ポーランド症候群と呼ばれる右腕と胸筋の発達を阻む障害を持って生まれたDavid Aguilar Amphoux氏には、子供の頃からクリエイティブな精神が宿っていました。このアンドラ出身の22歳の若者は、レゴ®ブロックを使って自分用に十分機能する義手を初めて自作した人物として、ギネス世界記録を保持しています。Amphoux氏が目指しているのは、手頃な価格の義肢を広く普及させることと、「異なる能力 (different ability)」 (障害) を持つ人々への関心を高めることです。そして、「実現に向かって戦えば夢はかなう」と若者たちが信じられるように力を尽くしています。
Amphoux氏のイノベーションの旅は、初めてレゴ®ブロックのセットをもらった5歳の頃に始まりました。彼は何時間もレゴ®で遊び続け、すぐにレゴ®は彼のお気に入りの玩具になりました。9歳のとき、健康状態によって定義されたり、制限を受けたりしたくないと決意した彼は、レゴ®ブロックでメカニカルアームの作り方を調べ始めました。そして9年後、18歳のときに、レゴ®ブロックを使って自らの義手を自作することに成功したのです。この義手には、可動式の肘関節に加えて、物を掴むことができる手が備わっていました。その後も改良を重ね、現在は5種類のモデルを取り揃えています。それらは全てレゴ®ブロックで作られています。最新モデルのMK5は、完全に関節動作式で、プーリー機構により可動する指も備わっています。Amphoux氏は義手の作り方を説明した動画も作成し、YouTubeで無料提供しています。
Amphoux氏は刺激的な取り組みとその社会的インパクトに関して多くの賞と栄誉を獲得しています。例えば2017年には、作品に関してギネス世界記録を獲得しました。その2年後には、NASAから2019年産業間イノベーションサミット への参加を要請されました。LEGO社の教育部門からは、同社のSpike™プライムシリーズの商品開発に取り組んでくれないかという要請も受けました。Spike™プライムシリーズは、生徒にSTEAM (科学、技術、工学、芸術、数学の各分野の統合学習) 概念の探求を促す遊び心に満ちた学習ツールです。
Amphoux氏のイノベーションへの情熱は冷めることなく、その後は障害を持つ人々を助けるために優れた義肢を開発する計画に役立てようとカタルーニャ国際大学 (Universitat Internacional de Catalunya) (UICバルセロナ) で生体工学を学んでいます。
「この発明の成功を通じて、人生における私の役割は、人々を助けることだと理解することができました。だから、生体工学を学ぶ一方で、重要な社会的、教育的、文化的インパクトのある様々なプロジェクトを進めています」とAmphoux氏は話します。
Amphoux氏のソーシャルインパクト (社会貢献) プロジェクトには、例えばソリダリティ (連帯) ブランド「HandSolo」の開発などが挙げられます。ウェブサイト (HandSolo.com) を通じて、Amphoux氏は様々な商品を販売し、利益の一部を障害のある人々と連携する団体や各種ソリダリティ (連帯) プロジェクトに寄付しています。
動画: David Aguilar氏が最新バージョンの義肢「MK-V LEGO®」の作り方を説明します。
ブランドの立ち上げに先立ち、Amphoux氏は法的問題を避けるために、Disney社に許可を求めました。「HandSoloというソリダリティブランドの立ち上げにあたっては、Disney社から許可を得ました。発音したときの音が [スター・ウォーズ] 物語の登場人物と似ているため、許可が必要だったからです」と彼は説明しています。
Amphoux氏と彼の家族は、インクルージョンとダイバーシティ (多様性) を強く支持しています。父親のFerranは、教育漫画を執筆していますが、その中でAmphoux氏は、いじめに立ち向かうスーパーヒーローとして描かれています。Amphoux氏自身、実生活では障害を理由にいじめを受けたことがありました。
Amphoux氏に対する若者たちの反応が漫画への着想になりました。むしろ格好いいとも言える義手を付けたAmphoux氏を目にして、若者たちの障害に対する認識は、急速に変化しています。偏見や悪いイメージがなくなり、以前よりポジティブな見方に変わったのです。この漫画の目的は、「異なる能力」を持つ人々について若者たちに正しい知識を与え、インクルージョン、寛容、尊重を促すことです。
「障害を克服した私の経歴から、子供であっても大人であっても、夢を信じること、その実現のために戦うこと、逆境にあってもくじけないことの大切さを学ぶことができます」とAmphoux氏は語ります。
スパイダーマンが言うように、大いなる力には大いなる責任が伴います。自分自身の経験から、人生における自分の役割を理解することができました。触発し、刺激し、啓発することです
Amphoux氏は自身の心温まるイノベーションの旅について、回顧録『Piece by Piece』(ペンギン・ランダムハウスより刊行) とドキュメンタリー映画『Mr. Hand Solo』(2022年のゴヤ賞にノミネート) で語っています。