WiseShape: 環境効率の高いコンクリートタンクでワイン造りに革命を起こす

土木技師でワイン愛好家のTatiana Sá Marques氏は、イノベーション、テクノロジー及びデザインを通じてポルトガルのワイン造りに革命を起こすことを目的としてWiseShape社を設立しました。2018年以来、WiseShape社はワインの発酵、貯蔵及び熟成のための環境に優しいコンクリートタンクを作成してきました。タンクは100%リサイクル可能な素材で作られており、美的デザインと高度な材料工学を組み合わせてワインの香りと風味を維持しています。WiseShapeは、自社の「ゼロカーボン」アプローチを通じて、ヨーロッパのワイン生産の持続可能性に貢献しています。

ポルトガルのワイン生産には、何世紀にもわたる長年の伝統があります。この国は、多様かつ個性的なワイン産地で有名であり、それぞれがユニークなブドウの品種及び品質を特徴としています。その中で、ドウロ渓谷は最も有名なワイン産地の1つとして際立っています。

WiseShape社の共同創設者兼CEOであるTatiana Sá Marques氏は、ドウロ地方にある彼女の家族のブドウ園に常に魅了されてきました。数学と物理学の天性の才能を持つSá Marques氏は、特にワイン造りの分野におけるイノベーション及びテクノロジーが、彼女の真の情熱であることにすぐに気づきました。「ドウロ地方のブドウ畑と風景は、私が最初にワイン造りの美しさを発見した場所です」と彼女は回想します。「自分が成長するにつれ、ワイン業界への熱意とコンクリート構造設計の専門知識を組み合わせて、自分の人生と職業をこれらの興味に捧げることが、私が進むべき道であるとはっきり分かりました。」

2017年、リスボン大学のInstituto Superior Técnico (IST) で土木工学の博士課程で学んでいたとき、Sá Marques氏はエンジニアリングデザインを通じて古代のワイン造りの技術を近代化するというアイデアを思いつきました。彼女の革新的なコンセプトは、イノベーションと技術移転の促進に焦点を当てた大学のスピンオフであるPedro Nunes Institute Incubator (IPN) が主催するビジネスアイデアのコンペティションである2017年のSmart Rural Contest (スマート農村コンテスト) で賞を受賞したときに認められました。

Sá Marques氏は、仲間のエンジニアでありポルトガルの有名な醸造学者であるCarla Ferreira氏と共同して、コンクリートの強さとワインの優雅さを融合させた、ワインの発酵と貯蔵のための新しいソリューションを考案しました。1年以内に、Sá Marques氏とFerreira氏はWiseShape社を設立しました。

「私たちは2018年にWiseShape社を設立しました。伝統と革新を融合させることで、ヨーロッパのワイン業界の持続可能性を促進することを目的としています。広範なテストと試作を経て、私たちの最初の製品は、Revista de Vinhosが主催する権威あるワインフェアで発表されました。展示会で展示したワインバット (タンク) は、フェア中に完売しました」とSá Marques氏は説明します。

WiseShape社のSá Marques氏と彼女のチームは、ポルトガルの最良のワイン産地の有名なワイン生産者の注目を集めています。現在、多くが同社のクライアントです。「私たちの最初の製品の発売以来、過去2年間で、Niepoort、Carm、Symington、Quinta do Sairrão - Sogrape、Alves de Sousaなど、ポルトガルの主要なワイン生産者からの信頼を得てきました」とSá Marques氏は述べています。

WiseShape社は現在、環境効率の高いコンクリートタンクをヨーロッパ市場に導入することを計画しています。世界のワインの65%がヨーロッパで生産されているため、大きな成長のチャンスがあります。「ワイン産業は多くの国の収益への貢献が大きいため、オーストリア、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなどの主要なワイン生産地域を含め、我が社には十分なチャンスがあります」とSá Marques氏は言います。

「New Generation of Concrete Wine Tanks (新世代のコンクリートワインタンク)」と題された博士課程のプロジェクトで開発された彼女の革新的なタンクのおかげで、Sá Marques氏は2021 Young Engineer Innovation Prize (2021年ヤングエンジニアイノベーション賞) を受賞しました。彼女はまた、2022年にポルトガルのWomen in Tech (ウィメンインテック) イニシアチブによって創設者カテゴリーにノミネートされました。

私は2018年にWiseShape社を設立し、伝統と革新を融合させることでヨーロッパのワイン産業をより持続可能なものにすることを目標としています。

Tatiana Sá Marques氏、WiseShape社のCEO

WiseShape社のコンクリートタンクの利点

WiseShape社は、古来のワイン発酵と熟成プロセスに革命をもたらしています。過去にワインメーカーが木製の樽やステンレス鋼のタンクを使用してワインを熟成させていたのに対して、WiseShape社はオーク樽とステンレス鋼の両方の利点を組み合わせた革新的なローテクのコンクリートタンクを考案しました。「低介入の技術で、ワイン生産プロセスのあらゆる側面を強化します」とSá Marques氏は説明します。

