組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年八月十八日法律第百三十六号)
最終改正:平成二一年七月一五日法律第七九号
(最終改正までの未施行法令)
平成十五年五月三十日法律第五十四号(未施行)平成十五年六月十八日法律第九十三号(未施行)平成十五年八月一日法律第百三十六号(未施行)平成十六年四月二十八日法律第四十号(未施行)平成十六年六月十八日法律第百六号(未施行)平成十七年六月十日法律第五十五号(未施行)平成十七年六月二十二日法律第六十六号(一部未施行)平成十七年六月二十九日法律第七十五号(未施行)平成十七年七月二十六日法律第八十七号(一部未施行)平成十八年六月七日法律第五十五号(未施行)平成十八年六月十四日法律第六十六号(未施行)平成十八年十二月二十日法律第百十五号(未施行)平成十九年六月一日法律第七十四号(未施行)平成十九年六月八日法律第七十八号(未施行)平成十九年十一月三十日法律第百二十号(未施行)平成二十一年六月二十四日法律第五十五号(未施行)平成二十一年七月十日法律第七十四号(未施行)平成二十一年七月十五日法律第七十九号(未施行)
第一章 総則(第一条・第二条) 第二章 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の没収等(第三条―第十七条) 第三章 没収に関する手続等の特例(第十八条―第二十一条) 第四章 保全手続 第一節 没収保全(第二十二条―第四十一条) 第二節 追徴保全(第四十二条―第四十九条) 第三節 雑則(第五十条―第五十三条) 第五章 削除
第六章 没収及び追徴の裁判の執行及び保全についての国際共助手続等(第五十九条―第七十四条) 第七章 雑則(第七十五条・第七十六条) 附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害し、及び犯罪による収益がこの種の犯罪を助長するとともに、これを用いた事業活動への干渉が健全な経済活動に重大な悪影響を与えることにかんがみ、組織的に行われた殺人等の行為に対する処罰を強化し、犯罪による収益の隠匿及び収受並びにこれを用いた法人等の事業経営の支配を目的とする行為を処罰するとともに、犯罪による収益に係る没収及び追徴の特例等について定めることを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう。
2 この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。一 財産上の不正な利益を得る目的で犯した別表に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産二 次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばイ、ロ又はニに掲げる罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により提供された資金イ 覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)第四十一条の十(覚せい剤原料の輸入等に係る資金等の提供等)の罪ロ 売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)第十三条(資金等の提供)の罪ハ 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)第三十一条の十三(資金等の提供)の罪ニ サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)第七条(資金等の提供)の罪三 不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十一条第一項の違反行為に係る同法第十四条第一項第七号(外国公務員等に対する不正の利益の供与等)の罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならば、当該罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により供与された財産四 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律(平成十四年法律第六十七号)第二条(資金提供)に規定する罪に係る資金
3 この法律において「犯罪収益に由来する財産」とは、犯罪収益の果実として得た財産、犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。
4 この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。
5 この法律において「薬物犯罪収益」とは、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(平成三年法律第九十四号。以下
「麻薬特例法」という。)第二条第三項に規定する薬物犯罪収益をいう。6 この法律において「薬物犯罪収益に由来する財産」とは、麻薬特例法第二条第四項に規定する薬物犯罪収益に由来する財産をいう。7 この法律において「薬物犯罪収益等」とは、麻薬特例法第二条第五項に規定する薬物犯罪収益等をいう。
第二章 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の没収等
(組織的な殺人等)
