量を削減できることを示すことにより、現状に関する論争に積極的に参加することができるだけではなく、乳製品の代替品と比較してどちらが優れていかという議論に陥らずに、酪農家は進歩的な考え方をし、環境フットプリントを常に改善するように努めているというメッセージも送ることができます。

ムートラルが畜産業に極めて重要な機会であると考えた1つの理由は、そのスケーラビリティにあります。ムートラルは当農場が独占的に使用する必要はなく、他の農場も使用することができます。むしろ長期的にはそれを目指すべきで、最大の効果を得るためには産業全体で採用していく必要があります。

Mootralはカウクレジットというコンセプトを考案しています。これは、ムートラルを家畜に与えることで削減できたメタンガスの量をカーボンクレジットと交換することができるようにするもので、これを任意市場で取引すれば、政府や企業、個人は炭素排出量を相殺することができます。これが実現した暁には、このサプリメントはサプライチェーン全体で購入しやすい価格となり、魅力的な商品となるでしょう。これは極めて重要です。というのも、農場がメタンガスを削減するための方法を導入したくても、経済的に導入不可能であれば、目に見える効果を出すことを現実的な目標とすることができないからです。

酪農家がメタンガス排出量を削減する機会としてこれを導入するよう意欲を高めていけるようにしたいと思っています。農業食品/小売部門の大手企業は、サプライヤーが家畜にムートラルを与えることを推奨することでカウクレジットを得られれば収入を増やすことができるかもしれません。Brades Farmは、産業基準を設定したいと考えています。当社の製品は追跡可能で、安価で、栄養価が高く、そして温暖化防止に貢献します

Mootralの基幹農場の1つであるBrades Farm(イギリス)のオーナー、ジョー・タワーズ氏は次のように説明します。

全文をお読みいただけます。

関連リンク集

1『The Guardian』紙:壊滅的な気候危機を阻止するのに残された時間は12年と国連に警告(2018年10月)

2アース・オーバーシュート・デー:食品需要は地球のエコロジカル・フットプリントの26%を占めた(2019年)

3ビル・ゲイツ氏のブログ「Gates Notes」:気候変動と75%の問題(2018年10月)

4Barclays:「Winds of change: the next environmental debate」(2019年2月)

5FAO:「World Livestock 2011 Livestock in food security」(2011年12月)

6FAO:「Major gains in efficiency of livestock systems needed」(2011年12月)

7FAO:「Major gains in efficiency of livestock systems needed」(2011年12月)

8FAO:「Major gains in efficiency of livestock systems needed」(2011年12月)

9NOAA Research News:「Rising emissions drive greenhouse gas index increase」(2019年5月)

*家畜の種類、年齢、農場の状況、給餌法により異なります

**IPCC基準で算出された100年間の地球温暖化係数