WiseShape社のタンクが従来のステンレス鋼ソリューションに対して持つ大きな利点は、WiseShape社のタンクのコンクリート構造に由来する、タンクが「呼吸できる」性質にあります。「コンクリートは各ブドウ品種とテロワールの個性を高めますが、ステンレス鋼のバットは完全に密閉されているため、このような利点はありません」とSá Marques氏は説明します。タンクはまた、オーク樽発酵の長い間認識されている利点をもたらします。「コンクリートを利用することで、オーク樽発酵と同様の滑らかなテクスチャーを持つワインが保証され、追加の香りや風味を導入することなく、果実の色の強度と風味の純度が増幅されます」とSá Marques氏は述べています。

WiseShape社のタンクは、珪質骨材とセメントを混ぜたリサイクルコンクリートから作られており、従来のコンクリートタンクと比較して化学的耐性と物理的耐性が向上しています。「これにより、メンテナンス、清掃及び輸送が容易になり、耐久性及び寿命も保証されます」とSá Marques氏は言います。さらに、WiseShape社のタンクの壁は従来のコンクリートタンクの5倍薄いため、製造に必要な材料が少なくて済みます。

Sá Marques氏によると、コンクリートタンクは安定した温度を維持する能力があるため、ワインの熟成にも理想的です。「コンクリートは天然の断熱材として機能し、エネルギー消費を削減し、貯蔵及び熟成のプロセス全体を通じて温度の変動を防ぎます」と彼女は説明します。「WiseShape社のタンクは、液体の流れ、温度制御及びミクロオキシジェナシオンを増進させ、従来のオーク材またはステンレス鋼のソリューションと比較して、効率の向上並びに水の消費量、廃棄物及び二酸化炭素排出量の削減をもたらします。」

ゼロカーボンのワイン産業を目指して

WiseShape社の環境効率の高いタンクは、ワイン業界の持続可能性の目標と完全に一致しています。「私たちの目標は、電気機械をフル装備した生産現場を構築し、「ゼロカーボン」コンクリートタンク認証を取得することです」とSá Marques氏は言います。

また、WiseShape社は、環境効率の高いタンクの設置と使用を促進することにより、ワイン生産者の環境パフォーマンスの向上を支援しています。「ヨーロッパは年間約165億リットルのワインを生産し、1リットルあたり1.5kg以上の二酸化炭素を排出しています」とSá Marques氏は述べています。「発酵と貯蔵に、より環境に優しいワインタンクを使用することで、WiseShapeはヨーロッパのワインメーカーの二酸化炭素排出量に大きなプラスの影響を与えることができます。」

ワイン製造の環境の持続可能性を向上させる目的から、WiseShape社はInductiva Research Labsと協力して、製品の品質と持続可能性を最適化するために、人工知能 (AI) の力を活用する新しいバットを開発しています。「私たちの目標は、ワイン製造業界で初めて製品の最適化にAIを活用する企業になることです。私たちはアプリケーションプログラミングインターフェイス (API) 開発による形状最適化のためのパイロットプログラムを既に完了しており、また、他のパラメータを最適化ツールに組み込む予定です。この革新的なアプローチは、発酵プロセスの品質に技術的、経済的、環境的なメリットを約束します」とSá Marques氏は説明します。

WiseShape社は、ワイン製造プロセスにおける二酸化炭素排出量の削減に大きなプラスの影響を与えることができます。

Tatiana Sá Marques氏、WiseShape社のCEO

ワイン製造における知的財産

ワインメーカーは、ワインに付加価値を与えるために知的財産 (IP) 保護を利用しており、特に原産地名称や地理的表示を利用しています。また、ワインメーカーはワイン製造プロセスを改善するために行う研究開発投資を保護するために、特許や意匠などの他の知的財産権も利用しています。このように、WiseShape社は、自社の環境効率の高いコンクリートタンクに関するイノベーションを保護するために、知的財産権を積極的に使用しています。「ワインタンクの各デザイン及びモデル並びに関連する商標は保護及び登録されています」とSá Marques氏は説明します。WiseShape社は現在、これらのタンクの個々のコンクリートの部材の特許を取得中です。

「知的財産権及び産業財産権を登録することで、発明者は自分の仕事の価値を示し、より持続可能な産業の実現に貢献することができます。」Sá Marques氏は、「女性の発明家及びクリエイターの発明及び創作物を保護することで、特に伝統的に男性が優位である産業において、女性が社会や技術の進歩に積極的に貢献できるようになる」ため、女性の発明家及びクリエイターの間での知的財産の認識が特に重要であると述べています。

WiseShape社がヨーロッパ市場向けの自社の環境効率の高いコンクリートタンクの新しい改良されたバージョンを作成するためのイノベーションにどのように取り組んでいるかについては、ビデオをご覧ください。

この記事は、以下の持続可能な開発目標を支援する上で知財を裏付けとしたイノベーションがもたらす変革的な影響力を示しています。