第三条 次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。一 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十六条第一項(常習賭博)の罪 五年以下の懲役二 刑法第百八十六条第二項(賭博場開張等図利)の罪 三月以上七年以下の懲役三 刑法第百九十九条(殺人)の罪 死刑又は無期若しくは六年以上の懲役四 刑法第二百二十条(逮捕及び監禁)の罪 三月以上十年以下の懲役五 刑法第二百二十三条第一項又は第二項(強要)の罪 五年以下の懲役六 刑法第二百二十五条の二(身の代金目的略取等)の罪 無期又は五年以上の懲役七 刑法第二百三十三条(信用毀損及び業務妨害)の罪 五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金八 刑法第二百三十四条(威力業務妨害)の罪 五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金九 刑法第二百四十六条(詐欺)の罪 一年以上の有期懲役十 刑法第二百四十九条(恐喝)の罪 一年以上の有期懲役十一 刑法第二百六十条前段(建造物等損壊)の罪 七年以下の懲役
2 団体に不正権益(団体の威力に基づく一定の地域又は分野における支配力であって、当該団体の構成員による犯罪その他の不正な行為により当該団体又はその構成員が継続的に利益を得ることを容易にすべきものをいう。以下この項において同じ。)を得させ、又は団体の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で、前項各号(第一号、第二号及び第九号を除く。)に掲げる罪を犯した者も、同項と同様とする。
(未遂罪)第四条 前条第一項第三号、第五号、第六号(刑法第二百二十五条の二第一項に係る部分に限る。)、第九号及び第十号に掲げる罪に係る前条の罪の未遂は、罰する。
(組織的な身の代金目的略取等における解放による刑の減軽)第五条 第三条第一項第六号に掲げる罪に係る同条の罪を犯した者が、公訴が提起される前に、略取され又は誘拐された者を安全な場所に解放したときは、その刑を減軽する。
(組織的な殺人等の予備)
第六条 次の各号に掲げる罪で、これに当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものを犯す目的で、その予備をした者は、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。一 刑法第百九十九条(殺人)の罪 五年以下の懲役二 刑法第二百二十五条(営利目的等略取及び誘拐)の罪(営利の目的によるものに限る。) 二年以下の
懲役2 第三条第二項に規定する目的で、前項各号に掲げる罪の予備をした者も、同項と同様とする。
(組織的な犯罪に係る犯人蔵匿等)
第七条 禁錮以上の刑が定められている罪に当たる行為が、団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われた場合において、次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。一 その罪を犯した者を蔵匿し、又は隠避させた者二 その罪に係る他人の刑事事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者三 その罪に係る自己若しくは他人の刑事事件の捜査若しくは審判に必要な知識を有すると認められる者又はその親族に対し、当該事件に関して、正当な理由がないのに面会を強請し、又は強談威迫の行為をした者四 その罪に係る被告事件に関し、当該被告事件の審判に係る職務を行う裁判員若しくは補充裁判員若しくはこれらの職にあった者又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者五 その罪に係る被告事件に関し、当該被告事件の審判に係る職務を行う裁判員若しくは補充裁判員の選任のために選定された裁判員候補者若しくは当該裁判員若しくは補充裁判員の職務を行うべき選任予定裁判員又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者
2 禁錮以上の刑が定められている罪が第三条第二項に規定する目的で犯された場合において、前項各号のいずれかに該当する者も、同項と同様とする。
(団体に属する犯罪行為組成物件等の没収)
第八条 団体の構成員が罪(これに当たる行為が、当該団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われたもの、又は第三条第二項に規定する目的で行われたものに限る。)を犯した場合、又は当該罪を犯す目的でその予備罪(これに当たる行為が、当該団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われたもの、及び同項に規定する目的で行われたものを除く。)を犯した場合において、当該犯罪行為を組成し、又は当該犯罪行為の用に供し、若しくは供しようとした物が、当該団体に属し、かつ、当該構成員が管理するものであるときは、刑法第十九条第二項本文の規定にかかわらず、その物が当該団体及び犯人以外の者に属しない場合に限り、これを没収することができる。ただし、当該団体において、当該物が当該犯罪行為を組成し、又は当該犯罪行為の用に供され、若しくは供されようとすることの防止に必要な措置を講じていたときは、この限りでない。
(不法収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為)
