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タイムリーな商標登録: AirCareが得た教訓

商標権をタイムリーに登録することは、新しい事業を立ち上げる際の「必須条件」と言えます。北マケドニアの若手企業家、Gorjan Jovanovski氏は、商標権を保護するための行動を素早く取らなかったために会社のブランドを変更せざるを得なくなった際に、この教訓を身をもって知りました。

2014年に、Gorjan Jovanovski氏は、北マケドニアの大気汚染を監視するアプリを開発し、立ち上げました。政府のオープンなデータソースを収集し、一般公開されているデータを使いやすくキュレーションするアプリ、MojVozduh (MyAir) は、100万人以上のユーザーを惹きつけ、大成功を収めました。しかし、MojVozduh (MyAir) を商標登録しようとしたところ、他社がすでに権利を主張していることがわかり、ブランドを変更せざるを得なくなりました。Jovanovski氏は、商標権をタイムリーに登録することの重要性を他の中小企業にも理解してもらえるよう、自身の経験を共有しています。

AirCare社のCEO、Gorjan Jovanovski氏は、北マケドニアのスコピエがヨーロッパで最も大気汚染が深刻な都市の1つであることを知り、よりきれいな空気を求める携帯アプリを開発しました。 (写真: AirCare社提供)

Jovanovski氏は、ソフトウェアエンジニア、起業家であり、熱心な環境保護活動家でもあります。2014年に、同氏は、北マケドニアの環境・物理計画省のオープンデータを見ていたところ、北マケドニアの大気汚染レベルが危険なほど高いことを知り、衝撃を受けました。データは一般公開されているものの、「複雑で理解できない方法で提示されおり、普通のユーザが内容を把握することが非常に難しいので、大気汚染に対する人々の意識を高めるために、データを解釈するアプリケーションを開発することにしました」と、Jovanovski氏は説明します。

同氏の携帯アプリとウェブサイト、MojVozduh (MyAir) は、大気汚染に関するオープンデータを収集し、キュレーションして、使いやすいダッシュボードに表示し、データを簡単な言葉で説明します。同氏は、このプロジェクトによって大気汚染への関心を強め、北マケドニアにおいてきれいな空気を求める活動を始めるようになりました。

「革新的だったのは、人工衛星や政府のネットワーク、ボランティアステーションのネットワークからできるだけ多くのデータを集め、誰もが理解できるシンプルでわかりやすい形式で表示したことです」と、Jovanovski氏は語ります。


商標で苦境に陥ったAirCare

もっと早く商標出願をしておけばよかったと、本当に後悔しています。

MojVozduh (MyAir) アプリは、100万人以上のユーザーを惹きつけ、大成功を収めました。JovanovskiがMojVozduh (MyAir) の商標権の出願手続を始めるまでは、すべて順調でした。この権利を得ることによって、営業を強化し、誰がどのように商標を使うのかを管理することが可能になるはずでした。ところが、驚いたことに、他の誰かがMyAirの名称の所有権をすでに主張しており、MyAirの成功に乗じて利益を得ようとしていることが判明したのです。「他の誰か、しかも私が個人的に知っている人がそんなことをするとは思ってもいませんでしたが、MojVozduh (MyAir) という名称を用いて空気清浄機を販売する会社が登録されており、その技術が私たちによって提供されているという印象を消費者に与えようとしていたのです」と、同氏は説明します。このことは、Jovanovski氏と同氏のチームにとって、厳しい教訓となりました。「もっと早く商標出願をしておけばよかったと、本当に後悔しています。このようなことが起こり得ることを知っていたら、確実に行っていました」と、同氏は振り返ります。

5年の歳月を経て、Jovanovski氏は、北マケドニアにおいてアプリのブランドを一新し、AirCareを立ち上げました。「母国ではMojVozduh (MyAir) という本来の名前を維持したかったのですが、今回の件で、海外でも認知されるようなAirCareにアプリの名称を変更し、ブランドを一新することに決めました。AirCareは現在、商標として登録されており、その成功に他の誰かがただ乗りして金銭的な利益を得ることはできないようになっています」と、Jovanovski氏は語ります。同氏は現在、対象となる他の市場でもAirCareを登録することを、知的財産 (IP) を専門とする弁護士に相談しています。

動画: 第1回世界知的財産の日 若者 (ユース) のための動画コンテストで最終選考に残ったGorjan Jovanovski氏の作品をご覧ください。

明確な目的のあるアプリの開発

AirCareを通じて大気汚染に対する意識を高めることにより、よりよい未来のために人々が気候変動に対して積極的な行動を起こせるようにしたいと、Jovanovski氏のチームは考えています。「大気汚染や気候危機といった長期的な問題に関心を持ってもらいたいのです」と、同氏は説明します。

AirCareは、「パーパス・ドリブン」(purpose-driven) な携帯アプリです。2020年以来、Jovanovski氏は、変革を促し、環境保護主義者や関心のある市民が世界中の高レベルの大気汚染について情報を広めるのを助けるために、AirCareの創設に全力を注いできました。

「当社では、大気汚染の問題について啓蒙し、人々に行動を促しています。人々を地元のNGOや環境保護団体とつなげ、地元の集会やワークショップ、働きかけが可能な政治家に関する情報を提供しています」と、Jovanovski氏は説明します。

Jovanovski氏は、Green Humane City (Zelen Human Grad) の共同創設者でもあり、2021年のスコピエ市議会の地方選挙において無所属で当選しました。「私はこの8年間、活動家として活動してきましたが、先日、市議会議員に無所属で立候補し、当選しました」と、同氏は語ります。

Jovanovski氏は、北マケドニアのスコピエで、TED talkをはじめとした大気汚染に関する講演を50回以上行っています。また、AirCareでの取り組みにについて、同国の大統領による2020年マケドニアン・クオリティ賞、情報社会世界サミットによる2020年ヨーロッパ最優秀若手起業家賞、国連グローバル賞」など、多くの賞を受賞しています。

Gorjan Jovanovski氏は、「世界知的財産の日」特設ユース・ギャラリーで紹介されています。

AirCareアプリによって、自分たちが呼吸する空気の
質を知ることができます。 (写真: AirCare社提供)

AirCareについて

AirCareは、自国の空気の質の良し悪しを知るのに役立つ携帯アプリです。このアプリは、自分が呼吸する空気の質を市民一人ひとりに知らせることによって、意識を高め、行動を促すことを目的としています。

  • AndroidiOSオンラインで利用可能
  • ダウンロード数500,000回を突破
  • 最初のバージョンは2014年12月に公開
  • オープンデータを用いて大気汚染を表示
  • 世界中の30を超えるネットワークに12,000以上の測定局
  • 北米、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど40か国以上で利用可能