2021年、HIVの新規感染者は1日あたり4,000人にのぼり、世界全体でのHIV感染者は3,840万人でした。このほど、ヴィーブヘルスケア社 (ViiV Healthcare) と、国連が支援する非営利団体でWIPOが理事会メンバーを務める「医薬品特許プール (Medicines Patent Pool、MPP) 」との間でライセンス契約が締結され、これにより、HIV感染予防に寄与するHIV曝露前予防内服 (pre-exposure prophylaxis、PrEP) 用の長期作用型 (long-acting、LA) カボテグラビルのジェネリック製剤を利用することが可能になりました。
HIVは、1983年にエイズの原因として特定されました。HIVに対して効果のあるワクチンはまだ見つかっていませんが、過去35年間の研究努力により、PrEP等を含む各種の予防薬が製造され、HIVのまん延防止に役立っています。
製薬会社のヴィーブヘルスケア社とMPPが2022年7月下旬に締結したライセンス契約により、MPPによって選ばれたメーカーは、90ヶ国の後発開発途上国、低所得国、低中所得国およびサブサハラ・アフリカ諸国向けにHIV-PrEP用のカボテグラビル-LAのジェネリック薬を開発・供給することが可能になります。
HIV-PrEP用のカボテグラビル-LAが、HIV感染のリスクのある人々に対して高い予防的効果のある注射剤であることは、世界保健機関 (WHO) によって確認されています。PrEP用カボテグラビル-LAは最近、米国において、感染リスク集団に対する使用が規制当局の承認を受けました。また、本薬剤についての臨床試験が行われた国々 (オーストラリア、ボツワナ、ブラジル、ケニア、マラウイ、南アフリカ、ウガンダ、ジンバブエ等) でも承認待ちです。
ヴィーブヘルスケア社CEOのDeborah Waterhouse氏は、MPPのプレスリリースにおいて、「MPPとの長年のパートナーシップを通じて、資源の限られた国の人々が革新的新薬に広くアクセスできるようにする役割を弊社が担い続けられることを誇りに思います」と話しました。また、MPPと協力することで、特に女性や思春期女児におけるHIV伝播の予防を促進することができるとも語りました。
「本ライセンス交渉は非常に迅速でした。このことは、MPPが、低・中所得国において可及的速やかに、手頃な価格で革新的医薬を入手可能にすることに常に献身的に取り組んでいることの証左です。『最新技術を素早く提供すること』が、SDGsターゲットを達成するにあたっての我々の唯一の望みです。」MPP事務局長のCharles Gore氏はそう話します。
MPPはこれまでに、13のHIV抗レトロウイルス薬について、特許を保有する15社と契約を結んでいます。
「医薬品特許プール (MPP) 」は、抗レトロウイルス薬の特許権者やメーカーからライセンスを求めることで、知財資源のプールを構築しています。これにより、製薬会社は、開発途上国での販売に必要な製剤を開発するための権利にアクセスできるようになります。
MPPは、イノベーションを促進するとともに、健康関連製品や医療機器へのアクセスを改善することで、HIV/エイズやC型肝炎、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 等の疾患を持つ何百万人もの人々の命を救い、生活を改善する助けとなる可能性を秘めています。
パテントプールの形成と補完特許 (complementary patents) のプーリングを行うことで、製品やサービスを効率的に作りやすくなり、また、必要な情報が最も能力のあるメーカーに届くようになります。
MPPが、抗HIV薬関連の知的財産 (IP) の管理 をどのように促進し、開発途上国の人々がHIV治療におけるイノベーションの恩恵を確実に受けられるようにしているか、ご覧ください。
動画: MPPは、低・中所得国におけるHIV、C型肝炎、結核の治療薬へのアクセス向上に取り組んでいます。
ヴィーブヘルスケア社は、2009年にGSK社とファイザー社によって設立された世界的なHIVスペシャリスト・カンパニーです。2012年には、塩野義製薬が資本参加しています。HIVと共に生きる人々や、HIVに感染するおそれのある人々のために、治療・ケアを発展させ提供することに特化した会社です。同社ウェブサイトによれば、『ヴィーブヘルスケア社の使命は、HIVの流行を終わらせる手助けをすること』とあります。