第九条 第二条第二項第一号若しくは第三号の犯罪収益若しくは薬物犯罪収益(麻薬特例法第二条第二項 各号に掲げる罪の犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産に限る。第十三条第一項第三号及び同条第四項において同じ。)、これらの保有若しくは処分に基づき得た財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産(以下「不法収益等」という。)を用いることにより、法人等(法人又は法人でない社団若しくは財団をいう。以下この条において同じ。)の株主等(株主若しくは社員又は発起人その他の法人等の設立者をいう。以下同じ。)の地位を取得し、又は第三者に取得させた者が、当該法人等又はその子法人の事業経営を支配する目的で、その株主等の権限又は当該権限に基づく影響力を行使し、又は当該第三者に行使させて、次の各号のいずれかに該当する行為をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。一 当該法人等又はその子法人の役員等(取締役、執行役、理事、管理人その他いかなる名称を有するもの
であるかを問わず、法人等の経営を行う役職にある者をいう。以下この条において同じ。)を選任し、若しくは選任させ、解任し、若しくは解任させ、又は辞任させること。二 当該法人等又はその子法人を代表すべき役員等の地位を変更させること(前号に該当するものを除く。)。
2 不法収益等を用いることにより、法人等に対する債権を取得し、又は第三者に取得させた者が、当該法人等又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得又は行使に関し、次の各号のいずれかに該当する行為をしたときも、前項と同様とする。不法収益等を用いることにより、法人等に対する債権を取得しようとし、又は第三者に取得させようとする者が、当該法人等又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得又は行使に関し、これらの各号のいずれかに該当する行為をした場合において、当該債権を取得し、又は第三者に取得させたときも、同様とする。一 当該法人等又はその子法人の役員等を選任させ、若しくは解任させ、又は辞任させること。二 当該法人等又はその子法人を代表すべき役員等の地位を変更させること(前号に該当するものを除く。)。
3 不法収益等を用いることにより、法人等の株主等に対する債権を取得し、又は第三者に取得させた者が、当該法人等又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得又は行使に関し、当該株主等にその権限又は当該権限に基づく影響力を行使させて、前項各号のいずれかに該当する行為をしたときも、第一項と同様とする。不法収益等を用いることにより、法人等の株主等に対する債権を取得しようとし、又は第三者に取得させようとする者が、当該法人等又はその子法人の事業経営を支配する目的で、当該債権の取得又は行使に関し、当該株主等にその権限又は当該権限に基づく影響力を行使させて、これらの各号のいずれかに該当する行為をした場合において、当該債権を取得し、又は第三者に取得させたときも、同様とする。
4 この条において「子法人」とは、一の法人等が株主等の議決権(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株式についての議決権を除き、会社法(平成十七年法律第八十六号)第八百七十九条第三項の規定により議決権を有するものとみなされる株式についての議決権を含む。以下この項において同じ。)の総数の百分の五十を超える数の議決権を保有する法人をいい、一の法人等及びその子法人又は一の法人等の子法人が株主等の議決権の総数の百分の五十を超える数の議決権を保有する法人は、当該法人等の子法人とみなす。
(犯罪収益等隠匿)
第十条 犯罪収益等(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律第二条第二項 に規定する罪に係る資金を除く。以下この項及び次条において同じ。)の取得若しくは処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。犯罪収益(同法第二条第二項に規定する罪に係る資金を除く。)の発生の原因につき事実を仮装した者も、同様とする。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
3 第一項の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(犯罪収益等収受)
第十一条 情を知って、犯罪収益等を収受した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。
(国外犯)第十二条 第九条第一項から第三項まで及び前二条の罪は、刑法第三条の例に従う。
(犯罪収益等の没収等)
