東京2020オリンピック 聖火リレートーチデザイナーの紹介
WIPO情報・デジタルアウトリーチ部 キャサリン・ジュエル、WIPO日本事務所 田口 智美 記
7月下旬、東京オリンピックスタジアムでは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で1年間延期されていた2020年オリンピック大会の開催を記念して、日本のトップテニスプレイヤーである大坂なおみ選手が聖火台に点火し、注目を集めました。
オリンピックの象徴である聖火は、希望と平和を象徴し、世界最大のスポーツの祭典の古代からの起源を思い出させてくれます。しかし、聖火リレーは、1936年のベルリンオリンピックで初めて行われた近代的なものです。オリンピックの聖火には、開催国を象徴するユニークなデザインが施されています。2020年の東京オリンピックの聖火をデザインした、日本を代表する現代美術家・デザイナーの吉岡徳仁氏が、そのデザインの象徴性と希望のメッセージを解き明かします。
作品のインスピレーションはどこから得ていますか?
物質の概念を超えた、人間の感覚を超越するようなものが好きです。人が感動したり、喜んだり、楽しんだりする何かを作品に込められたらという想いがあります。それには、自然から生み出される価値と美しさが、とても重要な要素となると思います。
東京2020オリンピックに貢献することに対して個人的にどう感じていますか?
歴史に残るプロジェクトに参加させていただき感謝しています。東京大会の開催が決まった2013年にデザインで何かできないかと考え始めました。オリンピックに参加するアスリートの方々と同じエネルギーや願いを込めて、私もトーチをデザインしました。
トーチのデザインは何からインスピレーションを受けていますか?
オリンピック大会は、様々な意味のあるものだと思います。何万人もの人の感情をインスパイアし、世界中に彼らの想いを運んでいくものです。2013年に東京2020大会の開催が決定した時から、2011年の東日本大震災の被災地の方々への想いをデザインによって世界へ表現できないかと考え始めました。
日本はたくさんの自然災害を経験してきました。震災による苦難の中でも溢れている互いへの思いやりや助け合いの心に、私は改めて日本人の優しさと真心を感じました。そして、それは世界の人々にも感じていただけたのではないでしょうか。
オリンピック大会は、様々な意味のあるものだと思います。何万人もの人の感情をインスパイアし、世界中に彼らの想いを運んでいくものです。
と吉岡 徳仁氏は述べます。
デザインのきっかけは、2015年、被災地の子どもたちとみんなで「桜のエンブレム」を描いたことでした。子どもたちが描いた力強い桜のように、被災地に住む人々のたくましさや、彼らが苦悩から立ち上がり、復興に向けて取り組む姿を世界中にお伝えしたい。そのような想いからデザインさせていただきました。
春を知らせる桜の開花を日本中が待ち望み、みんなを温かい気持ちで包むその様子は、希望そのものだと思います。桜が花開くように日本全国を縦断し、希望の炎が人々の想いを繋いでいくような聖火リレーが実現できればと願っています。
東京2020オリンピック聖火リレーについて
オリンピックの炎は、2020年3月に初めて日本に到着しました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で1年間延期された後、東京のオリンピックミュージアムに置かれました。
オリンピック聖火リレーは、3月25日、東日本大震災の被災地である福島県楢葉町のサッカーのナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」でスタートしました。希望と平和の象徴であるオリンピックの炎にちなんで、「Hope lights our way/希望の道を、つなごう。」をコンセプトにリレーが企画されました。
7月23日の開会式のために東京オリンピックスタジアムに到着するまでの121日間、聖火は日本全国47都道府県を巡りました。このリレーには1万515人の聖火ランナーが参加しました。
トーチは何を意味していますか?
私が聖火リレートーチのデザインを通して表現したのは、「美しいデザイン」でも「最新のテクノロジー」でもありません。それは被災地の方々の「心の復興」と平和への願いです。
この聖火リレートーチでは、世界で初めて「炎のかたち」をデザインしました。通常、トーチのデザインは外観のデザインから始めるのだと思いますが、今回私がまず考えたのは、桜の炎をデザインすることです。桜の五つの花びらから放たれる五つの炎は中央で融合して一つになります。世界がひとつになるようにと、平和の願いを込めています。
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