第十三条 次に掲げる財産は、不動産若しくは動産又は金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)であるときは、これを没収することができる。一 犯罪収益(第六号に掲げる財産に該当するものを除く。)二 犯罪収益に由来する財産(第六号に掲げる財産に該当する犯罪収益の保有又は処分に基づき得たものを除く。)三 第九条第一項の罪に係る株主等の地位に係る株式又は持分であって、不法収益等(薬物犯罪収益、その保有若しくは処分に基づき得た財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産であるもの(第四項において「薬物不法収益等」という。)を除く。以下この項において同じ。)を用いることにより取得されたもの四 第九条第二項又は第三項の罪に係る債権であって、不法収益等を用いることにより取得されたもの(当該債権がその取得に用いられた不法収益等である財産の返還を目的とするものであるときは、当該不法収益等)五 第十条又は第十一条の罪に係る犯罪収益等六 不法収益等を用いた第九条第一項から第三項までの犯罪行為又は第十条若しくは第十一条の犯罪行為により生じ、若しくはこれらの犯罪行為により得た財産又はこれらの犯罪行為の報酬として得た財産七 第三号から前号までの財産の果実として得た財産、これらの各号の財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他これらの各号の財産の保有又は処分に基づき得た財産
2 前項各号に掲げる財産が犯罪被害財産(財産に対する罪、刑法第二百二十五条の二第二項の罪に係る第三条の罪、同法第二百二十五条の二第二項若しくは第二百二十七条第四項後段の罪若しくは別表第三十一号、第三十三号、第四十四号、第五十五号、第六十号、第六十六号若しくは第六十八号に掲げる罪の犯罪行為によりその被害を受けた者から得た財産又は当該財産の保有若しくは処分に基づき得た財産をいう。以下同じ。)であるときは、これを没収することができない。前項各号に掲げる財産の一部が犯罪被害財産である場合において、当該部分についても、同様とする。
3 前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当するときは、犯罪被害財産(第一項各号に掲げる財産の一部が犯罪被害財産である場合における当該部分を含む。以下この項において同じ。)を没収することができる。一 前項各号に掲げる罪の犯罪行為が、団体の活動として、当該犯罪行為を実行するための組織により行われたもの、又は第三条第二項に規定する目的で行われたものであるとき、その他犯罪の性質に照らし、前項各号に掲げる罪の犯罪行為により受けた被害の回復に関し、犯人に対する損害賠償請求権その他の請求権の行使が困難であると認められるとき。
二 当該犯罪被害財産について、その取得若しくは処分若しくは発生の原因につき事実を仮装し、又は当該犯罪被害財産を隠匿する行為が行われたとき。三 当該犯罪被害財産について、情を知って、これを収受する行為が行われたとき。
4 次に掲げる財産は、これを没収する。ただし、第九条第一項から第三項までの罪が薬物犯罪収益又はその保有若しくは処分に基づき得た財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産に係る場合において、これらの罪につき次に掲げる財産の全部を没収することが相当でないと認められるときは、その一部を没収することができる。一 第九条第一項の罪に係る株主等の地位に係る株式又は持分であって、薬物不法収益等を用いることにより取得されたもの二 第九条第二項又は第三項の罪に係る債権であって、薬物不法収益等を用いることにより取得されたもの(当該債権がその取得に用いられた薬物不法収益等である財産の返還を目的とするものであるときは、当該薬物不法収益等)三 薬物不法収益等を用いた第九条第一項から第三項までの犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産四 前三号の財産の果実として得た財産、前三号の財産の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他前三号の財産の保有又は処分に基づき得た財産
5 前項の規定により没収すべき財産について、当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、同項の規定にかかわらず、これを没収しないことができる。
(犯罪収益等が混和した財産の没収等)
第十四条 前条第一項各号又は第四項各号に掲げる財産(以下「不法財産」という。)が不法財産以外の財産と混和した場合において、当該不法財産を没収すべきときは、当該混和により生じた財産(次条第一項において「混和財産」という。)のうち当該不法財産(当該混和に係る部分に限る。)の額又は数量に相当する部分を没収することができる。
(没収の要件等)
第十五条 第十三条の規定による没収は、不法財産又は混和財産が犯人以外の者に帰属しない場合に限る。ただし、犯人以外の者が、犯罪の後情を知って当該不法財産又は混和財産を取得した場合(法令上の義務の履行として提供されたものを収受した場合又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が不法財産若しくは混和財産によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した場合を除く。)は、当該不法財産又は混和財産が犯人以外の者に帰属する場合であっても、これを没収することができる。
2 地上権、抵当権その他の権利がその上に存在する財産を第十三条の規定により没収する場合において、犯人以外の者が犯罪の前に当該権利を取得したとき、又は犯人以外の者が犯罪の後情を知らないで当該権利を取得したときは、これを存続させるものとする。
(追徴)
第十六条 第十三条第一項各号に掲げる財産が不動産若しくは動産若しくは金銭債権でないときその他これを没収することができないとき、又は当該財産の性質、その使用の状況、当該財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情からこれを没収することが相当でないと認められるときは、その価額を犯人から